• キッチン
  • 2015/6/22 05:00:02

『牛肉の赤ワイン煮込み(ちょっと現代的な)』の作り方〈肉を煮込む(もしくはスープをとる)ことを学ぶ(第3回)〉

先週は『オックステールの赤ワイン煮込み』をつくりましたが、今回は『牛肉の赤ワイン煮込み(ちょっと現代的な)』です。モダニストキュイジーヌチームが開発したテクニックを応用しています。

まずはレシピです。

牛すね肉(黒毛和牛) 500g

長ネギ         3本

付け合わせの野菜    適量

オックステールの赤ワイン煮のソース 適量

レシピは至極シンプル。というのも牛肉は煮込みません。

IMG_0126

真空パックにして湯煎にかけるのです。スチームコンベクションオーブンがあればそれを使ってもOK。タニカのヨーグルトメーカー、ヨーグルティアでも大丈夫です。(参考記事『低温で24時間加熱すると豚の肩ロースも柔らかくできます』)

IMG_0127

タンパク質の変性について復習しましょう。

ものすごくざっくり言うと、肉のタンパク質は50度〜70度のあいだで変性し、65度くらいから水分が失われていきます。また、コラーゲンがゼラチン化する温度は70度〜80度。前回のオックステールの煮込みは肉から水分が失われることには目をつむり、コラーゲンがゼラチン化する温度で加熱をしました。そのことにより豊かな風味がとけだしたソースが出来上がったわけです。

しかし、赤身の部分のタンパク質が変性することによって水分が大幅に失われることも事実。その問題点を踏まえて今回は肉を低温で長時間加熱します。

IMG_0129

温度は65度にしました。(実際はもう少し低温で加熱することもできますが、その場合の調理時間はさらに長くなります)

加熱時間は24時間です。低温でも長時間、加熱すればコラーゲンはゼラチン化します。目安としては61度で24時間~48時間と覚えておいてください。

IMG_0001

24時間、経過したものです。加熱温度が高かったので若干離水していますが、最近この方法で(野菜や肉、魚から)ジュをとってソースに仕上げる料理人が出てきましたね。

IMG_0002

断面はとてもジューシーでピンク色です。すね肉に入り込んでいるコラーゲンもゼラチン化していることがわかります。

IMG_0003

手で簡単に裂けるほど柔らかいです。

IMG_0036

この方法だと肉にワインを漬け込んでいないので、表面に黒い色がつきません。赤ワイン煮の雰囲気がでないので、ちょっと工夫して『焼き葱の土』をつくります。

長ネギを120度のオーブンで40分焼いてから、170度で焦げ目がつくまで焼きます。

IMG_0037

こんな感じで黒焦げです。

IMG_0038

ミキサーにかけて……

IMG_0040

同量の塩を混ぜます。ネギによって重さが異なるので分量は出していません。ネギが10gなら塩も10gです。これで焼きネギの土ができました。

IMG_0004

肉の表面にまぶします。これでちょうどよい塩味もつきます。この焼きネギの土、ステーキなどにもよくあいます。

IMG_0005

真空パックのなかの液体もソースに加えます。オックステールの煮汁ですと濃度が弱いので(オックステールの場合は肉自体にゼラチン分が多いのでそれで良いのですが)人参のピュレを小さじ1ほど加えてとろみをつけました。人参のピュレでとろみをつけるのは、水の料理で有名な故ベルナール・ロワゾー氏の手法。バターの使用量を大幅に減らすことができます……と試作してみたのですが、とろみがないほうが良かったかも(笑)濃度をつけるとちょっと洋食っぽくなりますね。

IMG_0014

付け合わせの茹で野菜を添えて、切り分けた肉を載せます。ソースをかけて完成です。とろけるほど軟らかくジューシーな肉は低温長時間加熱の賜物。スチームコンベクションオーブンを持っているレストランも増えてきましたし、こういった低温長時間加熱による煮込み料理はいかがでしょうか。

最後に細菌のお話を。覚えておいておきたいのは食品を4.4度から60度の範囲内に置かない、ということです。ですから肉は室温に出しておかずに冷蔵庫にしまいましょう。4度以下であれば細菌が生きていたとしても食中毒になるほどは増えません。逆に60度以上では長時間生存できません。(ただし細菌の芽胞は生き延びる可能性はあります)

食中毒の発症には細菌の数が問題になってきます。サルモネラ菌やカンピロバクターは百万個の細胞が必要ですが、病原性大腸菌O157はたった数個あれば感染が引き起こされます。十分な注意が必要です。

食中毒菌によっても生存できる温度帯が変わります。例えばサルモネラ菌は4.4度ではまったく増殖しませんが、37.8度で盛んに増殖します。そういった知識も一応、頭に入れておく必要があります。

低温長時間加熱をご紹介すると、安全が心配になります。現実的には今回、紹介した牛肉の真空調理における最低温度を決めるのは、嫌気性のウェルシュ菌という細菌で52.3度以上の加熱によってパスチャライズできることがわかっています。これより高い温度を保っていれば、食中毒菌は増えません。間違っても『肉は低温で調理したほうがおいしいから今日は40度で加熱してみよう』と思わないこと。

食品の安全性を考える時、大事なことは三点あります。一点目、食材としての汚染レベルを抑えることです。出所の明らかな食べ物を購入し、まな板や調理器具などにも汚染を広げないようにします。例えば牛肉の細菌は主に肉の表面に付着しているので充分に注意しましょう。

二点目は汚染のレベルの上昇を抑えること。低温で保管することや、洗浄などを工夫します。三点目は汚染のレベルを低減することで、通常は加熱調理によって行います。食材によって適切な加熱をし、殺菌することが重要です。

鶏肉を瞬間的にパスチャライズしたい場合の温度は74度。しかし、その温度帯ですとパサパサになってしまい美味しくありません。しかし、低い温度でも十分に時間をかけることでパスチャライゼーションは可能です。真空調理法は実はそれに適しているとも言えます。

それでもリスクを受け止められないという人は食べないのが一番安全……ということになります。食品安全については別の機会に詳しく取り上げましょう。それでは。

Text : naoya

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して食育通信onlineは一切の責任を負いません。

ページ上部へ
ツールバーへスキップ