• レビュー活動レポート
  • 2016/8/27 05:00:59

「オリーブオイルの魅力とその使い方」(番外編 ②)「イタリア・バジリカータ出張」

マテーラ景観(本文用)

 

 

アブルッツオ州を後にして、アドリア海岸沿いを高速道路でひたすら南下すると、イタリア南部の一大農業地帯のプーリア州に入ります。プーリアはオリーブオイルでもとても有名な産地ですが、イタリアの高速道路アウトストラーダに乗って、車のハンドルを進めると、窓から見える景色は、オリーブ畑のほかにもブドウ畑や小麦畑。まるで、中世に描かれた絵画をそのまま見ているような景色が、いつまでも続きます。

 

目的地のバジリカータに着く前に、ガイドブックには乗っていない小さな村を訪ねながらの、のんびりした旅。

 

サヴェッレトリ海岸(本文用)

 

ちょいと寄り道してみたのが、サヴェッレトリというとっても小さな港町。小さなお魚のマーケットがあって、その横にはペッシェリアなるシーフードレスランが併設されている。もう営業時間の12時だというのに、オープンする気配がないんで、お店の人と思しきお兄さんに尋ねると、今日は定休日だ、何が食べたいんだ?との返事。おいしい魚料理を食べに来たんだと告げると、

「ついて来い」

といって連れてこられてきたお店で頂いたのが、この魚介のリゾット。

 

魚介リゾット(本文用)

 

お魚やイカやムール貝のダシがしっかり効いた味は、日本で頂くものよりも力強い深みを持っている。その決め手はオリーブオイル。

おダシをオリーブオイルでしっかり乳化させることで、ふくらみのある味に仕上げるんです。

 

車窓から(本文用)

 

しっかりお腹に満足してもらったら、バジリカータに向けてまたハンドルを進めます。

オリーブ生産者の私たちが興味を持つのは、やっぱりオリーブ畑。

イタリアのオリーブで一番のブランドを持っているのはトスカーナ。イタリア中のオリーブ畑の景色は大体トスカーナの景色とそっくり、木の仕立て方がおんなじなんですね。

 

トスカーナオリーブ(本文用)

 

こちらの写真はトスカーナのオリーブの木

それと比べると、ここプーリアの仕立て方はまるで違って、どちらかというと、スペインのオリーブ畑を見ているみたい。

 

プーリアオリーブ(本文用)

 

オリーブの木はとても長生きな木で、200年でも300年でも生き延びるんです。スペインではそのような古いオリーブを植え続けている場所も多く見受けます。

ここプーリアに植えられているオリーブの木は、樹齢がゆうに100〜200年は超えているだろうなという、立派な古木たち。

その景色は、スケールこそ小さくなりますが、世界最大のオリーブ産地であるスペインのハエン県で見た景色とよく似ています。

土質もテラロッサといわれる赤土、良く耕すことによってふかふかにしているので、オリーブの根ものびのびと広がり、結果として大きく枝葉を茂らせています

 

プーリアを豊穣の大地とは良くいったもので、オリーブ畑と小麦畑の織りなす黄金と緑のその景観は、古代から豊かな人の営みを育んできたことを実感させてくれます。

そのプーリアから内陸に車を進めると、世界遺産マテーラの街まではあとわずか。

 

第二次世界大戦が終わってつい直後まで、まだ多くの住民が原始的な洞窟住居に暮らして、イタリアで最も貧しい街として知られていたマテーラ。でも今ではその洞窟住居が立派な観光資源となり、多くの外国人旅行者を集めている。

 

さて、マテーラに着くと、2年前にカンポバッソのオリーブ商談会で出会ったオリーブ生産農家のジョヴァンニ・マルブーリが、彼のお姉さんと一緒に私たちを出迎えてくれていました。

 

ジョヴァンニ(本文用)

 

イタリアではよくあることだけど、必ずしも英語が達者でない彼らオリーブ生産者が、英語の堪能な親せきや友達を一緒に連れてくることが多いんです。警察官である彼のお姉さんの英語も、決して流暢ではなかったけど、当のジョヴァンニはほとんどしゃべれないレベルなんで、ありがたい存在です。

 

早速彼の畑を見に行こうと、ジョヴァンニの運転する車に乗り合わせてはオリーブ談義に。このオリーブ畑は、ジョヴァンニのお父さんが、3人の子供に財産を残そうという思いで買い取ったものらしい。私たちが目を付けたジョヴァンニの高品質なオリーブオイルは、その徹底したこだわりによる賜物なんですが、お父さんの時代にはそうではなかったようです。皆さんにもお伝えしている通り、高品質なオリーブオイルは、その高いポリフェノール成分のおかげで、ピリッとした辛みや苦みを持っているものです。お父さんの時代の搾り方ではそのようなこだわりがなかったため、ジョヴァンニの代に代わって直後は、かつてのオリーブオイルのお客さんからは、「こんな辛くて苦いオイルは欠陥品だ」と酷評されたそうです。そうなんです、オリーブオイルの本場イタリアでも、本当に高品質なオリーブオイルを理解している人はまだまだごく少数なんです。

 

マルブーリオリーブの木(本文用)

 

オリーブ畑の景観は地域や農家によって千差万別、プーリアやスペインのように12メートル間隔で整然と植栽されたものもあれば、山肌に張り付いた野生みたいなものまで。ジョヴァンニの畑はどちらかといえば、なだらかな丘に小麦畑と同居して雑然と植えられているようです

「ジョヴァンニの畑には何本のオリーブを植えているんだ?」

と聞くと

「1本も植えていない」

という答え

「・・・?」

そう、自分では一本も植えていない、昔からある野生の木だということらしい。

 

スペルコ小麦(本文用)

 

一緒に生えている小麦は古代小麦である「スペルト小麦」ちなみに、イタリアでは「ファッロ」と呼んでいます。

 

ところでジョヴァンニの畑にはフラントイオ(工場)がない、一体どこで搾っているのかと聞くと、80キロ離れた隣町のフラントイオまで毎日トレーラーで2~3往復して運んでいるんだそうです。収穫してから搾油までの時間をいかに短くするかが勝負のオリーブオイル、その鮮度維持のために、休むことなく毎日運んでいる、こんな努力が良いオイルを搾るためのこだわりなんですね。

 

マルブーリオイル(本文用)

 

こちらが、ジョヴァンニの搾るオリーブオイル、品種は強い辛みで有名な「コラィーナ」と豊かな青い香りの「オイアローラ」の二つ。もともと辛みが強いコラティーナですが、ジョヴァンニの搾ったオイルはまた一段と強い辛みを持っています。いいオイルであることは間違いはないのですが、日本の食生活に合わせていくとなると、少し使い方を工夫していく必要がありそうですね。

 

夕食はマテーラの郷土料理を頂けるという、ジョヴァンニのご贔屓のレストランに行きます。ここでは、マテーラパンという直径50センチもあろうかというパンが有名。

 

マテーラパン(本文用)

 

きっと硬くてあんまり美味しくないんじゃないかな、なんて一瞬でも思ってしまったことに、食べた瞬間に大反省、しっかりした小麦の香りとさわやかな甘さがジワっと伝わります。もちろんジョヴァンニのオリーブオイルをたっぷりかけて。そう、この手のパスっとしたハード系のパンには、辛みと苦みのしっかり効いた強いオイルがよく合うんです。きっと辛みや苦みが唾液の分泌をよくして、小麦のでんぷん質をブドウ糖の甘さに変える働きを助けるからなんでしょうね。

 

猪のラグー(本文用)

 

こちらはイノシシのラグーのパスタ。小麦の香ばしい香りとイノシシの強い味とがいいコンビを奏でています。ここでもオリーブオイル。イノシシや豚肉の脂やにおいにぶつけるのに、キリっとしたオリーブオイルの辛みは、お刺身に使うワサビと同じような効果を発揮してくれます。

 

マテーラ夜景(本文用)

 

こちらはマテーラの夜景。観光客も寝静まった夜はとてもひっそりした街になって、石造りのその街並みはまるで古代ローマ時代。

 

さて、次回はイオニア海を北上してラツィオへと向かいます。

Text : Olive Hills

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