• キッチン
  • 2015/5/5 12:00:03

食の仕事人第20回さすしせその酢の話

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人間の最古の調味料と呼ばれる酢。ワイン文化の熟成した西洋ではワインビネガー、日本では5五世紀頃から米を使った酢が「からさけ(苦酒)」という名前で存在していました。

今回は宮崎県、綾町にある大山食品を訪れました。名水で知られる綾町、工場の敷地内から採取した湧き水が、お酢作りにつかわれています。

「癖がないのが癖、というか。特徴ですね。殺菌するために沸かしたりすると、もう駄目になってしまいます。もっと悪いのは塩素ですけど。時々、買い物にきはる人が持って帰ったり、一度ここの水を味わうと他のは飲めないって言いますね。この水の良さはやっぱり山のおかげなんですね。山によって濾過された伏流水です。お酢作りに重要なのは水と米です。米は近隣でとれたものを使っています」

大山食品の酢の作り方はこうです。甕に種酢(前に作ったお酢のもろみ)を入れ、黒麹でつくった米麹を入れます。そこに蒸した米を入れて、水を注ぎます。全体をなじませた後、表面に振り麹(米麹で液の表面を覆う)をし、真っ赤に熾った炭を数本投入してすぐに紙蓋をします。その紙蓋の中心にきれいに光った五円玉をそっと置いてから、傘のような蓋を被せて、半年間お酢になるまで待つのです。

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五円玉?

「銀行さんには怒られちゃうかもしれないですけどね」

なんと五円玉の色の変化で内部の発酵状況を見極めるそうです。そうして待つこと6ヵ月。屋内タンクに移してさらに6ヵ月間待って、ようやくできあがる酢はさっぱりしながらもまろやかでツンとこない味。

ところで甕で仕込む前に焼いた炭を入れるのが大山食品独特の製法にはどういう理由があるのでしょう?

「それがよくわからないんですよ。色々調べたんですが、ほかにそういうところをやっているところはない、と。炭は多孔質で微生物にいいとか、場を良くするとか、色々とあるんだと思うんです。でも、昔からやっていたからとにかくそれを守っていこう、と」

理由はわからないというところが神秘的です。成分分析を見ると酢酸以外の成分の多さに驚きます。なにより旨味成分となるアミノ酸が非常に豊富で、直接飲めるのはもちろん料理に使うのにとてもいいようです。

「南九州は温暖ですから、今のように空調とかない時代は魚の保存をはじめ酢で保存性を高めるということで酢はよく使われていたと思います」

南北に長い日本。それぞれの土地の紀行を活かした食文化が日本の味を支えています。

食育という言葉を明治時代にはじめて文中に記した石塚左弦は『春は苦み、夏は酢の物、秋は辛み、冬は油』という言葉を残しています。春が来て、梅雨が明ければ、暑い夏です。今年の夏は酢で乗り切るといたしましょう。

『取材後期』

005綾町は有機農業の里としても知られ、照葉樹林帯が生み出す水は全国屈指の味だ。日本料理は水の味と言われる。その水をつくるのは照葉樹林帯である。天然のフィルターを通した水は味わい深く、おかしな表現かもしれないが『生きている』感じがした。そんな水を使ってつくられたお酢はきれいな味だった。

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