• レビュー
  • 2016/12/31 05:00:10

"落語を食う"<その二>『家で呑む酒/芝浜』③

【貧乏徳利】
先ずは最初に私が予想したお酒を家に持ち帰る方法ですが、江戸の食文化に詳しい方にだめもとでメールで問合せたところ、親切丁寧にお返事頂き知ることが出来ました。陶器で持ち帰る、までは正解。お酒は蔵から樽で小売する場所まで運ばれ、庶民は陶器のマイ徳利をもっていってそれに詰めてもらいます。それが「貧乏徳利」。樽でお酒を買えない庶民のための小分け用の徳利でした。名前や柄などは入ってなかったそうです。それが予想と違ってた。確かに油性ペンなどない時代に庶民がどうやって陶器に描けばいいかとは気になってましたが。

0%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

江戸も後半には徳利は店で用意するようになると店の名前や広告が入るようになります。お酒の銘柄ではなく、酒屋の名前なのが今と違う点。描かれた方法は「釘書き」と言うたがねや釘などで傷をつけて彫る方法でした。墨で書いたように丁寧に描かれたものも最初はありましたが、量が増えるにつれ雑になってきます。うちの瓶だぜ、貸してるだけだよ、くらいの感じでカッコ良さやデザインなどの感覚は無かったようです。

【今でもある芝浜】
先日「江戸前☆芝浜落語会」という立川談笑の落語会に行ってまいりました。初代立川談笑の墓石がある正伝寺で毎年開催される落語会です。タイトルよりも談笑目当てで行ったのですが、実はこの界隈こそ芝の浜。バリバリのオフィス街だけではなく、確かにその隙間に江戸が残る街でした。

%ef%bc%91%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

%ef%bc%92%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

%ef%bc%93%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

魚河岸は当時は雑魚場(ざこば)とよばれ、実際に水揚げがあったのだと。現在は「本芝公園」という児童公園。雑魚場だった面影は一切ないと思います。
%ef%bc%94%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

本来海だったあたりには高層のビルが立ち並び、人間は凄いんだかひどいんだか複雑なかんじになります。波の音が聞きながら一服して魚河岸が開くのを待つシーンは見どころの一つですがそこは線路がしかれ東海道線が凄い勢いで走り去ります。
%ef%bc%95%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

見回した感じ、財布は落ちていないので自分の財布を置いてみました。革製です。
%ef%bc%96%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

公園の周りはちょうど開発が終わったばかりでガッツリ新しくなってしまい残念でした。ここで魚がとれて、それが江戸の街に運ばれていたと思うと不思議で仕方ない感じでした。
【改めて芝浜を考える】
諸白の日本酒をお燗で味わってみて、お燗のお酒の美味しさを改めて知りました。それもちょっと温度が上がりすぎると台無しになるので、温度管理は奥さんがかなり気を張ってしていたと思われます。それが上手過ぎて魚屋も働かなかったのかもしれません。よく出来た奥さんとも考えられますが、実は

お酒が好きだった、

のではないでしょうか。お酒が好きでないと温度の頃合いもわからないし、きっちり温度管理しないと思います。ただし魚屋が呑みすぎるし働かないので奥さんにとってはお酒は敵というかありがたくないもの。出来れば家にあってほしくないと思っていたはずです。

それがうまいこと魚屋を働かせることが出来るようになり、借金も返して店も構えることが出来ました。畳も張り替えて年を越す準備は万全。頑張ったのは魚屋ですが、頑張らせたのは奥さん。あたしだって褒めて欲しい。最後にあんた呑んじゃいなよ、と酒を勧めたのも魚屋をねぎらうのはもちろんですが実際は、

自分が呑みたい!

と思っていたのではないでしょうか。一番高い諸白を準備していたはず。そこを洒落でくじかれてガッカリ、だったのでは。ずっと禁酒して働いてこれだけ幸せになり、財布のことも白状し、ここが一番お酒がうまい瞬間なのは間違いなし。

夢じゃないよ、何言ってんだよ!
で奥さんがサゲを切り返し、奥にごっそり用意した肴と酒をバーンと差し出す。今までできなかった贅沢をこの日ばかりは解禁する!

最後は仲良く夫婦で呑んで年を越す芝浜も聞いてみたいと思いました。
今夜はうちはそんな予定です。

Text : masaei

tag : , ,

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して食育通信onlineは一切の責任を負いません。

ページ上部へ
ツールバーへスキップ