• キッチン
  • 2017/5/3 06:30:15

みかんとぶどう山椒のジャム開発〈ジャム研〉

ぶどう山椒をかじると柑橘に通じる爽やかなフレーバーを感じるのはそもそもみかんと山椒はいずれもミカン科の栽培品目だから。調べてみると、みかんは日向を好む一方で、山椒は日陰を好む。そして旬でいえばみかんは冬が、山椒は春から夏です。こんな風に同じミカン科でも光と陰のような好対照の二つをジャムにできないか試行錯誤してみた(・・・が結果、うまく行かずに課題が残ったという)話しです。

食の仕事人第44回 山椒は緑の宝石」で和歌山県海南市の老舗、山本勝之助商店を訪れ、土田高史さんと販売を担う乾物店「うおくに商店」の見澤良隆さんのお話しをうかがい、畑を見学させていただいたときに、ぶどう山椒の収穫時期は7月から8月までの黒い種の入った大振りの張りのあるシーズンと、まだ種の育ってない小粒で柔らかな時期と二段階があるのだと教わりました。

パウダー状で流通しているのは7月8月のものを種を取り除いてから石臼で引いたものです。5月の山椒は急速冷凍したものが生山椒として販売されているようです。
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食べてみると生山椒の方がより柑橘類を感じさせるフレーバーがします。この生山椒と、日向のみかんを合わせたジャムが作れないものか・・・。

ということで準備したのは冷凍みかん。
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皮をむいてじょうのう膜の状態にしておきます。
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ペクチナーゼを使ってじょうのう膜を溶かして、みかんのフォルムを活かした状態でジャムになればと思い立ちました。
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みかんをひたひたの水に浸したらペクチナーゼを投入します。
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ペクチナーゼの量や水温などにもよりますが、今回は3〜4時間程度でじょうのう膜が溶けます。写真のモヤモヤしているのは溶けたじょうのう膜ですね。
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ボウルから取り出して残りのじょうのう膜を取り除きます。
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じょうのう膜を取り除くと全体のペクチン量が少ないので、みかんの皮を水でさらしておいて、さらに煮ることでペクチンを抽出します。この作業はペクチンが熱によって分解する20分未満で完了しなければなりません。
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ちなみにペクチンの抽出量は、煮出した液体にアルコールを加えると比較的簡単に確かめられます。試験管の左側は皮から煮出した液ですが、液体上部に浮いている層がペクチンです。一方、試験管の左側はみかんの果汁ですがアルコールを加えてもペクチンが分離される様子がありませんでした。つまり果汁だけではジャムにはならないので、皮の煮出し液を加えてジャムにする必要があります。
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みかんに砂糖を加えます。通常は1/3ずつ段階的に砂糖を加えますが、みかんの形状を残すため一度に砂糖を加えます。こうすることでみかんが固く締まった状態になるからです。
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しっかりとよく混ぜてしばらく置きます。
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ぶどう山椒も同様に砂糖を加えておきます。
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みかんから水が染み出してきたら鍋に移して加熱します。
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糖度70%になったらぶどう山椒を投入。
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合わせたものを手早く混ぜながら加熱します。しかしこの時点からみかんのさじょう膜が潰れて果汁が流出しはじめ、みかんの形体が崩れるようになり、また果汁が流出することで糖度がぐんぐん下がって行きます。
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糖度が62%まで下がったところで、コップテスト。水にジャムを数滴落とした時にゲル状になっていれば大丈夫という指標です。写真の通りギリギリ大丈夫という程度でしたので火からおろします。しかし火から外してもさじょう膜の崩壊は止まりそうにないので、瓶などに移して保存するような可能性は限りなく低いことが判明しました。
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ということでできあがったみかんとぶどう山椒のジャム。驚いたのはぶどう山椒が加熱などで緑色が失われていないことです。
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食べてみるとぶどう山椒の痺れるようなスパイシーな味と香りは失われずに美味しいのですが、みかんについては甘さが圧倒的にまさってしまい、大変くどい状態になりました。これは美味しいとは言い難い、腹立たしさがこみ上げる味わいです。
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しばしこのジャムのリカバリーについてミーティングです。まず敗因の一つはみかんの形状を残そうと考えたことでした。煮るほどに果汁が出てしまいみかんの形状を保つことが困難だったことに加えて、狙った糖度で仕上げられず例えば瓶詰めにすることは不可能と判断せざるを得ません。

またこのべったりと甘いばかりで果実らしさを感じられない風味は、酸味の不足によるものと想定されたので、できあがったジャムにクエン酸を足してみると味が引き締まって輪郭が生まれて随分とレベルが上がりました。つまりみかんだけの酸味では無理だろうということもわかってきました。

次回はこのエラー箇所を補正したバージョンの開発に乗り出します。乞うご期待。

Text : motokiyo

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