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  • 2017/1/17 05:00:32

「オリーブオイルの魅力とその使い方」第16回「オリーブオイルに合わない食材って?」

雫(本文用)

 

オリーブオイルには大きく二つのお仕事があります。

 

一つは「マスキング効果」

オリーブの持っている強い抗酸化物質「オレウロペイン」オリーブポリフェノールの強い苦みや辛みは、お魚やお肉の特有の匂いをマスキングしてくれるだけの、強い効果を持っています。

 

アジの干物(本文用)

 

イワシのお刺身や、アジの干物なんかに辛みの強いオリーブオイルをかけることで、青魚特有の生臭さをスッキリ切ってくれるのが、その典型的な使い方。

 

ヤガラ刺身(本文用)

 

もう一つは「味の拡大鏡」としてのお仕事。

素材の隠れたおいしさを大きく引き出すお仕事をするんです。それのもっともよく現れるのが、フグのお刺身やオコゼのお刺身への使い方。もともと持っている素材の奥の方に隠れている、強いウマミの成分をオリーブオイルが上手に引き出してあげることで、食材のポテンシャルの3倍も5倍ものウマミを演出してくれます。

 

で、ここまではオリーブオイルの美味しい話。

普段のテーブルに置いておいて、どんなお料理にもお醤油やお塩をかけるように回しかけて使ってほしいと思っているオリーブオイル。たいがいのお料理には素晴らしおいしさの効果を出してくれるんですが、「味の拡大鏡」は美味しくないときも拡大するんです。

 

ちょっと前に、イタリアンレストランのオーナーから、知り合いのジェラート屋さんが作った試作品「ゴルゴンゾーラのジェラート」が口に合わないため、オリーブオイルをかけると良くなるんじゃないか、ということでいいオリーブオイルを持ってきてほしいというリクエストがありました。

まずは、そのゴルゴンゾーラのジェラートを頂いて

「・・・んー、ちょっと食べにくいね、この味。」

ゴルゴンゾーラにハチミツって組み合わせはけっこう美味しいもんだから、その延長線上でジェラートに応用したみたいなんだけど、あんまりいい組み合わせになっていないみたいです。

 

オリーブアイス(本文用)

 

アイスクリームにオリーブをかけるのは、オリーブヒルズのオリーブランチセミナーの定番。この場合は乳脂肪分が15%以上の「アイスクリーム」を使うこと。

 

リナシメント(本文用)

 

そのこってりしたアイスクリームにかけるのはポリフェノールたっぷりで強い辛みが特徴のドリッタ種100%の「リナシメント」。ポリフェノールの強い辛みが、アイスクリームの油脂分をさっぱり切ってくれて、とても爽やかなデザートに変身します。オリーブヒルズのオリーブランチセミナーでも、初めて体験されたお客様はその変化に皆さんビックリされます。

 

さて、いよいよオリーブオイル登場、ゴルゴンゾーラジェラートに回しかけて、一口頂きます。

 

「!?・・・なにこれ、マズい! もう食べモノじゃない!!!」

 

もともとあんまり美味しくない状態だったのが、オリーブオイルの拡大鏡効果のおかげで、その悪いところが一層強調されてしまったんです。

良くも悪くもオリーブオイルは味の拡大鏡。

 

でも、これはもともとの食材の味に問題があったケースで、オリーブオイルとの組み合わせが悪かったわけではありません。

 

わたくしどもが長くオリーブオイルと食材の組み合わせを試している中で、今のところたった一つだけ相性が悪い食材が見つかっています。

しかも皮肉なことにそれは筆者の最も好きな食材なんです。

 

「カツオ」

 

カツオ刺身(本文用)

 

筆者の家族では、白身魚のフグが魚の女王、赤身魚のカツオが魚の王様だと定義しています。

 

「赤身の王様はマグロでしょ!?」

 

って声が聞こえてきそうです。もちろんマグロも美味しい魚ですが、ウマミ成分の量で言えば圧倒的にカツオに軍配が上がります。日本料理で出汁を引くための節と言えば、鰹節のこと、その他の節はマグロであろうとサバであろうとすべて「雑節」として、一ランク下に扱われます。

もちろん、京都の「瓢亭」さんのように敢えてマグロ節を使う料理屋さんもありますが、それは高橋料理長の、カツオのウマすぎる力と香りに頼らずに、自身の腕で透明感のあるおいしさを創り上げる絶対的な技術とズバ抜けた経験があるからできる「規格外」の話です。

 

吸い物(本文用)

 

お刺身でもご飯でもなんでもオリーブオイルをかけるのがオリーブヒルズの流儀。

でも、このカツオだけはどうしてもオリーブオイルとの相性が良くないんです。

 

てこね寿司(本文用)

 

具体的には、オリーブオイルをカツオにかけると、カツオ特有の「鉄臭さ」がことさら強調されてしまうんです。ウマみの強い赤身魚の特徴は、その黒潮海流で躍動する筋肉に流れる血の味にもあります。特にこのカツオという魚は鉄分をより強く感じる身質。オリーブポリフェノールである「オレウロペイン」とこの鉄分との相性がすこぶる悪いようなんです。カツオがオリーブオイルと出会うと鉄臭さがさらに進んで「血生臭さ」として現れてきます。

ちょうど、お刺身にタンニンの効いた赤ワインを合わすと生臭さが強調されるのと似ています。

 

「お前さん、本当に新鮮でおいしい刺身とのペアリングを知らないからだろ?銀座の『鮨からく』さんとこ行って勉強して来い!」

 

戸川大将(本文用)

 

はい、勉強してきました。戸川さんの本当に素晴らしい仕事を施したお鮨は、しっかりしたカベルネと素晴らしいペアリングを魅せます。むしろフレンチよりよっぽどワインの良さを引き立てるくらい。

 

で、カツオ。

無類のカツオ好きでもある筆者は、カツオが釣り上げてられてから何時間後に最もウマみが出てくるかまでもこだわるほどのカツオフェチ。

何回ともなく合わせてみました。刺身、ヅケ、焼き物、醤油炊き、てこね寿司、さらにはお吸い物。もちろん、オイルもいろいろ取り替えます。ポリフェノールの弱いもの、強いもの、香りの強いもの、弱いもの・・・。

 

結果はいつも同じ。

「血生臭い」

 

もちろん、味覚なんて最終的には個人のもの。実際、わたくしどものお客様の中にも、カツオにかけても美味しかったよ、なんておっしゃる方もいらっしゃいます。

でも、絶対的な味覚として大多数が好ましく思わないであろう「血生臭さ」を感じるのは事実です。

 

ハッサクオリーブ(本文用)

 

オイル屋の業(カルマ)として、これまで、およそ口に入れることのできるものは、全て一度はオリーブオイルをかけてきました。ハッサクだろうがコーヒーだろうが日本酒だろうがショートケーキだろうが容赦しません。その経験の中で、今のところここまでオリーブオイルにケンカを売ってきたのは、カツオをおいて他にありません。

 

この血生臭さに対しての科学的なメカニズムについての所見が、ここ食育通信のページで紹介される日はそんなに遠くないと思っています。

Text : Olive Hills

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