• キッチン
  • 2017/3/29 05:00:14

圧力鍋でたまねぎを甘く飴色にするモダニスト・キュイジーヌを検証する

たまねぎを甘く飴色にする方法をフライパンで長々と炒めるのではなく、もっと手軽にできないか試行錯誤しています。(前々回)電子レンジにかける方法(前回)油をかけた後に電子レンジにかける方法に続いて、圧力鍋を使う方法を検証します。

実はこの方法はネイサン・ミアボルド氏の著書『モダニスト・キュイジーヌ at Home』に掲載されています。以下は過去の記事から引用。

著者はネイサン・ミアボルド(Nathan Myhrvold)という人です。プロフィールを調べてみると1959年にカリフォルニア州で生まれて、14歳で高校修了してUCLAに進学、19歳で数学と地球生物学と宇宙物理学の博士号を取得、23歳でさらに2つの博士号をとって、イギリスのケンブリッジ大学のスティーブ・ホーキンス博士の研究助手に。ホーキンス博士のゴーストライターとして活躍したという話しも。その後にMicrosoft社でコンピュータ科学の専門研究所「Microsoft Reserch」を立ち上げた人物。Microsoftを退社して特許関連の事業をしているそうです。

そんなネイサン・ミアボルドが手がけた料理本が『modanist cuisine』。
7800円のiPhone/iPad料理本『modanist cuisine at home』のコスパって?

まあ、なんだか凄そうな経歴でたまねぎも科学の力で見事に飴色にしてくれそうですが、どうなんでしょうか。参考にするのは『modanist cuisine at home』のアプリ、Chapter5に掲載されている「PRESSURE-CARAMELIZED ONIONS」のレシピです。用意したのはちょっとくたびれたたまねぎ3個。

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スライスしたら正味500g程度になりました。なおミアボルドのアプリではここで重曹(炭酸水素ナトリウム:NaHCO3)を4g加えて混ぜています。重曹を加える理由は以下。

メイラード反応はphがアルカリのときに促進することが分かっています。したがって例えば炒めるタマネギに重曹を加えるとすばやく飴色に仕上げられます。
<たまねぎを甘く飴色にする方法を見なおしてみる。まずは電子レンジ調理から>

ただし重曹(炭酸水素ナトリウム:NaHCO3)を加えてケミカルにメイラード反応を起こしたところで、それだけでは大して美味しくはならないと思っているので今回はあえて割愛(詳しくは事例研究「宮崎県都城の郷土料理「あくまき」をWikipediaを調べながら食べてみた」をお読みください)。

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これらを口広瓶の中に入れます。ミアボルドのアプリには少し隙間を作りながら500gの瓶3本に詰めろと書いてあります。瓶が2本しかないのでしょうがありません(こういうので正しい実験とは言い難い気もしますが・・・)。ぎゅうぎゅうに押し込んじゃいます。

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ネイサン・ミアボルドのレシピには、ここでバターを35g使って、瓶の上に乗せています。今回は左側の瓶に15gのバターを乗せ、右側には同じ量のオリーブオイルとしてみました。瓶のフタは一旦、ギュッと閉めてから1/4回転戻して少しだけ開封した状態にします。こうすることで瓶内も加圧された状態となり、また瓶が割れることがないと思われます。

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圧力鍋に2.5cmの深さまで水を入れ、蒸し用の器を敷いて、さらにふきんを敷いた上にボトルをのせます。2本でちょうど良かったです。

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そして火にかけます。レシピには沸騰してから40分とあります。正直、フライパンで炒めてもそう変わらない時間という気もしましたが、手を離していられるので楽です。ティファールの圧力鍋は65kPaなので、これによる圧力と熱で細胞壁が壊れてくれたら糖を含んだ細胞液があふれ出し、あとは瓶内が110℃を超えてくれるとたまねぎの糖がカラメル反応によって飴色になるという算段です。

ただし気になるのは、『modanist cuisine at home』の圧力鍋は150psi(重量ポンド毎平方インチ)。kPaに直すと約103kPaと私の使用している圧力鍋とはかなり開きがあります。あくまでも概算ですが65kPaの沸点は約110℃でカラメル反応の発生するギリギリ低い温度。一方、『modanist cuisine at home』使用の圧力鍋の約100kPaの場合は約120℃です。

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期待に胸をふくらませて待つこと40分。時間になったら鍋の底と側面を流水で強制的に冷やします。というのも、加熱している間は加圧されることによって内部の対流が抑えられている状態なのです。そこで突然、減圧すると一気に対流が発生して瓶の中身があふれ出る恐れがあるのです。したがって鍋と鍋の中にある瓶の温度が下がるまでしばし冷まします。

待ちかねて出てきたのはこちら。ぜんぜん飴色には程遠いクリーム色のたまねぎ。

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加熱前から比べればしっかり色はかわってきていますが、ミアボルド氏のアプリに掲載されている「がっちりキャラメリゼしてありますよ」的な色とはぜんぜん違いました。加圧されているとはいえ、カラメル反応がしっかり起こるほどの温度ではないということですね。

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左がバター。右がオリーブオイルですが、見た目に大きな違いはありません。若干、オリーブオイルの方が色づきが良いような感じがします。食べてみると・・・まあまあな甘さですが、前回の電子レンジ+オリーブオイルの方が甘さと香りともに優っています。40分もかけて瓶で作ったので、うまくいけばたっぷり作り置きしたいと思っていましたが、これは残念。

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圧力鍋のスペックの違いもあるし、重曹を使わなかったということも考えられます。とはいえ、主に圧力の差によるものが大きいかもしれません。全体の作業時間や、このマシンのスペックのことなどを考慮するとフライパンで炒めることと比較してとりわけ優れているとは言いにくいのではないか。あるいは私が『modanist cuisine at home』があえてこの方法を掲載している意図やメリットをしっかり理解できていないのかもしれません。

かといってこのたまねぎに使いどころがないわけではありません。鍋に入れて続きを炒めればさっとカラメル反応が起きて飴色になります。そのままスープにすることにします。ちょうど公園では桜が咲きはじめた時期。ビーツの色で染めた「サクラパスタ」(http://www.tamayaseimen.co.jp/products/detail.php?code=00898)があったのでスープに投入します。

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やさしくとろりと甘いオニオンスープが、すこし挫けた気持ちと年度末の疲れを癒してくれます。

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こうやって、いろいろは方法をやってみると今のところは「電子レンジ+油」の加熱方法が、調理時間も短く、狙った色と味に近づけるように思います。次回は電子レンジで作る甘くて飴色のたまねぎをさらに深掘りしてみたいと思います。

Text : motokiyo

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