• レビュー
  • 2017/2/18 05:00:26

"落語を食う"<その三>『しし鍋/二番煎じ』①

寒い日が続きます。風邪やインフルエンザにはもちろん気をつけないとですが、忘れてならないのは火事。江戸時代とは違って法律や不燃材など発達してますが、火事はなくなるものではありません、本当に怖いのでみんなで気をつけましょう。
そして江戸のまちはとても燃えやすく、何度も被害になってるので、落語にもそれにまつわるものが多くあります。今回は防災の意味もこめて、その中から「二番煎じ」を。火の用心、というより火事の見張りの衆がずっと呑んだり食ったりしてるだけの話なのですが。

江戸の夜の防災や犯罪などを警備していたのが「番太」とよばれた人たち。警察や消防団のルーツのようなものなので、それなら町で一番の力持ち、のような頼りがいのある人をイメージしますがそうではなく、誰もなりたがらない役であまり役に立たない輩が担当するの番太だったそうです。確かに寒いし危険だし、優秀な人が好んでやるものではないのでしょう。

番太だけじゃ心配だ、というので町内の旦那たちが交代でグループをつくり夜回りをすることに。どちらかというとこっちが現在の消防団に近いと思います。ABのグループにわかれ、最初のA班が休憩中に呑んじゃいけない酒を呑みだし、さらにしし鍋まで登場し、こっそりというよりけっこうなちゃんとした宴会になってしまう、という噺が二番煎じです。

この噺を名人がやると宴会の場面が本当にたのしそうで、ずっと呑んだり食べてるだけなのですが、一緒に加りたくなります。しし鍋はイノシシ鍋ですが、ライフルとか丈夫な網とかない時代なので、ジビエとかでうかれる今よりもっと貴重で贅沢な鍋のはず。ぼたん鍋なんてもいいますが、実はまだ食べたことありません。今回はそのしし鍋とそれを食べてる旦那達がルーツになった消防団について考えてみます。

消防団というと、私の知る範囲ではこの噺のように、おじさんたち社交場のイメージしかなかったのですが、本来の消防団はむちゃむちゃカッコ良いのです。なかなか見れるものではないのですが、なんと!それが生で見れる祭りがとても都合の良いことに来週の土曜日に岐阜県の飛騨市神岡で開催されます。

【初金毘羅宵祭】
_IGP1647(本文用)

http://konpira.kamioka.info/

詳しく正確なことはこちらを見ていただくことにして、私なりにかいつまんで説明すると、この町はまわりの高い山に囲まれた完璧なまでの盆地。いったん火事になるとフェーン現象で火が止まらず、過去に2度も町が全焼したのだとか。そこでこの町で唯一の酒造の当時の社長が東京の木場の本場の木遣を取り入れました。それがこの祭りのきっかけ。木遣り(きやり)とは作業をするときの掛け声が歌になったもので、火消し以外にもや材木屋さん、大工さんなどそれぞれの職種にかつてはあったものです。噺のなかでは寒さで横着しながらも棒や鐘をならしたりしますが、火消しにも夜回りする際、パトカーが音をだすように音があったほうが効果的なのでしょう。それが発展して木遣になったのだと思います。

火事と言えば規模では江戸が本場、そこでの火消しの木遣は最先端テクノロジーであり、最強に力がはいるアンセム的なものだったのではないでしょうか。最初はもちろん、きっぱり断られるも何度も足を運んだりしながらどうにか習えることに。これが昭和30年くらいのこと。神岡は今でも東京から行くのが大変な場所なので、かなり大変だったのでしょう。その努力が伝わり、神岡まで親方が教えに来てくれたそうです。神岡のリーダーは酒造の社長なので、もちろん毎晩反省会では美味しいお酒を酌み交わしたはず。そこは噺の宴会のように楽しかったと思います。イノシシはこのへんでも捕れますし。
この祭りは毎年2月の終わりの土曜日に開催され、私は一昨年から参加しております。その最初の年が幸か不幸か、かつて経験したことない大雪で、すっかり白く覆われた町はまったく様子がわからず、そこでの突然の祭りは幻想的であり異次元なショックで何だか訳がわからないまま、とても楽しく過ぎていきました。

酒造で楽しく試飲しておりますと、そこにドラマの忠臣蔵の討ち入りのような、年季の入った渋い法被をまとうこわもてのおじさんたちと華やかな衣装のおばさんたちが突然現れ、隊を組み、いきなり声をあげだしたのでした。ガヤガヤしていた酒屋はただちに静まり返り、その不思議な音色につつまれました。これがまさしく、その木遣でした。
動画で雰囲気が伝わるかどうか、私があげたものがあるのでご覧ください。
大坪酒造での木遣り唄
https://www.youtube.com/watch?v=9RKPzSnZJaQ

【ふるまい酒が凄い!】
この祭りは木遣の他、町内のグループが造った山車やおかしなどが飛び交う「まきもの」など見どころがたくさんありますが、私が凄いと思ってるのが、お酒の振る舞われる量のすごさ。町のいたるところでお酒がふるまわれ、二番煎じどころではなく、ずっと飲みっぱなしでした。山深いだけあり水が美味しいのでお酒がとても美味しく、さらに寒いので全然酔わず、いくらでも飲めました。ホントに楽しかった。

あまりに楽しすぎて、この祭りでお酒を効率よく振る舞われるマップを制作しました。
地図には東京から出発し、最後は地元の名物、とんちゃんとラーメンで〆るまでがわかりやすく親切丁寧にのせてあります。公式サイトからもダウンロード出来ますし、バスタ新宿でも配布しておりますので、気になる方は是非ご覧になってください。そして来週一緒に呑みましょう!
http://konpira.kamioka.info/download/

申し遅れましたが、私は「ツール・ド・デザイン」という、日本のあちこちでうもれたデザインを見つけたり、それを地図にしたり、という活動をしております。どこにもない面白い地図が作れそうな情報あればお寄せください。
http://tourdedesign.jp/contents/

Text : masaei

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