• 活動レポート
  • 2016/12/21 05:00:42

【閲覧注意・動画】狩猟解禁日に鹿狩りに同行。山中での運搬と解体

(注意)この記事には鹿を解体する画像・映像が含まれています。鹿の内臓・肉・血などが表示されますので、ご覧になりたくない方はトップページに行くなどな回避してください。

11月15日の神奈川県の狩猟解禁日、ハンターに同行させてもらい狩猟・解体を見学させていただいた記事です。同行させていただいたのは一般社団法人神奈川狩猟協会のみなさん。取材のコーディネーターとなってくださった田中 詩乃さんは普段はパタゴニアに勤務している方なのだそうです。

農林水産省によれば鳥獣による平成24年度の農作物被害は、金額にして230億円。前年度に比べ3億円増加しています。このうち主要な獣種別の被害金額については、シカが82億円、イノシシが62億円、サルが15億円です。一方、森林被害は、これまでは造林地における植栽木の食害が主でしたが、近年では成林したヒノキ等の樹皮の食害も目立つようになってきています。

山の保全のために生態系の管理は、里に暮らす人間にとっても大切です。とはいえ、ハンターの数は年々減少傾向にあるようです。環境省によれば昭和50年に約50万人いた狩猟免許所持者数は平成25年に18万5千人と半分以下まで減少しています。

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出典元 https://www.env.go.jp/nature/choju/docs/docs4/

料理の視点からするとジビエ(狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉)の注目が高まっているので、バンバン獲って流通させたらいいのにと思うわけですが、そういうわけにもいきません。というのも、野生鳥獣を解体、精肉、販売するには食品衛生法に基づき定められた施設を持って、食肉処理業と食肉販売業の許可が必要です。例えばハンターが保健所の認可を受けた施設以外で獲物をさばいて販売すると食品衛生法違反となり、「2年以下の懲役又は200万円以下の罰金」が課せられます。ちなみにハンターに許されるのは山の中での放血(血抜き処理)のみというのが実際なのです。

ではそういう施設を持てるのか、採算は合うのかなど、疑問がうかぶわけで、まずはハンターの仕事を見せていただくのが良いかと思い取材させていただくことにしました。同行させていただいたのは神奈川県猟友会のみなさん。11月15日が狩猟解禁日で、一番獲れるということでご一緒させていただきました。

丹沢国立公園は大山のふもと蓑毛(みのげ)バス停に朝5時30分。東名高速道路の秦野中井から丹沢方面に北側に向かって20分といったところでしょうか。車で5分も走ればコンビニもスーパーもある郊外の住宅街のバックカントリーといったところです。

前日までは雨模様。当日も朝まで雨が残っていました。今回参加するときの持ち物として雨具、しかもできるだけ目立つ色のもの。それからキャンプなどで使う小さな椅子。そしてトランシーバーでした。

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バス停に集まっているみなさんの様子を見て、暗い山中でわかるようにするのは大切なんだろうなと思いました(誤射されたらどうしようとか思っていました)。なおトランシーバーですが、鹿は人の話し声は聞こえるが、トランシーバーを経由した音は聞こえないらしいのです。そもそも山中にバラバラにハンターが配置するようなので山中でトランシーバーは必須のようなのです。私は持っていないのでお借りしました(ありがとうございました!)。

猟場はバス停からさらに5分ほど山中に入った場所。ここでの鹿猟は山側に犬を放って、鹿を追わせ、山裾におりて逃げてくる鹿を迎え撃つという方法だそうです。チームは数カ所の猟場に別れて山中で鹿が逃げてくるのをじっと待ちます。今回、一緒に猟場に連れていってくださったのは有泉さん。

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有泉さんはハンター歴3年。神奈川県南足柄市の有害捕獲隊員でゲットした獲物、通算10頭以上。解体経験100頭という方。山中は植樹のため階段状に整地されていて、舗装路から50mほど段にして4段ほど下で待機するので、道路側から山側にカメラを向けて待機してくださいと指示をいただきます。

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道路や登山道のような路上で銃は出してはいけないとのことで、道路上からチェーンをまたいで山中に入ってから有泉さんは散弾銃を準備。弾丸を装填します。非常に軽率な感想なんですが、映画で観たあの銃に弾丸を装填する音、そのものなんですね。心の中で「オォー」と感動します。

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ここからはひたすら待ちます。ここでキャンプ用の椅子が役に立つわけですね。そして遠くで犬が激しく吠えるのが聞こえはするものの、山の中は静かです。前日に降った雨の影響からか、ときおり視界がガスで覆われて見えにくくなったりします。山中でじっと待つときにはダニやヒルにおそわれないように注意が必要です。手首や足首のしっかり締まるウェアを着て、履物も登山靴のようなハイカットのしっかりしたものが必要ですね。

(動画:6分23秒ごろ)銃声が聞こえます。さらに2分くらい経った8分10秒ごろには二度銃声がします。私たちの目の前には鹿は現れませんでした。トランシーバーで誰が撃ったとか、どうなっているといったやりとりが行われているようです。有泉さんも猟場から戻ってきて、鹿が獲れた場所に向かいます。

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(動画:12分38秒)登山道すらない山中を80kgにもなる鹿を担いで運搬するのは一苦労。整備されていない場所なので沢を渡るのも、鹿を引きずらざるを得ません。これが何度もあると体力的にも大変そうです。バンバン獲れば、それだけ運搬の負担もかかるというのがハンターの現実のようです。

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(動画:16分54秒)各猟場に散っていた神奈川狩猟協会のメンバーが再集合。今回獲れた鹿二頭と記念撮影。これから沢近くの解体場に鹿を運んで解体です。わっせわっせと鹿を運んでいきます。

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(動画:16分54秒)解体するのはご覧の通り、沢の川原にベニアの台を作ったところ。いわゆる専用の設備がない山中でワイルドに解体します。まずは山中を引きずってきたこともあるので、沢でくんできた水でまずは鹿をしっかり洗います。元来、鹿は水浴びをしないので毛皮の中にダニなどが棲んでいたり、また泥もすごく出ます。解体中にも数匹のマダニが足元から這い上がってきていました。

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(動画:19分24秒)プロセスとしては、仰向けにして開腹し、胸骨を切って、食道から肛門までを開いて内臓を取り出します。まだ暖かいので湯気も立ち上がります。そして胃袋がパンパンに腫れていて、この胃袋に誤って穴を開けると壮絶な匂いで仕事ができなくなってしまうのだそうです。最初の回復の手を入れる作業は慎重に行われます。

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(動画:20分50秒)取り出した内臓の全体から肝臓や心臓などを切り分けていきます。

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被弾してしまっていますが心臓も縦に半分に切って右心房右心室・左心房左心室に開いておきます。この後、どんどん解体は進んでいきます。

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(動画:34分30秒)鹿肉の中でもっとも人気の内ロースに取り掛かります。別名テンダーロイン、あるいはヒレ肉と呼ばれている部分ですね。肉を傷つけずに常にさばいていくのはそれなりの経験値が必要だなと感じさせられます。

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(動画:37分22秒)さらに解体は進みます。外すのが一苦労なのが後ろ足。骨盤から出ている腱や骨など鹿の構造をしっかり理解していないとうまくいかないようです。この日はハンター歴の浅い方もいらしてレクチャーを受けながら解体していましたがなかなか大変そうでした。

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(動画:39分27秒)解体がかなり進んだところで、背骨についている肋骨に切り込み入れて、体重をかけて肋骨を開きます。これは何をするのかといえば・・・

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(動画:40分18秒)背ロースを切り出していくのです。内ロースと同じように人気部位です。

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こうして、だいたい1頭の解体に約1時間くらいかかるようです。今回はレクチャーしながらだったので、もう少しかかっていました。解体中にうかがった話しの中で、1日に3頭も撃ってしまうと解体する負担が大きく、終わった頃にはヘトヘトになってしまうのだそうです(うっかり三頭目を仕留めてしまうと「あーあ。やってしまった」みたいな気持ちになるとか)。

ちなみにこうやって解体した肉はもちろん自家消費用。人間が食べない部位などは犬のご飯やおやつにもなるようです。毛皮や内臓や骨などは穴を掘って埋めていました。

こうやって見ると、一言に「ジビエ」といってオーダーし、一口で食べてしまう鹿肉ですが、山に入って、ヒルやマダニの襲撃に耐えながら待って、撃って、山中を運んで、解体して、片付けしてとそのプロセスはかなり大変な仕事です。山の中に鹿がたくさんいるなら、たくさん獲ればいいというわけにはいかないことが良くわかりましたし、にわかに若いハンターが増えても鹿の解体が手際よくできるようになるにはそれなりの経験値が必要です。

先の法律を考えると販売もできないわけですし、食肉処理施設を作って売っても運営費も含めて採算にあうようにするにはビジネスとしてかなりの準備が必要になりそうです。そもそも狩猟に興味があってハンターになっているなら、食肉処理したジビエ販売の仕事とはモチベーションの違いもあるはずです。ビジネスに発展させる人も出るかもしれませんが、それが主流になるには時間がかかりそうです。

森を守るハンターの仕事が、他の食の仕事とどう循環を作っていけるか、まずは食べる私たちがもっと山の仕事について関心を持つことが必要ですし、ジビエを扱うレストランはもっとハンターの仕事を伝えるチャンスをつくったほうが良いのではないかと考えさせられました。

動画はこちらです。55分の長尺です。ところどろこ4倍速になっていますが、あえてあちこちをカットせず、テロップなども入れずに編集しました。

Text : motokiyo

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