• キッチン
  • 2013/7/1 05:00:37

完璧なポーチドエッグの作り方〜21世紀料理教室 その1〜

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世界の料理界はここ十年で大きく変わりました。
分子料理学という言葉の登場もそのひとつ。この言葉を聞いて、みなさんはどんなことを想像しますか。エルブリのような奇抜な料理? たしかにこれらも一例ではありますが、じつは分子料理学とはもっと身近なものなのです。

この言葉は1992年に〈伝統的な料理を科学的に分析する〉研究会で生まれました。名付け親はハンガリーの物理学者ニコラス・クルティ。後にフランスの化学者、エルヴェ・テス博士らによって世界に広まりました。

分子料理学とは簡単にいうと『これまでざっくりとしか見てこなかった料理を細かく調べてみましょう』という学問です。分子料理学を積極的に取り入れているイギリスのシェフ、ヘストンブルメンタールさんは著書「Heston at Home」(未邦訳)のなかで、こんな風に語っています。

  私は十六歳の時から料理にのめり込んだ。両親にミシュランの三つ星レストランに連れていってもらったり、本からクラシックなフランス料理を学んだ。それもチキンストック(*鶏の出汁)のような基本的なものは、よく知られている作り方からそうではないものまで、次から次へと様々なレシピを試した。  なぜかって? 私には疑問だったからだ。あるシェフは鶏の手羽をローストしてから四時間煮出していた。別のシェフは鍋に鶏ガラと首肉と水を一緒に入れて、一時間半煮出していた。料理人やレシピの数だけ作り方があるのだ。さて、どのやり方が正しいんだろう?
(中略)
一度、このような『料理の疑問』の答えを知ると、もはやレシピに盲目的に従う必要はなくなる。そうすると料理を楽しめるようになる。そして、べつの料理にもその原理を応用できるようになり──つまり、料理が上達するのだ。

分子料理学はまさにこの『料理の疑問』の答えを知る方法。料理が上達する近道です。ちなみにヘストンさんがこの本のなかで紹介しているのはフライドポテトやオニオンスープ、ローストチキンといったごく普通の料理ばかり。ごく普通の料理もちょっとしたコツで、見違えるほど美味しいものになります。そして、この『ちょっとしたコツ』を検証したり、新しく見つけたりするのが分子料理学なのです。

二十一世紀の料理教室ではそんな分子料理学を踏まえた、最新の料理法をお教えします。

その1 『ポーチドエッグ』

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ちょっとしたブームのエッグベネディクトは、欧米ではブランチメニューの定番の卵料理です。トーストしたマフィンにポーチドエッグ、ベーコン、オランデーズソースをかけるのが一般的。オランデーズソースについてはまたいつか別の機会にご紹介しますが、今回はポーチドエッグの話。

ポーチドエッグは日本風で言うと『落とし卵』学校の家庭科の時間にやった、という人も多いみたいです。でも、ときには酸っぱくなってしまったり、白身が破けて黄身が流れてしまったり、となかなかきれいにできかったりしますよね?

多くのレシピにはこんな風に書かれています。

 鍋に湯を沸騰させ、酢と塩を加える。スプーンなどで鍋の湯をかき混ぜて、水の渦をつくる。火を弱めて、卵を一個割り入れる。湯の中で形を整え、好みの加減まで火が通ったら、穴じゃくしですくい上げる。

でも、このやり方は分子料理学的には最適とは言えないようです。前述のイギリスのシェフ、ヘストン・ブルメンタールさんはチャネル4のサイトで「完璧なポーチドエッグ」の作り方を紹介しています。

 水に渦を作ったり、酢を足したり・・・・・・ポーチドエッグをつくるにはたくさんの方法があります。私のやり方はとてもシンプルです。それはとにかく新鮮な卵を使う、というもの。新鮮な卵なら穴じゃくしで水様卵白を楽に取り除けますし、白身がしっかりしているので湯のなかで散らばることはありません。

ヘストンさんの作り方は以下の通りです。

 鍋に15㎝〜20㎝のお湯を張り、塩を大さじで一杯ほど加えます。鍋の底に皿などを沈めて(*鍋肌に卵がくっつくことを防いでくれます)、湯の温度を温度計をつかって80度に調整します。(*温度計があると作業がしやすいです)
先に常温の卵(*写真で使用したのはM玉)を小さな皿やボウルに割り入れ、スプーンや穴じゃくしなどで水様卵白を取り除きます。
卵をさきほどの鍋の湯に投入します。加熱時間は四分間。出来上がったらキッチンペーパーなどにとって、水を切ります。塩と胡椒で味付けして召し上がってください。

ヘストンさんのレシピ通りに、実際につくってみたのが上の写真です。卵を入れても湯の温度はそれほど下がらないので、八十度であることを確認してから火は消しました。卵を入れるときに鍋底にくっつかないように注意して、卵が少し固まったらスプーンなどで浮かせれば鍋の底に皿は入れなくても大丈夫です。
完璧な仕上がりです!
白身はやわらかく、黄身はとろとろ。沸騰直前のお湯で茹でる作り方よりも、白身がソフトであることが写真からもわかると思います。

ちなみに、この作り方はハロルド・マギーさん(分子料理学の会議メンバーでもあった著名な科学系フードライター)が『マギーキッチンサイエンス』で紹介しているものとほぼ同じです。

いずれにせよポイントは八十度の湯で調理することと、新鮮な卵を使うこと、それと水様卵白をとりのぞくことです。日本で市販されている卵はかなり新鮮なので、購入してからそれほど日数が経ってなければ、湯のなかで十分にまとまります。

余談ですが、この水様卵白をとりのぞくというテクニックはきれいな目玉焼きを作りたいときなどにも応用が利きます。

朝ご飯などにいかがですか?

(via:heston at home(Chanel 4「How to Cook Like Heston」))

(*訳者注)

Text : naoya

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