• レビュー
  • 2016/12/24 05:00:00

"落語を食う"<その二>『家で呑む酒/芝浜』②

江戸の下り酒のメジャーブランドには「白雪」「老松」「剣菱」「呉春」などがあり、今で言うモルツ、スーパードライ、ラガー、黒ラベルのようにブイブイいわしていたのでしょう。中でも白雪は現存する最古の銘柄で今でも諸白をつくっています。そこで白雪の本醸造と諸白をお取り寄せすると、なんともステキな箱に入って到着しました。

 

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伝統的な和の意匠から新しいグラフィックデザインに上手く受け継がれた珍しい成功例と思います。無駄のないギリギリな要素に雪の結晶が程よく可愛らしさや女性ウケを加えていて、それが押し付けがましくないのが素晴らしい。お酒を2本で送るスタイルは見た目が良いのか縁起が良いのか、冠婚葬祭や建物の上棟式などで良く見られます。そのプレゼンも紐で縛るとか箱に入れるなど色々とありますが、このデザインは「2本も送って凄いでしょ」感があまり無く、さりげなく上品な感じなのに色合いはコントラストがばっちりで人目を引くもの。お酒の箱として憎らしいほどよく出来てると感じました。

 

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瓶を取り出すとなんともTHE日本酒!な嬉しくなるラベル。諸白は古地図が印刷された紙に包まれています。ちなみに諸白のほうが少し高価でした。お椀に注いでみると本醸造のほうが少し黄味がかった感じ。

 

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【白雪 本醸造】

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本醸造の意味は、詳しくは各自調べてもらうとして、庶民にお求めやすいリーズナブルなお酒の事。昔は二級酒なんて言いました。江戸の頃は本醸造という名前ではないにしろ、魚屋は普段はこんな感じのあまり高くないお酒を呑んでいたのでしょう。明日も市場に行くのやだなー、と思いながら。

飲み方として考えられるのは、当時は冷蔵庫が無いので常温か燗。外は今より寒いでしょうから冬なら外に置けばキンキンな冷になるかもですが、そんな季節に冷たいお酒を呑んでも美味しくないでしょうから燗の可能性が高いと思われます。更にここの奥さんはかなり面倒見の良い優しい方なので、お燗の温度にはかなり気を配り最高の状態でサービスしてたのでは無いでしょうか。むしろそれが上手すぎて魚屋は市場に行かなくなったのかもしれません。

今回はお酒専用の温度計とチロリとやかんできちんとお燗にしてみます。

 

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まずは常温で。

本醸造特有のスッキリしない、むわっと来る日本酒感。嫌いな方にはいちばん駄目なやつで、お酒好きな人にはそれもたまらないパンチ。魚屋は絶対好きなはずです。とはいえコクがしっかりしていて、それも嫌味でなく、いわゆる安酒とは違う美味しいお酒と思いました。

 

次に40度のぬる燗、お風呂くらいの温度です。

いきなりフルーティーになりました。常温とはまた違う品の良い香りも出てきます。近頃は高いお酒も燗にして美味しくするブームのようですが、冷蔵庫のなかった庶民にはお燗しかなく、そこで育った本醸造は温めて美味しくするお酒なのだと実感します。

 

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最後に50度の熱燗。とはいえ、安いお店で出るチンチンに熱い感じではなく、人肌よりもちょっと温い程度です。

より酸味が出てスッキリして、スッと口から抜ける爽やかな感じになりました。熱燗にすると常温よりもまったりすると思っていたましたが、ちゃんと温度をコントロール出来ればむしろ逆なのかも。

 

そしてコクがさらにしっかりし、どんな食べ物に負けない強さが出て、話で盛り上がっててもちゃんとお酒呑んでるな、と実感出来ます。おそらく魚屋も毎夜毎夜これをがぶがぶ呑みながら長屋の連中とくだを巻く生活だったのかもしれません。

 

個人的に味のピークはぬる燗の40度でしょうか。

 

【諸白】

前回の繰り返しになりますが、諸白とは通常はもろみだけのところを、麹ともろみの両方に精白米を使った作り方のこと。ラガーとか生とか一番搾りのようにその作り方の名称がそのままヒットした当時のお酒です。

 

ラベルがいまひとつなのですが、本醸造で「特選」とあったところが「超特選」にかわり期待出来ます。とはいえこれも分類では本醸造で、精米歩合や酒米は先の本醸造と一緒なようです。とはいえ、当時としては高級なお酒、今で言うドンペリ。魚屋はこれをしょっちゅう呑んでたわけではないでしょう。それでもひょっとして、財布を拾った後に調子乗って呑んだのはこれだったかもしれません。そして最後に奥さんが用意してたのはまさしくこれでしょう。

 

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先ずは常温から。

全然飲みやすくなりました。値段の違いははっきり出て、いきなり高級な感じ。目には見えませんんが、材料や作り方の違いというは大きいのだと改めてわかりました。それと木の樽の桧のような香りが加わったような気もします。

 

次にぬる燗。今度は逆に雑味が立って、日本酒のパンチが出てきた感じ。これはこれで呑みごたえがあります。

 

最後に熱燗。本醸造のフルーティーではなく、米の旨味が強く出てきました。温度によって出て来る香りやコクが変わるようです。本醸造はパンチが温度によってパンチが強くなるかんじですが、こちらはパンチの種類が変わるかんじ。とても面白いお酒です。

 

こちらのピークは熱燗の50度。おそらくサゲに至るクライマックスの、あんた呑んじゃいなよ!の時は奥さんはこの温度をキープしながら財布の件をカミングアウトしていたのではないでしょうか。そんな状況じゃないかな?

 

そんなきりのいいとこで次回に。

なんと丁度大晦日に芝浜の話をシメる事ができる事になりましたので、お楽しみに。

Text : masaei

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