• キッチン
  • 2014/8/18 05:00:08

サーモンは低温でコンフィをすると滑らかな食感に

魚でも肉でも調理する際に一番難しいのはめざす硬さに仕上げること。

オーストラリア、シドニーに「Tetsuya’s」というレストランがあります。日本人シェフ、和久田哲也氏が創作したオーストラリア食材を用いた料理は世界中から注目され、世界ベストレストランランキングの常連です。彼の有名なスペシャリテに「タスマニアサーモンのコンフィ」があります。

「サーモンステーキの中心のレアな部分、あれをもっと食べたいと思った」と彼は創作のきっかけをこんな風に語っています。たしかに上手につくったサーモンステーキの中心部は柔らかくジューシーです。

それには温度が関係しています。魚のタンパク質は肉とは違い20℃から変成がはじまります。20℃を境にタンパク質の構造がほどけだし、そこに結合している水が離れはじめます。また、コラーゲンもゆるみだします。その変化は温度の上昇とともに進み、45℃を超すと硬くなりはじめます。

和久田シェフのサーモンコンフィは40℃周辺の温度をキープし、まさに『火が通った生』の質感を表現した料理。今日はそんなシェフの料理からインスパイアされた料理をつくります。

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今回はお刺身用のオーストラリアタスマニアサーモンを使いました。マスの仲間で脂肪分がほどよく、密な繊維間が特徴です。まずはサーモンの下ごしらえから。

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深いバットに

水 360cc

塩 36g

砂糖 18g

を準備してよく溶かします。

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45分間、漬け込みます。これを『ブライニング(塩水着け)』と言います。この工程により鮭に均一な下味がつきます。またタンパク質が変成することで加熱した際にきれいにしがります。

以下は参考写真です。

Quick Brine for Prettier Fish | Cook's Illustratedより引用

Quick Brine for Prettier Fish | Cook’s Illustratedより引用

右が塩水処理をしたもので、左がしていないものです。左は白いアルブミンというタンパク質が表面に浮いてしまっているのがわかります。

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とりだしてペーパーで表面の水気を拭き取ります。

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和久田シェフはハーブや塩などでマリネした鮭をバットに並べ、ひたひたのオリーブオイルに浸して蒸気オーブンで加熱していましたが、今回は袋を使います。原理は一緒です。

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オリーブオイルを袋にいれます。これは袋から空気を追い出しやすくするためです。

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40℃の湯につけて、1時間待ちます。このとき、ふくろの口は閉じないようにしましょう。水圧によって空気が追い出されるからです。空気がはいっているとその部分だけ熱が入りません。なぜなら空気は非常に熱伝導が悪いからです。80℃の湯につかれば火傷をしますが、サウナなら平気ですよね。

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鍋に湯を張って、温度計を差し込み、見張っていてもいいのですが、今回はTanicaのヨーグルトメーカーをつかいます。このヨーグルトメーカーは1℃単位で温度調整ができる優れもの。家庭で真空調理をする際に便利です。

電圧が200Vのアメリカでは様々な家庭用の真空調理器が出ていますが、現状日本では業務用のスチームコンべくションオーブンを使うか、ユラボ湯煎器を使うしか方法がありません。家庭用の真空調理器は結構、チャンスだと思うのですが、、、どなたかメーカーの方がいらっしゃればご検討をお願いします。

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さて、一時間経ったので、とりだして冷却します。冷蔵庫で6時間ほど寝かします。この時間でサーモンはさらにしっとりします。ちなみにこの状態で三日ほど保存が利きます。

わさび醤油でもいいのですが、今日はソースを添えてみます。今日はクレソンのピュレにしました。バジルや春菊でもかまいません。

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クレソンを二束用意します。右にうつっているのは『キサンタンガム』です。こういう添加物を使うといよいよ分子料理っぽくなりますが、ただのとろみつけなのでなくても平気です。

食品グレードのキサンタンガムはamazonなどで購入することができます。(参考リンク)常温でとろみをつけられるのが特徴です。

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クレソンを茹でて氷水にとって色止めします。

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茹でたクレソンに少々の水と氷を入れてミキサーにかけます。氷をいれるのは攪拌することで温度が上昇することを防ぐためです。

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この状態ですとさらさらしているので、キサンタンガムと塩2gを加えてさらにミキサーを廻します。キサンタンガムはスペインではチャンタナと呼ばれていますが、グルテンフリーのとろみつけ材料としてよく使われています。天然由来の食品添加物で、安全性も証明されています。キサンタンガムは入れすぎないように、材料の1%ほどを目安に使います。

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ソースができあがりました。キサンタンガムをつかった理由はこの鮮やかなグリーンを長持ちさせるためです。もし、キサンタンガムがなければ片栗粉などでとろみをつけた水とクレソンをミキサーで廻せばいいだけのことです。

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サーモンはしっとりと火が入っています。まさに火が通った生の状態。滑らかなテクスチャーです。表面の油はペーパーで拭き取りましょう。ちなみに油はオリーブオイルを使いましたが、なんの油でも大丈夫です。コンフィの説明によく『コンフィにすることで肉などに油がしみこんでしっとりする』という説明がかかれていますが、油の分子はかなり大きいので材料のあいだに入り込むようなことはありません。

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サーモンには火が入っているので、ナイフをいれるとほろりと崩れます。しかし、あくまでやわらかい食感。

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和久田シェフは塩昆布で味をつけますが、今回は塩漬けにした胡椒をふりました。塩レモンでもいいですし唐辛子などもあいます。

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さて、盛りつけです。中心にクレソンのピュレを敷き、

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つけ合わせにはセロリのサラダを添えました。刺身につまが必要なようにシャキシャキした食感の野菜があると魚の味が引き立ちます。また魚の旨味、クレソンソースの甘みに、酸味を加えたいという理由もあります。

セロリでなくても大根の千切りでもいいでしょうし、アンディーブ、白菜などもあいます。野菜は塩、こしょう、レモン汁、オリーブオイルで味付けしました。

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サーモンをのせます。ソフトな食感のサーモンにしゃきっとしたサラダ、甘みのあるクレソンのピュレがあって、あとは足りないのは香り。なのでフェンネルというハーブを添えることにしました。バジルやセルフィーユ、あさつきなどでもいいでしょう。

他の盛りつけパターンとしては

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こんな感じ。いずれにせよ皿の余白を活用するのが最近の流行です。滑らかな食感のサーモンは40℃で加熱し、高くても55℃を超えないようにすること。これを憶えておけば他の魚を調理するときにも応用できます。

追記

時々、質問を受けるので、安全面について補足しておきます。レアに調理した魚(47度以下)で調理した魚はパスチャライズはされていないので、すべての種類の食中毒菌を殺菌できてはいませんが〈調理時間が2時間以内であれば魚を生で食べるよりも悪い結果は引き起こさない〉(Cooking for geek)という記述があるとおりに生食用の魚を扱うのと同じように注意すれば大丈夫でしょう。

もちろん、腸炎ビブリオの危険性は常にあるので、沿岸部の高温の水域に棲む魚(シイラやカツオなど)を皮付きのまま(腸炎ビブリオは海水に生息しているので表面に付着します)低温調理するのは避けるべきです。したがって試すときにはレシピ通り、刺身で食べることができる新鮮な生食用のサーモンを使うようお願いします。

Text : naoya

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