• レビュー
  • 2016/10/18 05:00:31

「オリーブオイルの魅力とその使い方」第9回「オリーブハマチ~その①」

オリーブハマチってご存知ですか?

わたしたちが住むこの香川県では今や当たり前になったこの食材。食べられる時期に限りがあって、毎年9月の中旬から1月の中旬までの5か月間。この期間になると、香川県のスーパーの店頭のハマチはほぼオリーブハマチに切り替わります。少し前までは、天然ものやほかの養殖物も並行しておいていた時代もありましたが、今では全く見かけることはありません。オリーブハマチのおいしさを知っている香川県の人たちは、もはやオリーブハマチしか買わないからです。

それほどまでに美味しいオリーブハマチって、一体どんなものなのでしょうか。

 

%e4%b8%b8%e3%83%8f%e3%83%9e%e3%83%81%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

 

もともと香川県の東部の引田という地区は、ハマチやブリの養殖の発祥地として有名で、県内外にも多く出荷していました。

ハマチってお魚は血合いがあって、時間が経過するとその色がどす黒くなって美味しくなさそうになってしまいます。地元の漁業関係者がこれを何とかしようと、香川県の農政水産部や香川大学農学部なんかとも相談したところ、香川県の特産のオリーブに含まれるオリーブポリフェノール成分である「オレウロペイン」が、血合いをどす黒くさせるメトグロビンの生成を抑えるのに効果的なのではないかとの意見を得ました。

では、早速実験してみようと養殖ハマチのエサにポリフェノールたっぷりのオリーブの葉っぱの粉末を混ぜて給餌してみたところ、見事に血合いの色が鮮やかなピンクに染まったハマチが出来上がったんです。そして、そのきれいな色は時間が経ってもどす黒く変化することなく、鮮やかな発色を保ってくれたんです。

大成功です、オリーブポリフェノール「オレウロペイン」が予想通り、血合いの色をきれいに留めるという大仕事を務めてくれました。

 

%e3%83%8f%e3%83%9e%e3%83%81%e5%88%ba%e8%ba%ab%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

 

ところが、話はこれで終わらかなったんです。

 

食べてみたそのハマチの刺身の味、今まで食べていた養殖ハマチのベタッとした脂っこさとは無縁の、さっぱり爽やかな味、さらには養殖魚特有の臭いも一切感じられない、今まで味わったことのないハマチになっていたんです。

包丁を入れた切り身、その断面は端正に光り輝き、お刺身の良しあしを構成する大切な要素である鋭角に切り立ったカドは、時間の経過を経ても全くへこたれることなく、鋭くその美しさを保ち続けています。

 

血合いがどす黒く変化するのを何とかしたい、というテーマから始まったオリーブハマチプロジェクトの結果は、その当初の目的を完璧に果たしてくれただけでなく、それを何倍にも上回るとんでもない副次的な成功をもたらしてくれたんです。

 

百聞は一見に如かず、否、百読は一舌に如かず、是非、食育通信の読者の方々にはオリーブハマチを一度召し上がっていただいて、その真価を知っていただきたいと思いますが、今日はそれを少しだけ紙面でお伝えしています。

 

初めてオリーブハマチに触れたのは、もう5年以上も前です。

柵で購入したオリーブハマチを、その包丁のあたりの柔らかさでお気に入りのイチョウのまな板に乗せて、さあ刺身を引くぞ、と、柳葉の歯元をハマチの身に当てた瞬間

 

「え?」

 

ハマチってこんな弾力あったっけ?

 

普通なら鋼でできた柳葉包丁のその重みで勝手に身に切り込んでいくはずのハマチの身が、まるでそれを拒絶するかの如く、包丁を押し返してくるんです。なんてことだ、切られまいと抵抗するオリーブハマチに対峙して、こちらは柳葉をいつもより強く押し込んでいかざるを得ません。

感覚的は、その強い潮流にもまれて引き締まった弾力性のある身を作った明石から瀬戸内にかけての鯛のお刺身を引く感じに近いです。

ブリやサバ、イワシやアジなんかと同じで、ハマチもいわゆる青物と言われるお魚で、身質が柔らかく、包丁を入れてもスッとはいっていくものですが、このオリーブハマチは、自分が青物である自覚がないがごとく、鋭く切り込もうと下す柳葉を押し戻そうとするのです。

 

%e3%83%8f%e3%83%9e%e3%83%81%e3%81%a8%e3%82%aa%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%96%e8%91%89%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

 

この時点でオリーブハマチがただものではないことを予見するのですが、結論は次の、その身を口に含んだ瞬間に、圧倒的な確信となって現れました。

当時小学生であった筆者の息子は、魚の生臭さに極めて神経質な味覚を持っていて、マグロであれ、アジであれ、その鮮度に関わらずおほとんどの生魚を食べることができませんでした。そんな彼がオリーブハマチの刺身を口にして

 

「パパ、これなら食べられる」

 

オリーブハマチ、本物だ、と確信した瞬間でした。

 

そして、その日買ってきたハマチのお刺身が残ってしまったので、冷蔵庫で保管することになりました。お刺身なんてふつうは翌日は臭いが出てしまってとても食べられる代物ではありません。ましてやハマチなんてすぐに臭みが出てしまうお魚。

翌日の朝になって、もったいないから付け焼きにでもして食べようかな、なんて冷蔵庫から取り出したそのハマチの身が、あろうことか、まだツヤツヤで切り口のエッジもしっかり立っているんです。

まさかと思って、生のまま食べてみたら、まったく臭みを感じないし、身質もしっかりした状態を保っています。

もう、驚きを通り越えて感動するほかありませんでした、オレウロペインの効果がこれ程までに魚体の状態に影響を与えるとは。

 

後で、香川大学の教授に聞いた話では、通常の養殖ハマチは体脂肪率が31%なのに対して、オリーブハマチは24%まで落ちるそうです。すなわちとっても健康でマッチョな体になったということなんです。

 

オリーブハマチの育て方は、ハマチの出荷前の2週間、餌に対して2%のオリーブの葉の粉末を混ぜて給餌します。

 

%e3%82%aa%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%96%e8%91%89%e7%b2%89%e6%9c%ab%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

 

ポリフェノール成分たっぷりのオリーブの葉は、とっても苦いものです。それが餌に混ざることによって、ハマチも苦みを感じるらしく、給餌した瞬間は若干食いつきが悪くなるそうですが、すぐに慣れて食欲が戻ります。

さらに、香川県では、オリーブハマチの品質を高く保つために、水揚げしたハマチをその場で活〆にして、さらにはエアコンプレッサーで脊髄を抜いてしまうという作業を加えます。

ただでさえオレウロペインの効果で鮮度保持が抜群のオリーブハマチ、そこに丁寧な出荷処理を加えることで、無敵のハマチとなったのです。

他の養殖ハマチはおろか、天然ハマチすらもはやオリーブハマチの敵ではなくなってしまいました。香川県のスーパーがオリーブハマチ一色に染まるのは当然の帰結です。

 

%e5%a3%b2%e3%82%8a%e5%a0%b4%e3%81%ae%e3%83%8f%e3%83%9e%e3%83%81%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

 

このオリーブハマチの大成功は、単にブランドハマチとしての美味しい食材を作りだしたということにとどまりません。オリーブポリフェノール「オレウロペイン」がこれ程までにハマチを健康にしたという、誰の目にも明らかな事実は、いかにオリーブが生物の健康に良い影響を与えるかを、なによりもわかりやすく説明してくれました。もちろん、人間にとってもオリーブが健康にいいだろうという結論に異論をはさむ余地はどこにもありませんよね。

 

%e3%83%8f%e3%83%9e%e3%83%81%e4%b8%bc%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

 

こちらはオリーブハマチ丼、あつあつゴハンにオリーブハマチ乗せたら、タマゴの黄身とお醤油、そしてオリーブオイルをかけて頂きます。オリーブオイルのシャープな辛みが、ハマチの味を引き締め、お醤油の香ばしい香りをグッと引き立てます。

 

%e3%82%ab%e3%83%9e%e7%84%bc%e3%81%8d%ef%bc%88%e6%9c%ac%e6%96%87%e7%94%a8%ef%bc%89

 

お刺身だけじゃありません、こちらはカマの塩焼き。お醤油で頂いても美味しいですが、今回はジェノベーゼペーストで。もともと脂が少なくてスッキリしていますが、焼いたときににじみ出てくる脂自体も、くどさや臭みがなく、透明感のあるとても食べやすい味となります。

あまりにスッキリしているので、味噌煮や、照り焼きにしたときは、逆に少し物足りなさを感じてしまうくらいです。

 

さて、このオリーブハマチを使ったお料理、プロの料理人たちが向かうとどんなお皿に化けていくのか?

 

次回は香川県を代表する日本料理と中華料理の二人のシェフ、そして東京広尾のイタリアンの大御所「リストランテ・アクアパッツァ」の日高シェフの3人が取り組んだ、素晴らしい作品をご紹介します。

Text : Olive Hills

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して食育通信onlineは一切の責任を負いません。

ページ上部へ