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  • 2014/7/18 05:00:26

映画『リヴァイアサン』の配給会社に突撃取材をしてみた

映画『リヴァイアサン』は漁船のあちこちに小型防水カメラを取り付けた撮影はいまだかつてない映像体験とともに、人類の営みについて深く問いかける映画としてロカルノ国際映画祭の国際映画批評家連盟賞をはじめ、各所で話題になっている映画です。2012年の公開以来、日本での上映を待ち望んでいたら、この8月23日からシアターイメージフォーラムをはじめ上映されることになったという情報を入手しました。

もはや日本での上映をほぼ諦めていたこのタイミングで、どうして日本で上映できるようになったのでしょう。そしてどんな人が映画『リヴァイアサン』の上映を実現してくれたのか、大いなる感謝とともに興味津々で配給会社である合同会社東風(TOFOO)に取材を申し入れ、お話しをうかがってきました。

取材に中心的に対応してくださったのが、下写真の渡辺祐一さん(左端)、右端の石川宗孝さん(右端)のお二人でした。

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映画『リヴァイアサン』を日本で上映してくれる人たち。中央に立っている代表の木下繁貴さんもご実家が漁師だという。やはり縁があるのでは……。

—— お二人はふだんどんな仕事をなさっているんですか?

渡辺

自分たちが見つけてきた映画をひろく見ていただくための仕事全般を行なっています。上映してくれる映画館をさがし、チラシやポスター、予告篇をつくったり、さまざまなことをしています。今回は海外の作品ということで、監督たちとのやりとりは石川が担当しました。

石川

ちょうど今『リヴァイアサン』の監督のひとりが、以前に手がけてた『Sweetgrass』という作品の上映用フィルムの通関手続きを行なっているところで、こういった手続きもわたしたちの仕事のひとつです。
(この取材中に税関通過の連絡も入っていました。やったー!)

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—— 映画『リヴァイアサン』という作品と出会ったきっかけを教えてください。

渡辺

「イメージフォーラムフェスティバル」という映画祭がありまして、2013年の上映作品に『リヴァイアサン』があがっていたんです。

—— え!?御社が手がける以前にすでに『リヴァイアサン』がすでに上映されていたんですか?

渡辺

はい。2013年のイメージフォーラムフェスティバルで、僕たちがお世話になっている想田和弘監督が審査員をつとめていて、その想田監督から「『リヴァイアサン』はおもしろいから観るといいよ」と連絡をいただんです。それで作品を観たのがきっかけです。

—— それは配給しようと考えてですか?

渡辺

いいえ、あくまで個人的な鑑賞が目的でした。……で、観終わって「この作品はもっと広く観てもらいたい」と思ったんです。

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—— なるほど、映画を配給するには、その映画がビジネス的に成功できるかどうかという要素も大切ですよね。ご覧になって、配給しようと思いたったときに「これは売れるぞ」みたいな勝算は感じられたんですか?

渡辺

この作品に限らず、たいていそこは順番が逆ですね。先に「この映画を観せたい」、その後で「どうやって観てもらおうか」という感じです。『リヴァイアサン』も封切りはこれからですから、フタを開けてみたらどうなるか……(笑)。まだわかりません。

—— 実務的な話しになりますが「この映画を観てもらいたい」と思ってから、どうやって監督と連絡をとって上映の段取りをつけるんですか?

渡辺

映画祭では配給営業用に製作者やセールス会社の連絡先が準備されているケースがほとんどで、紹介された連絡先にアプローチするのが通常の流れです。ただ今回の監督たちは大変連絡がつきにくかったです。

石川

この映画の監督はお二人でして、ひとりはアメリカを拠点に、もう一人はフランスを拠点に活動していて、それぞれ世界中を飛び回っているので、なかなか連絡がつきにくい状況でした。

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—— それでどうされたんですか?

渡辺

彼らは日本に度々来ていまして、そのタイミングを見計らって会う約束をしました。会ってみると日本での映画公開についての話し合いは、あっという間に終わりました。それこそ近所の喫茶店でさっと話して、さらさらっと簡単な書類を取り交わして……。

石川

いつもこういう風に進むわけではないのですが、今回に関しては忙しい方達だからか、決断の速度が早かったですね。

—— すごいですね。作品の上映素材の受け取りというのはフィルムなんですか?

渡辺

これは作品によりことなるのですが、『リヴァイアサン』はGoProという小型防水のアクションカメラでほとんどのシーンが撮影されていて、テープレス収録なんです。上映もデジタルでるからデータをハードディスクで受け取っています。一方でさっき通関を通ったという『Sweegrass』は35mmのフィルムです。

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『リヴァイアサン』が収録されたハードディスク。サーバーに入れて再生する。

—— これから上映に向けて、お二人からこの作品の魅力を教えてください。

石川

あたかも自分がニューベットフォード港から底引き網漁船にのっているかのような映像と音が繰り出す臨場感を存分に味わってもらいたいです。それからスーパーマーケットで売られている切り身の魚がどんなところからやってくるのか、その一番最初の<現場>の仕事をみて、そこから普段食べているものを考えてもらえたらいいのかなと思ってます。

—— はい。

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(c)Arrete Ton Cinema 2012

石川

ただあまりにも迫力がありすぎる映像と音響なので、観ながらそこまで思いが巡らせられるかわからないですけど(笑)。でも観終わった後できっと何かが残るので、あるときハッと『リヴァイアサン』の映像がよみがえってくれてもいいかなと。たとえば……。

—— たとえば

石川

居酒屋でエイヒレをあぶっているときに「あー、このエイヒレって、あんな風におろされてたなあ」なんて思い出してくれたりとか(笑)。やっぱり脳裏に焼き付く映像なので。

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(c)Arrete Ton Cinema 2012

—— 渡辺さんはいかがですか?

渡辺

漁って人類の歴史と同じだけ古くからある営みだと思うんですね。その技術にも人間の近代的で理性的な営みよりもずっと古い起源があるはずです。現代におけるその営みを作品を通して体験するわけですね。 僕たちの現代の生活にあるパッケージされた切り身の前の行程に<命をとって食べる>ということがあって、そのことと映像を通して向き合ったとき、人によって受け止め方が違うと思うんです。

—— なるほど。

渡辺

ある人はありがたみを感じるかもしれないし、ある人は畏れを感じるかもしれない。もしかしたら不快感を覚える人もいるかもしれない。ただ、現代は大量にとって、ダーッと流通させて、販売しているじゃないですか。それって、人類の歴史のなかでとらえると現代の食や物を食べる行為が、ずいぶん遠くまで来たなあと思うんです。

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(c)Arrete Ton Cinema 2012

—— 食がやってくる現場を見ることなんて、ほとんどないですもんね。

渡辺

食という生きることの基本をあらためて考えてみるということが、もしかしたら社会とか世間というよりは、世界そのものの見方がかわるようなきっかけを与えてくれる作品じゃないかなと思います。何より一番の魅力は、映像的にも音響的にも「誰も見たことがない」ということですね。

—— 「はじめての映像体験」ということですか?

渡辺

はい。とにかくものすごいインパクトです。「生まれてはじめて見るものを鑑賞する」ってそれだけで楽しいことじゃないかと思うんです。

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(c)Arrete Ton Cinema 2012

—— ええ。

渡辺

映画には、いままで見たことがないものを見るとか、他では見ることができないものを見るとか、そういう純粋な喜びがあると思うんです。そこを入口にして、さらに色々なことを考える機会になるんじゃないかなと思います。これまで上映されてきた食の映画で『いのちの食べかた』や『ある精肉店のはなし』をご覧になって関心を持たれた方々には、ぜひこの映画を観ていただいてご感想をいただけたら嬉しいです。

—— これからの上映が楽しみですね。

石川

8月23日の上映初日は来場者の方にちょっとした特典があるんですよ。これなんですけど先着100名様にレッドサーモンの缶詰をプレゼントします。

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—— オォーッ。

渡辺

ニューベットフォードじゃなくてアラスカ産なんですけどね(笑)。映画と一緒に海の仕事を思い出すきっかけづくりみたいな感じで。

 —— お話しをうかがわせていただきありがとうございました。


 

私自身も映画『リヴァイアサン』を事前鑑賞させていただきました。

映像と音の世界に放り込まれるような感覚でした。天地や左右や昼夜といった区別の壁が壊れるような感覚になります。これが特殊効果などを使わずに小型のアクションカメラで撮影されているのも驚きです。

それと同時にこれまで何度か漁船にのって取材したこともあった関係からか、その時に記憶が肌の上によみがえるようです。潮の香り、船の上で干上がった魚介類から立ち上る特有の臭いとともにディーゼルエンジンの排気ガスがまざってむせ返るような感じ。地鳴りのように響くエンジン音で耳が遠くなったようになる感覚など。あっという間の87分でした。

もしかしたら漁師のみなさんはこの映像をみると、特段の衝撃を受けるというより普段の生活の延長線だったり、あるいはノスタルジーみたいなものを感じるのかもしれません。なお映像のなかの漁業ですが、2船からなる船団で、網目が広めで水産資源を守ろうとするIQ(個別漁獲枠:Indivisual Quota)制度に基づいた漁業であることがわかります。日本のオリンピック方式という魚のつかみ取り競争的な漁業とは違う規制が見える点なども興味深いです。

底知れぬ人間の食欲と巨大なフードシステムこそが映画のタイトルの「リヴァイアサン」なのかおも知れません。

さてなお、映画『リヴァイアサン』を撮ったお二人の監督が7月22日から来日するとのことです。今回、合同会社東風のご好意でインタビューさせていただける運びとなりました。ということで、来週は監督へのインタビューをご紹介したいと思います。

作品情報:『リヴァイアサン』(原題:Leviathan)|監督:ルーシャン・キャスティーヌ=テイラー/ヴェレナ・パラヴェル|2012年|米・仏・英|87分|8月23日~シアター・イメージフォーラムにてロードショー、他全国順次公開|公式HP:http://leviathan-movie.com/|配給:合同会社東風 http://tongpoo-films.jp/


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Text : motokiyo

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