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  • 2017/1/12 05:00:52

<本のご紹介>日本の食生活全集

今日は、先日ご紹介した「農業書センター」の荒井店長からおすすめいただいた本をご紹介します。

 

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「日本の食生活全集」より

「日本の食生活全集3 聞き書・岩手の食事」(農文協刊・2900円)

 

1980年代に刊行されたこの「日本の食生活全集」は、47都道府県ごとに、その食生活をまとめたものですが、そこに「アイヌの食事」、「日本の食事事典1・2」の3冊が加わり、全50巻で構成されています。

それぞれの都道府県に伝わる食事を丹念に聞き書きして記録した、貴重な資料です。普通の家庭での食事風景をここまで細かく取り上げた書籍は類を見ないでしょう。また、時間をかけて丁寧に取材して作られた本自体、近年はあまりみかけなくなったので、その意味でも価値のある本だといえます。

 

荒井さんによれば、食事風景に地方色が色濃く残っていたのは昭和初期までで、戦後は地方の食事にも欧米化の波が押し寄せ、本来の郷土食が失われてしまったといいます。さらに、近年は、地方を観光地として盛り上げるための「作られた郷土食」が増えたため、本来の伝統的な食事に関する情報だけを集めることが難しくなったそうです。こうした理由から、都道府県ごとに食生活を詳しくまとめた本を再び作ることは不可能だろうと、荒井さんはいいます。

 

私たち日本人の本来の食事がどのようなものであったかを知ろうとするとき、この「日本の食生活全集」は一読の価値があります。

いずれの巻でも、農業や漁業、狩猟などを中心とした人々の日常生活と食との結びつきを詳しく取り上げていることが特徴です。どんな食材をどんなシーンでどのように食べてきたかということまでが書かれており、まさに人々の暮らしに密着した食事の風景を知ることができるのです。読み進むうちに、地域の人々の家を訪ね、日々の食事を共にしているような感覚になります。

 

全50巻のなかで、荒井さん一押しの1冊がこの「岩手の食事」です。

 

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岩手県は面積が広く、海も山もあります。そのため、豊かな日本人の食事を象徴するように、岩手県の食文化は多彩なので、入門書として読むことができるのだといいます。

 

この巻では岩手県を以下のように5つの地域に分けて、それぞれの食文化を取材しています。

 

1 雑穀を基本にする県北の畑地帯

2 米・麦の粉食に特徴ある県中央部

3 多彩なもち料理の県南地域

4 豊かな海の幸に恵まれた三陸沿岸

5 山菜・きのこ類を食前にとり入れる奥羽山系

 

内容を少しご紹介しましょう。例えばこちらは穀類や豆類をどのように加工・利用してきたかというページです。

 

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県中央部の食事の「しとねもの」という項目を見てみましょう。

 

「粉に水を加えて練る」ことを「しとねる」といい、この地域では、米粉やそば粉、小麦粉を練った「しとねもの」が主食とされてきました。「しとねもの」にもたくさんの種類があり、晴れの日に食べるもの、日常食として食べられるものに分かれています。昔、白米は高級品で、盆や正月に食べる晴れの食事だったので、人々が日々手に入るものでさまざまな工夫をして、食生活を豊かにしようとしていたことがわかります。

毎日食べることだけで大変だった貧しい時代にも、人々は日々の食事を大切にし、楽しもうとしていたのです。

 

ひるがえって、食べたいものが簡単に手に入る現代の食事は、豊かであるといえるでしょうか。

この全集は、毎日の食事を考えなおすきっかけを与えてくれるでしょう。

Text : harumi

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