• レビュー
  • 2016/12/28 05:00:08

菱を呑む。菱の皮を食べる。え、菱って食べられるの?

菱型の菱、三菱の菱、その菱(ヒシ)は茹でたり蒸したりすると栗のような味わいの食べ物。菱を加工した焼酎やお菓子もあります。実は菱を食べ物として知ったのが恥ずかしながら初めてでした。ちなみに菱の硬い外皮も食べられて、しかも機能性成分があるという記事です。

佐賀に行ったときに地元食材について情報収集していたら佐賀には「菱」があると教えていただきました。菱というと図形の「菱型」であったり、また菱型の展開として家紋の「割菱」「寄せ三菱(三菱グループのマークなどでおなじみの)などが思い浮かばれますが、菱は食べられて加工品として焼酎やお菓子があるというのです。そこで佐賀滞在中に菱の食材、また加工品として焼酎やお菓子を探し回ったものの菱の旬は秋ということで惜しくもシーズンを逃して見つけられませんでした。その後、焼酎とお菓子を送っていただきました。嬉はずかしはじめての菱。さっそくレビューしたいと思います。

調べてみるとそもそも菱は日本では北海道から九州・四国まで広く生息する一年草の水草でした。古くは柿本人麻呂が万葉集に詠んだほどで、図形として菱の形が使われた最初は縄文時代前期の土器から見つけられるのだとか。

そんな歴史ある植物「菱」が現代の日本であまり知られなくなった経緯はわかりませんでした。ただまだ栽培されている地域はあり、とりわけ佐賀は菱の栽培がしっかりと食文化として残っている場所のひとつのようです。菱の収穫はたらい舟に乗って行われるこの地ならではの風物詩のひとつだそうです。YouTubeにこんな映像が色々見当たりました。

収穫した菱の実はかなり硬いもののようで、菱の実をカットする専用の機械まで開発されています。大量にカット処理するくらいの収穫量と消費量があるからこそ、加工機械が開発されると思われます。

今回、菱の食品を送ってくださったのは西九州大学 健康栄養学部・健康栄養学科の安田みどり教授。下記はこの2月20日のニュース記事「ヒシの皮でメタボ予防」。食品に含まれる機能性成分を分析し、健康食品の開発を通して地場産業の振興につなげていく研究に取り組んでいる先生です。

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出典:https://this.kiji.is/73624283713144316?c=39546741839462401

まずは菱の実ですが、こんな感じのフォルムです。富士山のような形にも見え、羽を広げたコウモリのようでもあります。古くから文様にも使われていたり絵画にも描かれているフォルムなので、どこか懐かしさを感じる不思議な形状ですね。

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別アングルはこんな感じです。

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「風の谷のナウシカ」のメーヴェ、あるいは「未来少年コナン」のギガントみたいなものを想像した方もいらっしゃるのでは。カメラのファインダーをのぞいているとこのフォルムに惹きつけられてしまいます。この殻は大変硬く、かつ両端が鋭く尖っているので素手で割るのはほぼ不可能のようです。血がにじむような思いをした結果、栗のように簡単に中身を取り出すのは至難と判断しました。

ちなみに収穫した菱は、蒸すと栗のような味わいのものだそうで、でんぷんが主成分の食べ物です。菱の実を一晩水につけてから茹でて、皮を剥いて、そのまま食べたり、炒め物や揚げ物にも、また炊き込みご飯などにもなるようです。写真は和菱ですが、中国でも古くから栽培されているようで料理にも広く活用されているそうです。

菱を加工した食品のひとつに焼酎があります。それが「神埼菱焼酎」です。「神埼」とは佐賀県東部の弥生時代の遺跡として知られる吉野ヶ里遺跡のある神埼市のこと。

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製造しているのは大和酒造株式会社。原材料はひしと米麹。アルコール度数は43度です。

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パッケージの中にはこの焼酎の説明書きがありました。

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以下引用。

古くから肥前神埼の地に張り巡らされた掘に育つ風味豊かな和菱をひと粒ひと粒摘み取り、肥前佐賀の手練の杜氏がその風味を最大限に引き出して蒸留し、大甕(おおかめ)でじっくり熟成させました。本格焼酎ならではの豊かな香りと味をお楽しみください。

なるほど、神埼には写真のような見渡す限りの菱が育った掘が張り巡らされているのですね。先の映像だけではわからなかったのですがきっと美しい光景に違いありません。

さて、菱は茹でると栗に似た味わいのでんぷん質の食品ということを想像すると、土佐の栗焼酎「ダバダ火振り」を思い浮かべるのですがどうでしょうか。注いでみます。

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せっかくなので有明の海苔などをつまみに引っ張り出してみます。

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右手に見えるのが菱です。さて実際に飲んでみるとアルコール度数が43度ということもあり、アルコールの揮発が強く焼酎の味わいが掴みにくいのですが、実にすっきりとした味わいで、喉をつたった後にほのかな甘みのある香りを感じます。

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お湯で割るとよりほのかな甘みのある香りが引き立ちます。このうっすらと甘い香りに誘われて呑んでみると期待を良い意味で裏切られてすっきりしています。

さて、焼酎を作るときに必要なのは菱の中身です。したがって皮は不要となりますが、先の安田教授はこの皮に注目し機能性を調べたところ肥満や高血圧を予防する成分(ポリフェノール)が含まれていることがわかったのだそうです。まさに焼酎の呑みすぎのメタボリックシンドロームの人にはもってこいの機能性ですね。そんな機能性からアプローチした食品が「ひしぼうろ」です。

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菱を模したキャラクターが汗を流して走っている絵柄がついています。

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裏面を見るとこんな感じ。

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原材料としては、卵、砂糖、小麦粉、でんぷん、はちみつ、水飴、菱の実外皮、膨張剤、ブドウ糖、ごま油となっています。「ぼうろ」は長崎の出島からシュガーロードを通っていく過程で伝わったと言われる佐賀の銘菓のひとつ。ここに菱の外皮を練り込んだというわけですね。

さて包み紙にあったキャラクタは裏面でも頑張ってくれていました!

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なんと名前が「ヒッシー君」というのですね。菱を広めるため必死で頑張る菱のヒッシー君。彼の姿を見てどのくらいの人が応援したくなるのか・・・興味深いところです。さて開封してみましょう。

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開けるとこちらはソフトで優雅な感じのカードが入っていました。佐賀県神埼市で作られる焼酎の裏側で使われない皮を使って地域を盛り上げたいという熱い想いから、菱の皮の研究がスタートし、研究の結果、豊富なポリフェノールが含まれて疾病予防や健康増進に効果があることがわかり、3年間にわたって試行錯誤の末に「ひしぼうろ」が生まれたということことが書いてありました。こちらのメッセージの方が「ヒッシー君」よりもはるかに応援したくなるポイントが上がりそうです。

と言いながら、小包装にも登場するヒッシー君は健気です。

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開封するとこんな感じ(菱の実は参考までにおいてみました。同封されてはいません)。

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ふんわりと焼かれているので、手で割ろうとすると柔らかく曲がります。口当たりもマイルドでソフト。噛み締めるほどに素朴なボーロの味わいが広がります。

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牛乳とあわせても鉄板の美味しさですが、温かいほうじ茶や、ホットのほうじ茶豆乳ラテなどとあわせても大変美味しいです。小包装もされていますし機能性やヒッシー君など話題にも事欠かないのでお土産やお遣い物にもぴったりのアイテムですね。

ぜひ次回は菱の摘み取りも見てみたいし、とれたての菱を湯がいたものを食べてみたいものです(菱の外皮パウダーも)。佐賀の地、そして水で育まれた菱の食文化は実に興味深いです。地元の食材や食文化というのは、暮らしに根付いているだけになかなかその興味深さに気づきにくいものですが、地域の人がその魅力を再認識すると地域振興につながりやすそうですね。西九州大学のこれからの開発にも注目です。

そして菱の栽培や流通、また加工などに参加される方が増えてくると、もっと色々なアイテムが広がりそうですね。

この場をかりて西九州大学の安田先生にお礼申し上げます。

(2016/12/28/06:10:一部修正(冒頭囲み記事追加など)いたしました。)

Text : motokiyo

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