• キッチン
  • 2017/1/9 05:00:04

最新調理テクニック紹介『トランスグルタミナーゼを使った成形ローストビーフ』

久しぶりに最新調理テクニックのご紹介です。家庭ではまったく役に立ちませんが、2017年はもう少し積極的に最新調理テクニックをご紹介したいと思います。

今回登場するのはトランスグルタミナーゼを使ったテクニック。トランスグルタミナーゼはタンパク質架橋化酵素という肉や魚の身のタンパク質同士をくっつける接着剤です。味の素社が放線菌から取り出すことに成功し「アクティバ」という商品名で業務用として売られています。ちなみにトランスグルタミナーゼは自然界にも多く存在し、特に動物の皮膚に多い酵素です。安全なのでご安心を。

一般的にはかまぼこなどの水産加工の分野での活用が期待されています。このトランスグルタミナーゼを使用することで減塩も可能になります。

上記の動画はハーバード大学でおこなわれた化学と料理シリーズの一つ。分子料理で知られるワイリー・ デュフレーヌシェフの説明では肉の結着以外にも大麦にゼラチンを混ぜトランスグルタミナーゼで結着するアイディアや、大豆でベジタリアン向けのヌードルを作ったり、ラディッシュとゼラチン(ゼラチンはタンパク質)でシートを作ったり、というアイディアが紹介されています。

三つ星レストランでは例えばFatDuckでは鳩肉の料理に使われています。鳩の肉は大変、薄くボリュームがありませんが、二枚重ねると厚みが出て、火の入り具合も・・・・・・というようなメリットが。

安価な料理でも例えばホタテにベーコンを巻く時に使うと、ぴったりとくっついて剥がれないので味もよくなります。鶏肉のミンチでヌードルをつくる、というアイディアもよく見かけますね。

今回は一般的な使い方である肉の結着の方法について。

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このトランスグルタミナーゼ。Transglutaminase やACTIVA、Meat Glueなどの商品名称で市販されています。TI FormulaとRM Formulaで厳密にいえば成分と使い方に違いがありますが、基本的に接着用途のみであればMeat Glue(RM Formula)を購入すれば大丈夫です。

日本では小売りされてませんが、Amazon.comから個人輸入できます。購入する時の注意点としてはこの添加物。開封後は力が弱まっていきます。したがって少量ずつ買うのがベターで、保存は冷凍庫で。

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今日はアメリカ産肩ロースブロック肉を使います。西友で買ってきました。この肩ロースという部位は難しい部分です。

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というのも通常に焼くとこの筋が硬くておいしくないから。煮れば問題ないのですが、赤み部分はおいしいのでもったいない。よくステーキを焼くときには筋切りをしますが、切ったところで硬い物は変わらないので無意味です。

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そこで登場するのがトランスグルタミナーゼです。

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では、どうするか。答えは簡単、物理的に筋を取りのぞいてしまえばいいのです。まずは手で引っ張って肉を剥がしていきます。

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その後、よく切れる包丁で筋とシルバースキンを切り取っていきます。この時、まな板などは殺菌し、肉の外側についた細菌が内側に入りこまないように配慮します。(手袋もしたほうがベターです)

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筋をとったので、肉はバラバラです。これではローストビーフになりませんので、トランスグルタミナーゼを茶こしでふりかけていきます。この時、粉を吸い込まないように注意してください。

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ラップでぐるぐる巻きにして肉を圧着させます。

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可能であれば真空包装機にかけて空気を抜き、肉同士をさらに圧着させます。冷蔵庫で12時間、寝かせると、そのあいだに酵素が働き、肉同士がくっつく、というわけ。

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肉がしっかりくっつきました。

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とりだして表面を焼きます。

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再び真空包装袋に戻すか、ジップロックにいれて58度で8時間加熱します。

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時間になったら袋からとりだして、ここで塩、胡椒を振り、バターで表面を焼いてきます。バターで焼くことで香ばしくなります。この時、タイムとニンニクをいれるとなおよしです。

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ちなみに袋に残っていた肉汁はそのままではおいしくありませんが、フライパンで焦げる寸前まで加熱するとおいしいジュをつくることができます。

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鍋底に肉汁がこげついてきたら、水かストックを100ccほど入れて(写真は水を入れています)さらに煮詰めていきます。濾して塩、胡椒で味をつければジュの完成です。好みでバターを加えてもコクが出ます。

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ところで肉ですが切るとこんな感じ。しっかりくっついています。

ちなみによく食品偽装で問題になる成型肉はカゼインナトリウムなどで固めているので技法としてはハンバーグに近く、この技法とはまったくの別物。トランスグルタミナーゼを使うとタンパク質同士が繋がるためまず見分けはつきません。

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皿にとりわけジュをかけます。

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出来上がり。肉はしっかりとくっつき、筋もないのでやわらかく食べることができます。肩ロースがまるでロースのような仕上がりに。結着肉は表面についた大腸菌などに注意する必要はありますが、安い肩ロースを有効に使えるので、コストの削減にも繋がりますし、食材の有効活用にもなります。トランスグルタミナーゼを使ったテクニックは引き続き、紹介していきます。

Text : naoya

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