• キッチン
  • 2015/2/16 05:00:19

基本のミートソース〜プロはなにが違う?〜

今日はパスタ料理の王道、ミートソースを攻略します。(4月30日追記:この記事ではイタリア料理風のものを紹介しています。洋食屋さん風の旨味の強いレシピはこちら→『これが究極のミートソース!』)いわゆるragù alla bologneseイタリア語でいうところのボローニャ風煮込み(ラグー)です。発祥は不明ですが、ボローニャの町のお金持ちがフランスの煮込み料理を真似てつくらせた、という説もあります。(それまでパスタ料理はチーズをかけただけ、というような貧しい料理だったのです)

うるさい人は「スパゲッティ・ボロネーゼ(ミートソース・スパゲティ)は『イタリアにはない!』」と主張します。しかし、乾麺で食べるラグーもおいしい料理。イギリスでは国民的な料理とされ、最近はイタリアでも逆輸入の形でメニューにならんでいるようです。

さて、ミートソースの材料はおおまかにいうとひき肉、香味野菜、水分(トマト)、油脂分。この要素はプロとアマチュアも同じです。ならば、味の違いはどういった部分に出てくるのでしょうか?

まず、レシピの比較分析をしましょう。レシピの比較分析には分量を%に変えると検討しやすいです。

はじめにイタリアンの巨匠、落合シェフのレシピを見てみます。(ラ・ベットラ パスタの基本(講談社)より)

牛ひき肉 100%

香味野菜 約23%

ホールトマト 200%

赤ワイン 20%

オリーブオイル 20%

材料はすべてひき肉を100%とした際の割合で計算しています。牛ひき肉が1Kgなら、ホールトマトは2kgというわけです。また塩、胡椒やローリエなどの細かな要素は比較のために省きました。

次にアルポルト片岡シェフのレシピ。(片岡護のイタリアンパスタレシピ決定版120より)

ひき肉 100%

香味野菜 38%

ホールトマト 200%

赤ワイン   5%

ブロード(チキンブイヨン) 15%

オリーブオイル  24%

期せずして割合としては非常に似ています。実はアクアパッツァの日高シェフをはじめ、他のシェフが発表されているレシピの割合も出してみたのですが、おおまかな割合は似たようなもの。例えば片岡シェフは赤ワインの量を減らし、かわりにブイヨンで旨味を足しているというくらいの違いです。

さて、参考までにシェフではない、料理研究家の方のレシピを研究してみましょう。今回は門倉多仁亜さんのレシピからエッセンスを抽出しました。(引用元 みんなのきょうの料理

ひき肉 100%(パンチェッタをコクだしのために+16%使用)

香味野菜 143%

トマトペースト 6%(+水分)

油脂分    6.6%

ずいぶんと違います。次にクックパッドからもレシピを抽出してみましょう。(引用元 ☆ボロネーゼ☆(ミートソース)

牛挽肉               100%
赤ワイン                    50%
香味野菜        130%
オリーブオイル        7.5%
ホールトマト缶               200%

これも省略しましたが、ケチャップやソース、コンソメ、醤油や砂糖などプロにはない要素が散見されるのが、クックパッドレシピの特徴。どうやらアマチュアは様々な要素を足していく傾向があるようです。赤ワインがたっぷり入っているので、その渋みや酸味を抑えるために砂糖や旨味などを足してバランスをとっているようです。なかなか美味しそうです。

今回はプロのレシピから味の要点をとりだし、レシピを作成しました。プロはなにが違うのか? 食育通信Online版の基本のミートソースのレシピです。ポイントがいくつかあるので、作りながらご説明いたしましょう。

基本のミートソース(4人前)

牛ひき肉 500g

玉ねぎ  115g(玉ねぎ半分くらいです)

にんじん 40g(6cmくらい)

セロリ  30g

にんにく 1片

赤ワイン 200cc

ローリエ 4枚

ホールトマト 800g(2缶)

オリーブオイル 50cc(理想は80cc)

(Opition 小麦粉(強力粉でも薄力粉でも)大さじ2)

塩、胡椒

 

その1 肉の味をいかすために香味野菜の量は40%以下に抑える

ミートソースはラグーの一種。肉の持ち味を殺さないために、香味野菜の量は抑えましょう。香味野菜はじっくり炒めて甘みを引き出します。

その2 オリーブオイルはある程度の量を使う

プロのレシピの大きな特徴はオリーブオイルの量です。イタリア料理の煮込み料理にはソフリットという香味野菜のペーストが不可欠。(カノビアーノの植竹シェフのように使わない人もなかにはいますが、、、)ソフリットはその名の通り、揚げるように野菜を炒めるのが特徴。「表面に脂が浮いてしまうのでは?」と心配される方もいるかと思いますが、それは後の工程次第。

さて、まずはソフリットのつくりかた。

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オリーブオイルがかなりの量入ります。材料はすべて細かなみじん切りに。

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割合はたまねぎ2に人参とセロリが1ずつという感じです。これにニンニクのみじん切りが1欠片(2片でも)分入ります。玉ねぎと人参、セロリが同量ずつというシェフもいます。

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厚手の鍋に材料をすべて入れて、オリーブオイルを注ぎます。中火にかけて加熱していきます。プロは弱火でかき混ぜながら1時間〜1時間半ほど加熱をしますが、今日はそれほど時間をかけていられないので短時間にできる方法をお教えします。

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蓋をしてしまうのです。蓋をすればなかに蒸気がこもるため、下部はオイルによって加熱され、上部は蒸気によって加熱されます。水分がまわっていれば温度の上昇には上限があるため、火加減は中火のままで大丈夫です。 5分、加熱します。鍋が薄手の場合、温度の上昇が早いため注意しましょう。2〜3分置きに蓋を開けてかき混ぜたほうが安全です。

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かき混ぜる時は蓋の内側についた水分をなかに落とすようにしましょう。なかの温度上昇を抑え、蒸気に混じっている揮発化合物をなるべく逃さないためです。木べらで上下を入れ替えるように混ぜます。この時、底に香味野菜が張り付いているようであれば火加減が強すぎますので弱めてください。

もう一度、蓋をしめてもう5分加熱します。

IMG_0080鍋の取っ手があればこんな感じにしておくと木べらの置く場所に困りません。

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五分経ったら蓋をあけて、今度は「蓋なしで五分加熱」します。さきほどまでの工程は野菜の甘みを引き出す工程、今度はメイラード反応を起こしてコクを出す工程です。メイラード反応は低温でも進みますが、160〜170度くらいの温度にすると早く進みます。(それ以上の温度にすると糖が焦げる恐れがあります)そのため、蓋をしめずに水分を飛ばし加熱していくのです。

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しばらく待つと端や底が焦げ付いてきます。早めに木べらでこそいであげてください。しばらく待っては底をこそぐ作業を5分続けると薄い色がついてきます。

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だいぶ色づいてきたので火を止めます。冷ましているうちにメイラード反応はさらに進み、もう少し色が濃くなります。ソフリットの出来上がりです。ソフリットはたくさんつくって冷凍保存もできます。豚肉や鶏肉を焼いて、ソフリットと白ワインでシンプルに煮込んだ料理もおいしいです。

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ひき肉を用意します。レシピには牛ひき肉とありますが、今日は合いびき肉を用意しました。

プロとアマチュアの差はこの後の工程にあります。

その3 肉にはしっかりとした焼き色をつける、ミートソースはひき肉のビーフシチューと心得よ

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フライパンに『さきほどのソフリットの表面に浮いている油』を小さじ1ほどひき、そこにパックの肉を並べるようにして、中火にかけます。そのまま触らないで加熱するのがポイントです。

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焼き色がついてきました。大きなハンバーグを作るような気分で、しっかりとした焼き色がついたら裏返していきます。

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かなり香ばしい焼き色がついてきました。さらに焼いていきますが、この焼き色がコクに繋がります。さきほど説明したメイラード反応のお陰です。

メイラード反応は170度以上で早く進むので、鍋の表面温度をある程度上げる必要があります。その時、肉から出てくる水分が邪魔になるのです。そのため肉を木べらなどで混ぜながら炒めるのは厳禁。肉は水分を含んだスポンジのようなもの。木べらで押すと水分が流出し、焦げ色がつきません。またよく焼くことで臭みのない仕上がりになります。

『試しに木べらでほぐしながら炒めた場合』

よくレシピ本などで「ひき肉をきべらでほぐしながら炒め」とありますが、これは間違いです。

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試しに木べらでほぐしながら炒めてみましょう。

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肉は早くそぼろ状になりましたが、焼き色はついてませんね?

これではコクのあるミートソースにはならない、というわけです。

さて、ミートソースづくりに戻りましょう。ここで2つの方向性が私たちに与えられています。一つは鍋に小麦粉を大さじ2ほど振り入れ、さらにしっかりと炒める方法です。この工程を踏むとより重厚感のある仕上がりになります。かなりの量の脂が入るので、カロリーなど気にしない方はこちらをどうぞ。

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もうひとつは肉から出てきた脂を切る方法です。こちらはさっぱりとした仕上がりになります。

今日は脂を切ります。さきほどのソフリットの鍋とあわせましょう。

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空いたフライパンに赤ワインを200cc注いで、沸かします。フライパンに残った肉の焼汁をあますことなく使うことで、料理にコクを出します。

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すべてをあわせてもう一度、赤ワインのアルコールを飛ばします。

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ホールトマト缶を2缶いれます。ホールトマトは手やホイッパーなどで押しつぶしてください。(トマトは金属を嫌うので手でやるのが一番だ、というシェフがいます。トマトは酸度が高いのでたしかに鉄は駄目ですが、ステンレスなら心配いりません)写真は実はカットトマトです。(余っていたので、、、)

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水を400cc足します。これから1時間煮込むので、その蒸発分を補うためです。ホールトマトの缶がちょうど400ccですね。

加える水分は水で大丈夫ですが、どうしても、というのならここでブイヨンキューブを1個入れましょう。一般的に市販されているブイヨンキューブは1個に対して水300ccが基準ですから、かなり薄め。これぐらいなら味を損ねることなく、旨味を足すことができます。

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ローリエを何枚か入れます。予備実験で「なくても平気かな」と思ってテストしたのですが、ローリエを入れないと明らかにプロの味ではなくなりました。ローリエには清涼感のある香りと独特の苦味があり、これが肉の臭みを消し、味を引き出しているようです。意外と風味に影響するんですね。

その4 ローリエは多めにいれる

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沸騰したら灰汁をとって弱火落とします。できる限りの弱火です。また灰汁は思いついたらとりましょう。

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鍋の蓋はずらしておきます。蓋を完全にしめてしまうとなかの水分の温度が100度に達してしまいます。蓋をずらせばせいぜい90度くらい。ゆっくりと弱火で煮込むのがジューシーなミートソースに繋がります。

煮込む時間は1時間。ちなみに1時間といっても火をちゃんと弱くしておけば50分くらいはほっておいても大丈夫です。水分があれば鍋の中身は焦げませんから。

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1時間経ちました。鍋が赤いのでちょっと中身が赤っぽく写っていますが、実際はもう少し茶色い色合いです。塩と胡椒で味を整えます。トマトの酸味と肉の旨味がきいたすっきりとした味。あれだけオリーブ油をいれましたが、表面に油が浮いていません。

これで完成、、、と思いますが、実はそうではなく、一度冷ましてください。加熱とともに肉から出た水分が冷ますとともに戻り、柔らかく、ジューシーになります。シチューと同じ原理です。

出来上がったソースを味見してみると若干、コクが足りないかな、と思うかもしれません。たしかにクックパッドのレシピなどに比べれると旨味が足りないかもしれません。しかし、それはこの後パルメジャーノチーズを加えることで解決します

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ちなみにミートソースパスタ。よく茹で上がったパスタにソースをかける方がいますが、それでは本当の美味しさは味わえません。時間の20秒前ほどに茹で上げたパスタを熱々のソースで和えることで、パスタの表面にソースが染み込み美味しくなるのです。

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パルメジャーノチーズを入れて、火を止めます。パルメジャーノチーズはアミノ酸であるグルタミン酸を豊富に含み、天然の味の素のようなものです。「腕の悪いコックと主婦はパルメジャーノチーズを使え」というイタリアの言葉があるように肉のイノシン酸との相性は抜群。グルタミン酸とイノシン酸は旨味の相乗効果があるのです。

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写真は炒めたなすを加えて、ボリュームを出しています。ミートソースづくりは

1 香味野菜も肉も焼き色をしっかりつけること

2 赤ワインはアルコールをちゃんと飛ばしてから、トマトなどの材料を加えること

などの煮込み料理の基本が詰まった料理。基本的な工程をちゃんと重ねることで市販のブイヨンキューブなどに頼らずともおいしい味に仕上がります。また、セロリがなければ玉ねぎと人参だけでも、あるいは玉ねぎだけでも美味しくつくれます。

『それでももっとコクが欲しい』

という方もいるかと思いますので、次回は『応用編 究極のミートソースのレシピ』として、もっとコクのあるプロのレシピをご紹介します。

Text : naoya

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