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  • 2017/3/10 05:00:27

築地「場外」市場はのこります(Report 42)『場外名物・ようこそ人情食堂へ 〜その②〜』

『グリル』という懐かしい響きと、ナイフとフォークのイラスト。黄色い看板には「いつか入ってみたい」の思いがありました。築地の老舗玉子焼き屋さんの息子としても有名なテリー伊藤さんが、イチオシの洋食屋だと言っていたのを耳にしたことも。そんな築地場外きっての名物食堂『東都グリル』(築地6-22-4)に、とうとう足を踏み入れることができました。

 

写真(01)(本文用)

入り口のガラスケースには、洋食の食品サンプルが並びます。どれも、おなじみの定番メニュー。「入ってみたい」の思いが募ります。

 

写真(02)(本文用)

ズラリ並んだ食品サンプルの大ジョッキのデカさも築地ならでは。とっても魅力的ですが、女一人では足を踏み入れられなかったのは、朝早くから店先には、ほろ酔い上機嫌の方がいっぱい。

そうなんです、午前6時に開店する『東都グリル』は、市場で働く人や仕入れなどで築地に通う食品業界の人たちの、いわば「社食」みたいなところ。わたしが場外に買い物に出かける朝10時あたりが、皆さんにとっての仕事を終えてのアフタータイム。お疲れ様~の、癒やし時間なんですね。

 

初めて階段を降りて、地下1階にある店内へ…!

初めて階段を降りて、地下1階にある店内へ…!

築地場外のブログを書いていることを知ったママ友が、鮮魚類を加工・販売している友だちを紹介してくれるといいます。「本当においしいところを知っているの」のママ友の言葉に、「ぜひ、お会いしたーい!」。

およそ月に一度のペースで、築地で集まりがあるそうで、その会合のあとに待ち合わせ。東都グリルのあるビルは、マグロを扱う業者の事務所がたくさんあるとのこと。ラッキーなことに、「東都グリルでランチしましょう」と!

もちろん、「東都グリル」は紹介者などいらなくて、誰もが入れる街の食堂です。

 

写真(04)(本文用)

朝10時半過ぎ。65席あるという広い店内。仕事を終えてホッとした方々の、マッタリとした雰囲気が漂っていて、夕方みたいな雰囲気です。お酒を注文されている方もちらほら。

 

写真(05)(本文用)

「グリル=洋食屋」と、ひとくくりにはできません。和・洋・中のバラエティにとんだメニュー! その種類の多さは、とても言い表せないので、メニュー表をパチリ。そのうえ、定食のオカズは水曜と土曜に、季節にあわせてバンバン変わるそう。しかも、ほかに「おつまみメニュー表」もアリ!

 

写真(06)(本文用)

厨房をのぞくと、真っ白なコックコートの料理人さんたちが、湯気の中で忙しそうに手を動かしています。「これはオイシイに決まってる!」……当たり前、日本一の食を支える築地で働く人に支持されている「築地人の社食」なんですから! それにしても、刺身定食はもちろん、ハンバーグもかつ丼も、チャーハンまで……。

 

写真(07)(本文用)

ゴクリ、何を食べましょう?

とまどう私に魚業者さんが、「築地ですから、マグロの刺身をぜひ! 定食ではなく単品で」と。

「わ~厚切り、とろけます~」。新鮮なのは当たり前。専門の業者さんを前に、なんと表現したら、よいのでしょう!

朝10時台から、新鮮マグロ!

 

写真(08)(本文用)

ガッツリ! 魚業者さんは、いつも「しょうが焼き定食」を注文するそう。鉄板の上で、薄切り肉がジュウジュウ踊っています。

でも、まだ朝11時前、なんですけど…。

 

写真(09)(本文用)

「築地です! この季節は牡蠣フライを~」。

 

写真(10)(本文用)

サクサク衣の中に牡蠣がぎゅうっと詰まっています。さらにうれしいのは、定食の付け合せ。千切りキャベツにトマトにパセリ……そして、ケチャップ炒めのスパゲッティ! はい、むかしむかし、「ゴチソウ」といえば、家庭でもレストランでも、必ずお皿の上に、この組み合わせがのっていました。ジンワリ。タルタルソースは自家製だそうです。

 

写真(11)(本文用)

極め付きは、「ビーフシチュー」。「これは絶対、食べてくださいネ」の、魚業者さん超おススメ! 東都グリルの名物らしいです。

どこか家庭風味のドミグラスソースは、ごはんにあうアッサリ系。ゴロゴロと入った、バラ肉が口の中で溶ける、溶ける~。これは、朝から体力仕事をこなしてきた市場のみなさんの胃の腑に、温かくしみわたることでしょう。

……まだ、11時をまわった頃なんですが、ぜいたくなシチューをいただいて、すっかりディナー気分です。

 

写真(12)(本文用)

思わず回りにつられて、「カンパ~イ」は、ナイショ。(……ココだけのはなし、朝飲みって、たまりませ~ん)

やはり、うまいもんはジモティに聞け! うまいもんは、プロに聞け。

魚業者さんは、回りで飲んでいる方も業者さんが多いし、お仕事や築地のはなしは一切なし。久々に会ったというママ友と、昔話に花が咲いてワイワイ。

満腹です。いっぱい笑ってココロも満足。

 

とたんに魚業者さんが「行きましょうか?」

パっと、席を立ちました。

ふと気が付くと、入り口に列ができています。そろそろランチタイム。近隣のオフィス勤めの人で混雑するようです。

サクッと食べて、サクッと席を立つ。

築地にたずさわる方、ほんとカッコイイです!

 

<後日談>

東都グリル・ちょっぴりSTORY

写真(13)(本文用)

みんなで座った席の横に、小さなミニチュア牧場のコーナーがありました。なぜ?

 

写真(14)(本文用)

築地とは関係なく、ブタさんやウシさんのミニチュアが並べてあります。

思いきって、お店の方にお聞きしました。

「どうして、ここにミニチュアの動物が飾られているのですか?」

「ふふふ、かわいいでしょう」。お店のおかみさんでした。

 

写真(15)(本文用)

見回すと、あちこちの壁に絵画が飾られています。

おかみさんは「絵も、わたしが好きなので。そんなにいいものではないけれど、気に入ったものをコツコツ集めてきたんです」

築地で一番広いスペースがあるといわれる食堂は、じつは、おかみさんのギャラリーでもあったのです。

 

「東都グリルは、長くやっていらっしゃるのですか?」

「昭和38年に父が始めたから、もう半世紀以上、ここでやらせてもらっているわねぇ」と、おかみさん。思わず「今日はビーフシチュー定食を食べにきました。とってもおいしくて……」と、わたし。

「あら、まぁ、おかげさまです。みなさんに感謝しているんですよー」。

そして、「母も、まだまだ頑張っているんです」

今日も水を運んできてくださった方。ご高齢ながらハツラツとしていらっしゃいます。

「おいくつなんですか?」

「91歳になります」

ジーン。ずーっと変わらない味、ずーっと変わらないおもてなし。ずーっと変わらないボリュウム。築地で働く味にうるさい人たちに愛される食堂は、ずーっと変わらない「人」の心で支えられているんですね。

 

写真(16)(本文用)

階段を上って地上に。手書きのメニュー看板の下には、手入れの行き届いた鉢植え。たくさん咲いている小さなスミレの花から、半世紀以上変わらない、おかみさんの温かな思いが伝わってきました。(おしまい)

Text : miho

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