• キッチン
  • 2016/9/19 05:00:43

基本のペペロンチーノの作り方〜プロはなにが違う?〜

アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ(にんにくと唐辛子のパスタ)はオイル系パスタソースの基本です。パスタ料理をマスターするには避けて通れない料理。こだわる人が多い料理でもあり、新書一冊分を解説に費やした『男のパスタ道』(土屋敦著)という名著もあります。じゃあ、ペペロンチーノについてはその本を読んでもらえばOK……といいたいところですが、食育通信online風のトマトソースに続いてペペロンチーノも解説します。

(過去エントリ)

基本のトマトソースの作り方〜プロはなにが違う?〜

まずはプロのレシピの分析から。ペペロンチーノの主要な材料は『パスタ』『オリーブオイル』『にんにく』の三種類です。(唐辛子は好みなので除外します)またパスタの味付けをするための茹で汁の塩分濃度にもそれぞれの作り手の個性が表れます。

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いきなりの最初のコツになってしまいますが『パスタの量は一人前80g』にしましょう今回、プロのレシピとクックパッドに掲載されているアマチュアのレシピを比較しましたが、アマチュアのレシピはほぼ一人前100gなのに対し、プロのレシピはすべて80g(一人だけ70gもあり)でした。量が少なめのほうが後に説明する乳化作業が簡単なこと、また量を控えることで美味しい状態のうちに食べきってしまえることが利点して考えられます。

さて、続いて茹で湯の塩分濃度、にんにくとオリーブオイルを比較します。今回は量を比較するためにすべてパスタ100gに対しての分量で、にんにくは1片8gで再計算しています。

例えばイタリアンの巨匠、落合シェフのレシピを参照すると、、、

茹でる湯の塩分濃度……1.5%

にんにく 16g(厚切り又は丸ごと)

オリーブオイル 36g         (落合務のパーフェクトレシピより)

です。また落合シェフはバターやパルメジャーノ・レッジャーノといった乳化剤の使用を推奨しています。別の本では茹で野菜とすりゴマを混ぜたアーリオオーリオを紹介していますが、すりごまも乳化剤代わりになります。また、にんにくは厚切りか固まりで使用している傾向があるようです。

続いてはプロの料理人の卵を育成する服部栄養専門学校のレシピを参照してみましょう。

茹でる湯の塩分濃度……1.3%

にんにく 19.2g

オリーブオイル 36g         (服部の料理の基本 より)

1.3%とは微妙な塩分濃度です。またにんにくは『60度から70度で加熱すること』とあり、このあたりにも細かさがうかがい知れます。ちなみににんにくは薄切りでした。

続いては片岡シェフ。

茹でる湯の塩分濃度……1%

にんにく 5g

オリーブオイル 31.2g        (きょうの料理より)

にんにくは薄切り派。参照したレシピではパスタはフェデリーニという細めを使用。にんにくとオイルの量は控えめでどこかシェフの人柄が表れています。続いてはアロマフレスカの原田シェフ。

茹でる湯の塩分濃度……1%

にんにく 8g

オリーブオイル 36g         (アロマフレスカのパスタブックより)

原田シェフは引用元の本にはシンプルなアーリオオーリオは掲載しておらず、セリやたけのこ、とうもろこしと組み合わせたアーリオオーリオのレシピを発表しています。またその場合、パルメジャーノ・レッジャーノを使用するのも特徴の一つ。パルメジャーノ・レッジャーノが入ることで乳化作業がやりやすくなります。続いてはコアなイタリア料理ファンから人気のある澤口知之シェフ。

茹でる湯の塩分濃度……1%

にんにく 5g

オリーブオイル 48g          (人気のパスタ103より)

フードプロセッサーで細かくした赤唐辛子で辛味を強調、にんにくもみじん切り、仕上げに塩を足してパンチを利かせた味付けをしているようです。本場仕込みオリーブオイルの量も圧巻。同じ本のなかで小林幸司シェフ(現在、銀座リストランテ・エッフェ)はアンチョビ入りのアンチョビ・ペペロンチーノを、奥村忠士シェフ(外苑前アカーチェ)はクリスピーなにんにくを振りかけたクリスピーペペロンチーノを紹介しています。

恵比寿アガペの真中シェフは

茹でる湯の塩分濃度……1%

にんにく 12.5g

オリーブオイル 33.6g         (PASTAより)

にんにくの割合が多い気がしますが真中シェフの場合はソースを作り際にニンニクのスライスをかりかりにし、その半量をとりだし後からトッピングする形なので、実際のソースに入る使用量は6g程度と考えていいのかもしれません。また仕上げに茹で汁とともに塩も足しています。

こうして並べてみると個性的な性格のシェフほどニンニクとオイルが強いという傾向が見てとれます。またパスタは細めのスパゲッティーニを選択しているシェフが多いようです。比較のためにクックパッドからもアマチュアのレシピを二つ引用してみます。

〈レシピA〉http://cookpad.com/recipe/2882320

茹でる湯の塩分濃度 記載なし

にんにく 8g

オイル 18g

〈レシピB〉

(塩 大さじ1 塩分濃度記載なし)

にんにく 5g

オリーブオイル 24g

プロのレシピとの違いはまず塩分濃度の記載がないこと、これではつくる度に味がぶれてしまいます。

次に〈オイルの量が少ない〉ことが挙げられます。代わりにアマチュアのレシピではコンソメや顆粒だし、醤油といった副材料が登場する頻度が高いようです。コンソメや顆粒だしを入れても別に問題はないのですが、味がみんな同じになってしまうのが難点。ここはこれらの既製品を使わないレシピに挑戦してみましょう。また胡椒という記述もありますが、イタリアでは唐辛子を使った料理には胡椒を振らないのが普通だそうです。

市販のペペロンチーノソースも調べてみましたが、多くにアンチョビやベーコン風味調味液などが入っているのが特徴。また、アミノ酸などの化学調味料も使用しており、日本人好みの旨味が多いアレンジが加えられているようです。

さて、プロのレシピから食育通信online的にイタリアンシェフの平均値を導き出していきます。まず醤油やアンチョビやベーコンなどの副素材ですが、タンパク質は乳化剤になる上旨味も加わるので足すと失敗のリスクを減らすことができるでしょう。しかし、まずは基本のアーリオオーリオを習得するのが先、アレンジはその後なので、今回のレシピでは副素材は使いません。

まずはニンニクから。量の前に見当するべきはにんにくの形状です。にんにくの形状は風味の強さと関係します。みじんぎりはパスタと一緒に多く口に入るので風味が強く、固まりのほうがやわらかい風味になります。ところが大きいと火を通すのが難しく、細かいと焦げる恐れがあります。そこで今回は落合シェフ流の厚切りを選択しました。このあたりは目指す仕上がりに応じて、というところ。

次にオリーブオイルの量を検討しますが、突出して量が多い澤口シェフのレシピを除いた五つのレシピから平均値を出すと100g当たり34.56gになりました。これを80g当たりに換算すると約27.6g。大さじ2弱といったところです。まずはこの平均値でつくってみて、好みに応じて加減することにしましょう。

またオリーブオイルにはピュアやEVバージンなど種類がありますが、EVオイルの香りが好きなら最後に少量振りかけましょう。ちなみに前述の名著『男のパスタ道』では〈ペペロンチーノにオリーブオイルは向いていない〉という衝撃の事実が掲載されています。なぜ、そうした結論に至るのか、また適した油は何なのかはネタバレになるので本で読んでください。なかなか興味深い考察でした。

しかし、食育通信onlineでは癖のない種類のEVオリーブオイルを使います。EVオリーブオイルには雑味もありますが、そのかすかな苦味がコクにつながります。ピュアオリーブオイル(現在は単なるオリーブオイルと呼ぶそうですが)という選択をなぜとらないか、という理由は食育通信onlineの「オリーブオイルの魅力とその使い方」の第4回「エクストラバージンオリーブオイルとは」を読んでください。

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さてペペロンチーノのおなじみのポイントといえば乳化ですが秘密兵器はこの耐熱性のゴムベラです。ゴムベラを使うことでパスタの表面を傷つけることなく乳化作業を進めることができます。なければ菜箸で混ぜても大丈夫です。

さて、ようやくレシピです。

基本のアーリオオーリオペペロンチーノ(一人前)

スパゲッティーニ 80g

オリーブオイル 大さじ2弱(27g ピュアでもEVでも)

にんにく 8g(1片)

赤唐辛子 1本

イタリアンパセリのみじん切り おおさじ1

茹でる湯 1L

塩    13g〜15g

多くのシェフが塩分濃度の1%を選択しているのはペペロンチーノのためだけに濃い塩分の茹で湯を準備できないから。ペペロンチーノ専用でつくるなら服部レシピの1.3%か落合シェフ推奨の1.5%が仕上がりが安定するようです。ただ、塩味はあくまで好み。1%〜1.5%のあいだで好みの具合を調整します。ちなみにアルケッチャーノの奥田シェフは海水の濃さである3%の塩分で茹でて、お湯で洗うという例外的な手法で知られています。あまりにも特殊なので今回は無視します。

またこれが最大のコツかもしれませんが「一度に二人前以上はつくらない」ようにしましょう。現場で一度に五人前など作ることはありますが、量が多いとブレやすく難しいものです。

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さて、材料です。にんにくは国産又はスペイン産を選んでください。スペイン産は落合シェフ推奨の銘柄。たしかに癖がなくておいしいですが、入手の容易さからいえば国産でしょうか。ちなみににんにく8gは写真の量です。1片とレシピに書きましたが、本当は計量するのが一番。パスタ100gに対して5gのみじん切りが黄金比である、と言い切っているシェフもいました。

唐辛子は香りの良い小粒なものを。種は取り除いておきます。実は種に辛味成分が多く含まれているわけではないのですが(試しに種を口に入れてかんでみてください。外側と辛味に違いはありません)焦げやすいのでとったほうがいいのです。

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2mmの厚切りにしました。中心の芯の部分は竹櫛で取り除いておきます。実は入れても味に差はそれほど出ないのですが、問題は焦げやすいこと。取り除いたほうが無難です。パスタを茹でる用の鍋も火にかけておきましょう。

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冷たいフライパンにニンニクとオイルを入れて準備します。この際、アルミかステンレスのフライパンを使うとオイルの色などの状態がわかりやすいので便利ですが、慣れればテフロンでもまったく問題ありません。

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こんな風にフライパンを傾け、オイルに浸るようにして弱火で加熱していきます。

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今回、温度を測りながら加熱しました。服部レシピに掲載されていた60度から70度で加熱するのはなかなか難しそうです。ただ目安としてオイルの温度が100度に近づくとニンニクから泡が出てきます。そうしたら鍋を火から外し、二十秒ほど温度の上昇を落ち着かせましょう。

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再び弱火にかけ、ニンニクがかすかに色づきはじめるまで加熱します。この時は温度が125度前後でしたが、とにかくオイルの温度をあまり上昇させないことが二つ目のコツです。というのもオリーブオイルは150度を超えると急速に風味が失われてしまうから。にんにくが泡立ったら火から外すと覚えてください。

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にんにくに上手に火が入ったか調べるには竹櫛が便利です。火が通ったジャガイモのようにすっと串が通ればOK。

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火を止めて、赤唐辛子を入れて馴染ませます。にんにくと赤唐辛子を同時に投入し、香りを出す流派(?)もありますが、この段階で加えても辛味は充分に出ます。この時、にんにくをとり出すこともできますが、風味は水には溶けますが油脂には溶けないのでおすすめしません。もしも、薄切りのニンニクを使って食感のアクセントにしたい場合、半量をとりだし、もう半量は鍋に残しておきましょう。

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イタリアンパセリのみじん切りを投入してフライパンの温度を下げます。この状態でソースのスタンバイはOK。

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パスタを茹ではじめます。表示時間から1分から1分30秒引いた時間が茹で時間の目安です。バリラなら1分、ディチェコなら1分半というところ。今回はディチェコを使っています。お湯の量は1Lですが、慣れれば問題なく茹でることができます。

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ここで三つ目のコツです。『茹で湯の量は控えめに

通常、パスタはくっついたりするのを防ぐため、たっぷりの水で茹でる、とされています。これは正しいアプローチで、大量の湯を用意すればパスタを入れた直後に湯の温度が低下することなく、アミロースが溶けすぎずにすみます。また、パスタから出たデンプンがパスタに付着しにくいため、時間がたっても粘りが出ることがありません。

しかし、ペペロンチーノに限ってはなるべく少ない湯で茹でたいところです。それは乳化剤として動物性のタンパク質を使わないから。ペペロンチーノの場合はパスタの茹で汁に含まれるデンプンやグルテンなどの成分だけが頼りです。そのため、なるべく濃い茹で汁が欲しいのです。プロのキッチンではパスタを何回も茹でるので濃度のある液体が得られると考えられますが、お店と違って大量のパスタを茹でない家庭ではこの方法がベターです。

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お皿も温めておきましょう。

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茹で上がり時間の1分三十秒前にパスタの茹で汁を50ccとります。

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茹で上がり時間の30秒前〜1分前になったらソースの鍋に茹で汁を加え、中火にかけます。茹で汁にニンニクの風味が溶け出し、ソースが仕上がります。ソースが沸いていることを確認したら火を止めます。

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セットしたタイマーがなったので、パスタをトングですくい上げてパスタをソースで和えます。この状態ではまだ乳化していませんが慌てる必要はありません。

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秘密兵器のゴムベラか菜箸でパスタをぐるぐると混ぜます。このぐるぐる混ぜ、落合シェフや真中シェフがおすすめしている手法ですが、なかなかの優れもの。パスタが泡立て器のワイヤーの役割をはたしてくれるので上手に乳化させることができます。この時、鍋を揺するとより効率が良くなります。

鍋を寄せて水分が少ないと感じればスプーンで一杯、もう一杯と茹で汁を追加しますが、この時、茹で汁を一気に加えるのもNG。オイルが分離し、乳化の妨げになってしまいます。あくまで少しずつ足して好みの具合になるまで調節します。

この時、乳化にこだわるあまり激しく鍋を煽り、かき混ぜる人がいますが、それも禁物。パスタの表面が崩れると滑らかさが失われてしまいます。乳化作業で重要なのはオイルと水分のバランス。ぐるぐるとパスタをかき混ぜ、そこに適正な水分があればソースは(一時的ではありますが)繋がります。

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出来上がり。熱いうちに食べましょう。乳化剤となる成分(具体的にはタンパク質)が入っていないため、乳濁液は非常に頼りない状態です。なるべく早く食べるしかありません。食べるスピードが遅い人には少量のバターかチーズを入れてあげたほうが最後までおいしく食べていただけるかもしれません。

さて、これだけだとイタリアンシェフの平均値のパスタなので食育通信onlineならではのレシピもおまけでご紹介します。最後にチーズを加えると乳化作業は簡単になりますが貝類やシラスのパスタの場合は考えもの。魚介類とチーズは相性が良くないのです。そこで、、、

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パスタを茹でる水に昆布出汁を使うことで、旨味を補うことができます。パルメジャーノ・レッジャーノと昆布の旨味成分は同じグルタミン酸ですが、昆布はチーズと違い魚介類との相性が抜群。昆布は一晩、水に浸けて水出汁にしておきます。昆布だしを使うとオイルの量を大さじ1まで減らしても満足感を得ることができます。

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とりあえず今回はアーリオオーリオペペロンチーノを昆布水でつくってみます。イタリアンパセリではなく、縮れパセリで仕上げてみました。

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1.5%の塩分濃度の昆布水でパスタを茹でます。

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出来上がりはこんな状態。

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醤油や顆粒だしを入れると「和風!」という感じがしますが、昆布だしなら『……和風かな?』くらいの印象に。シラスなどとも昆布だしの相性は抜群ですし、ボンゴレにする時にもおすすめです。昆布を加えることで、昆布の粘質多糖類のおかげか乳化もしやすいようです。

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いずれにせよパスタを持ち上げた時にオイルや水分が皿の底にたまらないこのぐらいの状態を目指します。オイルベースのパスタは水分とオイルのバランスがすべてなので、好みの割合を会得しましょう。

Text : naoya

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