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  • 2017/3/26 05:00:09

「オリーブオイルの魅力とその使い方」第20回「イタリアのオリーブオイル事情」

オリーブ樹木(本文用)

 

オリーブオイルと言えばその本場はイタリアをおいて他にはありません。

生産量でこそスペインが世界最大の産地ではありますが、そのバリエーションの多さや、料理への使い方の多様性ではやっぱりイタリア。

わたくしたち日本のオリーブオイル生産者も、オリーブの本場イタリアへは何度も足を運び、その栽培・生産の現場を見て回る機会も多いものです。

 

イタリアという国は日本と同じく、南北に長い国土で、その料理もそれぞれの地方の郷土料理がその個性を頑なに守り続ける、とっても土着な料理の集まり。

オイルの使い方も地方によって全然ちがうもの。

みんな大好きなスパゲティ・カルボナーラなんてのは、ローマの料理で、オリーブオイルの活躍の場はほとんどありません。

 

ズッパディペッシェ(本文用)

 

イタリアでもオリーブオイルをたっぷり使うのはやっぱり南イタリア。

オリーブヒルズのいつもの提案、オリーブオイルは味の拡大鏡という言葉、それを地で行くのが南イタリア。

タコを茹でました、ハイ、オリーブオイル。

イワシを焼きました、ハイ、オリーブオイル。

ウニを割りました、ハイ、オリーブオイル

なんて、なんにでもオリーブオイルかけて楽しんじゃうのが、南イタリアの流儀。何故なら、オリーブオイルがもともと持っている食材の味を何倍にも引き上げてくれることを、長い歴史のなかで知っているからなんですね。

 

タコ(本文用)

 

何千年もの歴史のなかでオリーブオイルを使ってきているイタリアの人にとって、オリーブオイルはあまりに当たり前な食材。

オリーブオイルがあまりに当たり前なだけに、無頓着なことも事実。

 

オリーブオイルが近代的な工場で正しく搾られるようになったのは、実はイタリアにおいてもまだここ10~20年くらいの話。

オリーブオイルの搾油は、今では遠心分離機を使うのが一般的ですが、少し前までは、伝統的な石臼を使う生産者がいっぱい残っていたんです。

それどころか、未だに石臼を使っている生産者もいるくらいです。

 

石臼(本文用)

 

オリーブオイルはいかに酸化を防ぐかがポイント。その意味では石臼を使った伝統的な搾油方法は、実はとっても不利な方法。

なぜなら、どんどんたまってくる搾りカスや、酸化していくオイルを取り除くことができないまま、次のオイルを搾っていくからです。

石臼で搾ったオイルは、およそ酸化の激しく進んだデフェットオイルになってしまいますが、何千年もの歴史のなかで、そのようなデフェットオイルを当たり前のように食べてきたのがイタリアの食生活なんです。

 

訪問するレストランで出会うオリーブオイルは、ほとんど全てデフェットオイルなんです。現地のガイドに頼んで、その土地ごとの評判のいいレストランを訪問するんですが、使っているオリーブオイルに関しては、例外なくデフェットオイルでした。

 

カプレーゼ(本文用)

 

フレッシュな作りたてのモッツアレラ・ブッファーラ、なかなか日本では味わえないおいしさなんだけど、かかっているオリーブオイルは残念なことにデフェット。

 

本場のイタリアでも本当に良質なオリーブオイルっていうのはまだ理解されていないんだな、って思いながら最後に訪れたローマのレストラン。

こちらで頂いたオリーブオイルは、今までと違った、とても新鮮で香り高い、正真正銘のエクストラバージンオリーブオイルだったんです。

イタリアにもちゃんとオリーブオイルのことを分かっている料理人がいるんだと思い、料理長に合わせてほしいと言ったら、なんと現れたのは能田耕太郎さんという愛媛出身の日本人料理長でした。

 

能田耕太郎(本文用)

 

何千年もの歴史の中でデフェットオイルも当たり前になっているイタリア人と違い、オリーブオイルの歴史の浅い日本人にとっては、その先入観の無さによって、本当に良質なエクストラバージンオリーブオイルとデフェットオイルの違いが明確に区別できるようなんです。

 

生産現場においても、オリーブオイルの品質向上に対する考え方や方向性が、少しわれわれ日本人と違うことがあります。

 

ラメリーノマシン(本文用)

 

こちらはトスカーナでも極めて品質の高いオイルを搾る生産者のフラントイオ(工場)。

そこで搾油機の技術者から説明を受けたのは、搾油機の部品の一つである練器の改良。

 

ハンマー(本文用)

 

「これを使うことで、足で踏んづけてしまったようなオリーブの実を搾ってもデフェットオイルになる確率を減らすことができるんだ。」

 

ん?足で踏んづけてしまった実?

そんなもん入れちゃダメでしょう。良いオリーブオイルを搾るための根本的な発想の仕方が私たち日本の生産者と少し違っているようです。

 

ハンドピックマシン(本文用)

 

わたくし達日本のオリーブ生産者は、手摘み、すなわち一粒づつのオリーブの実を文字通り人差し指と中指と親指の3本の指に挟んで丁寧に果梗からちぎって収穫します。その時も、爪で傷がつかないように細心の注意を払って作業をします。

イタリアのオリーブオイルも、ガイドブックに載せている収穫方法に「Hand Pick」と表記している生産者がいます。でも実は指で一粒づつ収穫するのではなくて、写真のようなマシンで実を叩き落して収穫するのです。

 

小豆島信貴(本文用)

 

一つ一つを手で摘むほど丁寧な仕事をする日本のオリーブ生産現場から見れば、とてつもなく乱暴に見えるイタリアですが、それでも良いオリーブオイルが搾れてしまうのは。地の利です。

日本と違い春から秋にかけて少雨となる地中海性気候や、ミネラル分の豊富な土壌から、とてもポリフェノール値の高いオイルが搾れるため、品質劣化を抑えることができるからなんです。

 

それでも5年前に訪問した時と比べると、品質に対しての意識の高い生産農家は増えてきています。味や香りに対して世界一敏感であろう日本人が、イタリアでの生産現場で、日本流の丁寧なオリーブ生産を伝えていければ、オリーブの世界もいろいろな展開があるんじゃないでしょうか。

Text : Olive Hills

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