• キッチン
  • 2017/1/11 05:00:22

たまねぎを甘く飴色にする方法を見なおしてみる。まずは電子レンジ調理から

タマネギを甘く飴色にするテクニックについては、じっくり時間をかけて炒める方法が一般的です。しかし時間がかかることと、うっかり目を離すと焦げてしまうリスクがつきまとうのが悩ましい課題。ゆえに手早くする方法がすでに色々なところで研究されています。ざっと見るとそれらの方法はいくつもあるようです。タマネギの成分や構造を確認しながら、今回は電子レンジの加熱法をやってみます。

Fresh bulbs of onion on a white background

まず「甘く<なる>」というのは、(新タマネギではない限り)生でかじるときには甘さを感じられないタマネギが、炒めるプロセスを経ると甘く感じられるということです。では加熱前のタマネギの甘さが本当にないのかEatSmartを使って栄養成分を調べてみると、以下の通りです。甘さに直接かかわるブドウ糖と果糖は合算で5.3gです。

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タマネギ可食部100g中 https://www.eatsmart.jp/do/caloriecheck/detail/param/foodCode/0000000006153/rowNum/1

たとえば白菜の1.9/100g程度、にんじんの3.1/100gと比較すると、タマネギの甘みを感じる成分は豊富なほうだといえそうです。品種などによって数値の差はあると思いますが、基本的な傾向はこんなところです。データとしては「甘い部類」なんですね。

とすると、生でかじった時に甘く感じられないのは、二つの理由が推察されます。ひとつに甘みの成分のブドウ糖と果糖がたまねぎの細胞壁に閉じ込められているということ。ふたつに強烈な別の味や香りが甘いと感じることを妨げていることです。

さて小学校のときに光学顕微鏡を使ってたまねぎの鱗片を薄く切り取ってプレパラートに挟んで観察した経験がある人は、以下のような光景をご覧になったこともあるのでは? これはタマネギの細胞の光学顕微鏡写真です。ご覧の通り半透膜の壁でできた細胞の内側に糖分もふくめ、いろいろな成分が閉じ込められています。ゆえに甘く感じないわけです。

High resolution light photomicrograph of Onion epidermus cells seen through a microscope

High resolution light photomicrograph of Onion epidermus cells seen through a microscope(酢酸で赤く着色しています/タマネギの細胞のサイズは約0.3~0.5mm)

これは極端な例えかもしれませんが、みかんの粒々を噛まずに口の中で転がしてもあまり甘くないのと同じようなイメージです(補足ですがみかんの小さなつぶつぶは油胞といって細胞ではありません)。

もしもこの物理的な制約が理由なら、細胞の中からいかにして効率的に液を出すかが、プロセスとして重要です。実際のところ、タマネギを刻んだり炒めるといったプロセスでタマネギがやわらかくジューシーになっている現象は、加熱によって液が流出していることを表しています。となると、この結果を導くアプローチは色々ありそうです。例えば塩や砂糖などをまぶして浸透圧を使って染み出させることもできるでしょうし、ミキサーを使ったり、圧力鍋を使う方法も、タマネギを−1〜−5℃の温度帯を時間をかけて凍結する緩慢凍結させ、大きく育った氷の結晶で細胞壁を壊して人為的にドリップを引き出す方法もありそうです。またこれらの複合技も「あり」です。

ちなみにもっとも身近な方法のひとつ「よく噛む」があるのをお忘れなく。

しかしお気付きの通り、これで甘いタマネギにありつけるということにはなりません。細胞の中に閉じ込められているのは甘い成分ばかりではありません。タマネギの化学防御物質であるメルカプタン、ジスルフィド、トリスルフィドといった硫黄化合物は、細胞が壊れると反応して生まれる刺激性の強い香りと辛味の成分です。『マギーのキッチンサイエンス』でハロルド・マギー氏は「これらすべての辛さの活性成分は化学防御物質で、動物を遠ざけるためのものである」と記しています。

マギー氏によれば、タマネギの酵素は加熱によって失活して辛味が弱まるとのことですが、同時にこの硫黄化合物は加熱方法によって反応がことなり、電子レンジやオーブン調理ではツンとしたゴムの焼けたような香りが出やすいとしています。

とりあえず、その場にあったタマネギをスライスして700Wの電子レンジにかけて確かめてみましょう。

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5分おきに状態を確認していくことにします。5分程度(写真下)では大きな変化はみられません。レンジのドアを開けるとまだ切りたてのタマネギにある香りがします。

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10分すると全体にしんなりしてきます。この時点でタマネギ特有のツンとくるゴムっぽい香りがしてきます。

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15分すると画面右端あたりのタマネギが色づいてきているのがわかると思います。香りは相変わらずで、換気扇を「強」にする強さです。閉め切った電子レンジの庫内に香りがこもっているのも影響しているとは思います。

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そして20分です。電子レンジのドアを開けると湯気があふれます。そして残念ながら鼻が強烈な香りにさらされ慣れてしまって、しばし判別ができなくなってしまいました。タマネギはほぼすべて透明がかって、一部は焦げ始めています。

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20分にもわたってタマネギを電子レンジでほったらかしにできるというのは便利です。あとは仕上げでゆとりを持ってタマネギを炒めることができますが、焦げやすいことにかわりはありません。

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さて、2011年のSerious Eatsの記事「The Food Lab: A Better Way to Caramelize Onions (Plus, French Onion Dip!)」ではフライパンでタマネギを炒めるときに発生する焦げに少量の水を加え溶かしながらさらに炒めると効率よく香りよく飴色になると紹介しています。

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これはこの焦げた部分に飴色になったタマネギの美味しい香り成分が豊富に含まれているからです。水を足しながらちょっとずつ鍋底の焦げを育てていきます。

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写真上くらいまで焦げても少量の水を加えて混ぜていけば、案外簡単にはがれますし色と香りが均一の広がっていきます。この時点で結構甘くなっています。

この焦げと香りは、二つの現象が同時に発生している可能性があります。それはカラメル反応とメイラード反応です。このふたつは似ているようで実はことなる現象です。

英語では飴色のタマネギをCaramelize(キャラメリゼ:カラメル化)と呼んでいるケースが多く見受けられますが、カラメル化というのは「糖」が110〜185℃以上になったときに水分が失われて分解し、苦味のある物質が発生して茶色く変色することです。詳しくは「電子レンジでつくるカラメルソース〜21世紀料理教室その6」をご覧いただけたらと思います。なおタマネギに含まれる果糖は110℃で、ブドウ糖は160℃でカラメル化がおこります。

一方でメイラード反応というのは「糖とアミノ酸」が結合して発生する現象で、茶色いメラノイジンという物質が生まれたり特有の香り物質が生まれる現象です。肉の焦げているところや、パンのカリカリの焼けた場所、焼きそば、焼きおにぎりなどはメイラード反応の美味しさです。温度としては155℃がもっとも活性するとされていますが、一方でメイラード反応はphがアルカリのときに促進することが分かっています。したがって例えば炒めるタマネギに重曹を加えるとすばやく飴色に仕上げられます。だからと言って重曹のアルカリを活用したメイラード反応で美味しいものが作れるだろうと思うと、簡単にはいきません。事例研究「宮崎県都城の郷土料理「あくまき」をWikipediaを調べながら食べてみた」を読むと、見た目は程よく焦げているような感じで美味しそうではあるのですがそれだけでは大して美味しくはない場合があるというのがわかります。

以上のようにざっとタマネギを飴色に甘く仕上げるプロセスに関わる現象を並べてみました。次回はそれぞれのテクニックの組み合わせを考えてみたいと思います。どれかひとつが至高なのではなく、背景にある要因を理解し、到達したい目的にあわせてプロセスを上手に選択して組み合わせられるようになりたいですね。

Text : motokiyo

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