• キッチン
  • 2015/9/28 05:00:19

ジャガイモのグラタン、おいしくつくる秘密は熟成にあり

じゃがいも料理の究極の形はグラタンではないか、と思います。じゃがいもは様々な形に姿を変えますが、乳製品との相性は抜群。今日はグラタン・ドフィノワの作り方をご紹介します。

じゃがいものグラタンは簡単につくろうと思えばいくらでも簡単につくれる料理ですし、逆に丁寧に作ることもできる料理です。今回は丁寧な作り方で、究極のじゃがいもグラタンを目指します。世間にあふれる簡単なレシピとは一線をかくす、骨太な作り方です。

グラタン・ドフィノワ

じゃがいも 500g(皮を除いた重量)

生クリーム 200c(動物性のもの乳脂肪分45%のもの)

牛乳    200cc

塩      5g(小さじ1)

ニンニク  一片

チーズ(グリエールが一般的ですが、今回はパルメジャーノチーズ) 適量

材料はシンプル、ホワイトソースも使いません。さて、ジャガイモのグラタンをおいしくつくるにはどのように作ればいいのでしょうか。すべてはじゃがいも選びにかかっています。じゃがいもの品種はメークインなどの粘質系よりも、ソースとの一体感が生まれる男爵系のものを使います。

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じゃがいものグラタンの美味しさを左右するのは一にも二にも糖分です。昔から農家には越冬じゃがいもといって雪のなかでじゃがいもを保存する知恵がありました。実はジャガイモは低温、かつ高い湿度のなかで保存すると、デンプンを分解し糖分に変える性質を持っています。したがって新じゃがいもでは美味しいグラタンをつくることはできません。

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というわけで新じゃがいもではなく熟成された普通のじゃがいもを購入しましょう。次に買ってきたじゃがいもを新聞紙などに包みます。

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その後、ジッパー付きの袋に入れ、冷蔵庫で保存します。最低でも一週間、できれば二週間は寝かせます。つまり雪室の状況を冷蔵庫で再現しているわけです。この熟成作業によってじゃがいもの糖度が上がり、おいしくなります。肉じゃがなどにもおすすめの保存方法です。

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さて、熟成されたじゃがいもはよく洗ってから、皮を剥きます。

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このじゃがいもをクリームと牛乳で加熱していきますが、この割合で味に個性が出てきます。同量が基本ですが、牛乳の割合を増やせばあっさりと、クリームの割合を増やすと濃厚になります。まずは同量でつくってみて、調節してみてください。

この後の作業は省略してもいいのですが、究極を目指すなら試していただきたい工程があります。

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牛乳でじゃがいもの皮を煮出すのです。じゃがいもの香り成分の一つであるメチオナールは皮に多く含まれています。また、このじゃがいものグラタンは、ジャガイモに含まれるデンプンによってソースに濃度をつけているのですが、デンプン粒子は皮の下すぐに多く含まれているのです。

余談ですが第一次世界大戦をはじめたことで有名なドイツの皇帝ヴィルヘルム2世にはじゃがいもの皮を剥くことを勅令で禁じたという逸話があります。それほど皮の美味しさはじゃがいもにとって重要なもの。

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沸騰したら火を止めて、香りを移します。

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さてじゃがいもをスライスしましょう。スライサーを使うと便利です。スライスの厚さは2mm。厚いとじゃがいもの質感は活かせますが、ソースとの一体感は失われますし、逆に薄いとじゃがいものほくほく感がなくなります。2mmはその限界の厚さです。また、じゃがいもは決して水にさらしません。さきほど述べた通り、この料理はじゃがいものでんぷん質でソースの濃度をつけているから。そのため今回は切った端から生クリームに落としています。

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もう一つ、重要な素材があります。それは塩です。フライドポテトやポテトチップスなどが代表ですが、ジャガイモと脂肪分があわさった料理は塩味と非常によく合います。

今回は健康のことは考えず塩はしっかり利かせます。400ccの液体に対して塩5gは重量比になおすと1.25%。ソースの塩分濃度と考えるとかなりの量ですが、良心が許すなら6g(1.5%)まで増やすことができます。(というか味だけを考えるなら6gがおすすめです)

この料理の一番難しいところはじつはこの塩味。この味付け実はラーメンに似てます。ラーメンのスープの塩分濃度は一般的に1.2%〜1.5%(つけ麺は1.7%)。脂肪分の多いスープで炭水化物(麺)を食べるラーメンと、じゃがいものグラタンは味の構造が近いのです。塩気の効いていないラーメンはおいしくないように、ぼやけた味のじゃがいものグラタンも実に寂しいもの。ただし体にはもちろんよくないので、そこらへんはご了承を。

また、脂肪分が多い料理は塩味が効きにくいです。したがって上記のレシピよりもクリームの割合を減らした場合は塩分も控えてください

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さて、説明が長くなりましたが、液体と皮を分離させ、生クリームと混ぜてソースを作ります。塩はこの段階で加えてもOK。いずれにせよきちんと溶かしてください。

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オーブン皿ににんにくをこすりつけておきます。この工程は料理本などにもよく出てきますが、実際にはじゃがいもが潰れるほど強くこすりつけるべきだ、と偉大なるシェフ、ジョエル・ロブションは言いますが、大いに賛成するところ。細胞を潰すことで香り成分を皿の表面にうつすことができるのです。

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すべてを一つにあわせてオーブン皿に注ぎましょう。さきほどつくったクリームと牛乳の混合液でじゃがいもを煮てから、オーブン皿にうつし、それから表面を焼く方法が一般的ですが、今回は究極を目指し、生のじゃがいもを液体に浸してオーブンで焼いていきます。この方法のメリットは焦げが美味しくなることです。その秘密は牛乳とクリームを加熱することで表面に湯葉のように浮いてくるタンパク質。もちろん鍋で煮たとしても表面に出来た層を崩さないようにオーブン皿にうつせば同じ味が出せます。

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表面をスプーンで抑えて、じゃがいもが液体にひたるようにします。少し位置を変えたりして、いもといもの隙間にもちゃんと液体が入るようにしましょう。170度のオーブンに入れて40分間焼きます。

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40分後がこんな感じ。焦げるようなら途中でアルミホイルをかけてください。ちなみに最初からアルミホイルをかけると吹きこぼれます。

表面に浮いた乳製品のタンパク質が焦げて、風味を出しているのがわかります。昔のレシピではチーズは振りかけないものも多いのですが、究極を目指す今回はチーズの旨味の力を借りましょう。チーズのなかでも特に旨味成分の多いパルメジャーノチーズを適量、振りかけてから、さらにオーブンに5分ほど入れて、表面を焦がします。

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出来上がりです。熱いうちに食べるのも美味しいですが、少し落ち着いてから食べるとソースとの一体感が増します。毎日食べるには明らかに体に毒ですが、たまになら……という感じの料理でしょうか。

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肉料理の付け合わせにもなりますし、サラダを添えてメインにもなる立派な料理です。チーズを変えても色々と楽しめます。こうしてひとつひとつの工程を検証していくと、脂肪と塩をたっぷり使うのがプロの味の秘密だとわかります。しかし、じゃがいもの熟成は家庭料理にも充分応用できることなので、今回ご紹介しました。それでは。

Text : naoya

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