• キッチン
  • 2015/9/7 05:00:04

できるだけ詳細にリゾットの基本を

日本の食の基本、米。食べ物として重要な存在ですが、これまであまりガストロノミー的には議論されてこなかった食材です。なにせ現在の主要品種であるコシヒカリは1970年代に生まれた品種。あの米は美味しい、これはいい、という話はよく聞きますが、料理人はもう少し根源的なところを考える必要があるでしょう。どの品種を使い、なにを表現したいか、それについて説明できなければいけません。

さて、今日のテーマはリゾット。どんな品種の米を使うのがいいのでしょうか。それには明確な答えはありません。スープを多めにしたゆるい感じの仕上がりにしたいのか、ぼってりとさせて米やチーズの味をしっかりと感じさせたいのか、その目的によって用いる米は異なります。

米の主成分は澱粉です。その含有量にはさしたる違いはありません。大きく異なるのはアミロースとアミロペクチンという二種類の澱粉の比率。アミロペクチンが多いと粘りが強く、米の内部も表面もよく水分を吸い込みます。ただし米粒の形は崩れやすくなります。

逆にアミロースが多い品種は形をよく保ちます。

以下、代表的な品種と特徴を並べてみましょう。

低アミロース米

ゆめぴりか、ミルキークイーン、たきたて、ぴかまる

コシヒカリ、はえぬき

中間的な性質(16〜17%)

あきたこまち ふっくりんこ つや姫 ひとめぼれ

アミロースが多い品種

ななつぼし ササニシキ きらら397

例えば北海道の『ななつぼし』はアミロース含有量が19%と高いので、形を保って欲しいライスサラダやパエリアといった料理に向き、低アミロース米は炊きたての御飯を味わうのに向いています。またもっちりとして、冷めても美味しさを保つことが特徴。おにぎりなどにも向いています。

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三種類のお米を用意しました。左上は『バスマティライス』カレーなどに使われる長粒米です。アミロース含有量は22%と高いのですが、長粒米はスープを含みませんのでパエリヤやリゾットには不向きです。長粒米は香りがよくカレーなどによくあいます。右上はおなじみ日本のコシヒカリ、下はイタリアの『カルナローリ』という品種です。

さて、リゾットはどうでしょうか? カルナローリはリゾットに向いた品種として知られていますが、アミロースの含有量は24%。圧倒的にアミロースが多いことがわかるか、と思います。コシヒカリなどに比べて味を伝えませんが、米粒のテクスチャーがしっかりしています。また粒が大きいのも特徴です。米の味をストレートに出したいのであれば最適の品種でしょう。

日本のお米では『ななつぼし』や『ササニシキ』などのアミロースが多いお米がリゾットには向いています。ただし米の味よりもよりスープの味を強調したい場合(例えばエビの美味しいスープを含ませたい場合)はコシヒカリなどを使ったほうがいい、ということになります。

さて、実際にリゾットをつくってみましょう。材料です。

パルメザンチーズのリゾット

オリーブオイル 大さじ2(約20g)

玉ねぎ      65g(小1個 普通サイズなら半分)

米        100g

白ワイン(opition) 50cc

ブイヨン     600cc(水にブイヨンキューブ1個を溶かす)

パルメザンチーズ  20g

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今日の米は入手しやすいコシヒカリを使いました。

米は洗わずに使います。米は洗わないほうがよりクリーミーな仕上がりになります。(現在の精米技術ではヌカ臭さはほとんど残りません)しかし、さらっとした仕上がりにしたければ、洗うのももちろんOK。つまるところ仕上がりのイメージによって使い分ければいいのです。洗う場合は洗った後、30分ほどざるにあげて水気を切っておきましょう。洗うと米が割れて、ぐちゃっとしてしまう、という意見がありますが、米が割れるのには別の原因があります。それは後ほど。

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玉ねぎの量を控えるのもポイントです。そういえばイタリア料理界の巨匠、マルケージさんのスペシャリテ、黄金のリゾットには玉ねぎを使っていません。また、甘味が必要なければエシャロットを使ってもいいでしょう。でも、日本人は甘味が好きですから、今回は入れています。

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ただ、玉ねぎは米粒よりも小さく切ります。米の食感を妨げないためです。

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今日は手軽に市販のブイヨンキューブを使います。使った製品は味の素のコンソメです。メーカーによって塩分に差がありますので水の量を調整するなどして対応します。後から煮詰まるのでこの段階ではかなり薄めにしておくのがポイント。

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ここで裏技をひとつ。バスマティライスはリゾットに向かないと言いましたが、香りはとてもいいので活かしたいところ。なのでバスマティライスを煮出して、香りづけをします。これはイギリスのシェフ、ヘストン・ブルメンタールさんのアイディア。

ヘストンさんは香りを出したあとのバスマティライスでスープをつくり、リゾットに添えていました。

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材料が準備出来ました。ブイヨンは熱い状態を維持しておきます。

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オリーブオイル大さじ2と玉ねぎのみじん切りを入れて、鍋に火をつけます。火加減は中火です。音が出はじめたら弱火に落としてから3分間、玉ねぎを色づかないように炒めていきます。

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米を加えて、米粒が白っぽくなるまで炒めます。

さて、米は炒めるべきなのでしょうか。熱心なイタリア料理愛好者はかならず炒めるべきだ、と主張しますが、その根拠は不確かです。比較実験をしなければ違いはわかりません。

下の写真は米30gをオリーブオイル大さじ1で炒めてから水300ccで加熱したものです。

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米粒がはっきりと残っていることがわかります。またスープのとろみはよわく、さらりとしています。炒めることにより米のでんぷん質がなかにとどまるからです。

次は同じ分量の米と水を炒めずに煮たものです。

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米とスープの一体感があることがわかります。クリーミーな仕上がりです。ただし形は柔らかめ。以上の実験から炒めることによって、米粒のテクスチャーとスープのクリーミーさはトレードオフの関係にあることがわかります。この実験は次回、完璧なリゾットのレシピを考えるヒントになりそうです。とりあえず今日は炒めると米粒がしっかりとした食感になることだけを覚えてください。ただしクリーミーさは失われます。ですからライスプディングのような料理をつくるときには米は炒めないほうがクリーミーな仕上がりになって美味しいのです。

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オプションですが、白ワインを加えます。火加減を中火にして、アルコール分をしっかり飛ばしましょう。白ワインはチーズの濃厚さにさっぱり感を与えるために加えるので辛口のものを選びましょう。

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他にベルモット酒やヴァン・ジョーヌを加えても、仕上がりの風味に差をつけることができます。

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熱いブイヨンをレードルで注ぎます。

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軽くかき混ぜて弱火に落とします。今回はタイマーを10分にセット。少し煮込んで、水分が少なくなってきたら

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またブイヨンを足します。これを繰り返します。これが通常の作り方。一人の人間が鍋につきっきりになるためまったく不効率です。

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しかし、この方法にはメリットがあり、鍋を頻繁にかき混ぜることで米同士がぶつかりあい、澱粉を多く流出させクリーミーさが生まれます。

逆にあまりかき混ぜなければさらっとした仕上がりになります。どちらを目指すかは仕上がりのイメージによります。ただし、米が煮えたら混ぜるのは控えることです。米が柔らかくなってからだと表面層が削れるのではなく、米粒が割れてしまうからです。このあたりについてはフードライターのハロルドマギーが『kitchen science』で説明しています。

14分から15分間を目安にこの作業をを繰り返すとおいしいリゾットになります。

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しかし、この調理法は合理的ではありません。また他の料理もつくらなければいけないこともあります。そこで今回は3分ほどかき混ぜながら煮た後にブイヨンを一気に注ぐ調理法をご紹介します。

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時々、かき混ぜながら10分間煮ます。

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10分煮たらこの状態。まだ米には芯が残っています。70%ほど火を通したところで一度、加熱を止めます。

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ざるにあけて、スープと米をわけます。

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米はバットなどにうつし、氷水にあてるなどして冷まします。この段階では火を入れ過ぎないのがポイント。冷蔵庫で保管しておきます。ちなみに、この状態でも米の糊化は若干、進みます。半分程度火を通した米を冷やすことによるメリットをハロルドマギーはこう説明しています。

『この方法では加熱された米の澱粉の一部が硬化し、充分に火を通した米を再加熱するよりも弾性が出る』

また、この作り方ですと事前にスタンバイしておけるので、たくさんの皿を提供する場合のオペレーションでも有用です。

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もしも、煮汁がうすければこの段階で煮詰めておけばいいだけです。つまり加えるスープの量は多めでもOK。

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さて、仕上げましょう。鍋にさきほどのスープを沸かし、冷蔵庫から米をとりだして、あわせます。この後の加熱時間は3分間が目安です。10分、火を入れて、冷ます(このあいだに1分間煮たのと同じくらい糊化が進む)それをさらに3分間、加熱するのでトータルの加熱時間は14分、ということになります。

仕上がりはアルデンテ。さて、このアルデンテがどういう状態を指すのかは人によって見解が異なります。芯がある状態といいますが、芯が残ったご飯は美味しくはありません。アルデンテが強調されるのは火を通しすぎるリスクが大きいからでしょう。実際には米粒は弾性に富み、スープがゼリー状に表面に絡みつく状態が理想です。前の段階で米を冷やすことは米粒のテクスチャーを強調することができるので有効です。

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火を止めてパルメザンチーズを混ぜ込みましょう。バターを入れてもOK。前述の巨匠、マルケージはチーズとバターをいれたら混ぜずにラップをかけて米を蒸らすのが秘訣だ、と語っています。

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これでパルメザンチーズのリゾットの出来上がり。仕上がりのイメージにあわせて米を洗うか、洗わないか、または米を煮るときにもっと混ぜればいいかという工程をひとつひとつ検証してみましょう。

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ちなみにチーズをいれないで、冷凍のグリーンピースと冷凍のエビ、それに刻んだミントを混ぜ込み、レモンを絞ったリゾットもなかなか美味しいです。とにかく基本のリゾットの作り方を覚えれば応用は自由自在。色々と試してみましょう。

Text : naoya

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