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  • 2017/1/18 05:00:45

のどが渇きを感じて水を飲む、そして飲むと割合すぐに満足するメカニズムがわかり始めた

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photo by Shubhojit Ghose

のどに渇きを感じて水を飲む、飲むと満足する。自然なことですが実はそこには未だ解明されていなかった人体の不思議がありました。最近、この喉の渇きと水分補給に関するメカニズムを解明しつつある研究(まだ全てはわからない)が発表されたのでご紹介。

「のどに渇きを感じて水を飲む、飲むと満足する」ごく自然のことのようですが、不思議なことがいろいろあります。人間の体は口から肛門までチューブ状になっていて、物理的なことでいえば食べ物は口から入って必要な栄養素が吸収されたのちに肛門が出て行く比較的シンプルなメカニズムです。一方、口から入った水は、胃を経由してほとんどが小腸から吸収されて血液に取り込まれ、体のあちこちに運ばれたのちに血液中の老廃物とともに腎臓でろ過されて尿として排泄されます。つまり口に入った水が、チューブを通ってそのまま尿として排出されてはいないのです。「ミルク飲み人形」は誤った理解なんですね。

渇きを感じて水を飲んでも小腸に到達して吸収されるには5〜15分程度の時間がかかるのだそうです。さらにそれが満足感につながるまでには時間がかかることが想像されます。ところが感覚的なところでは水を飲むとほぼ同時にある程度の満足感がえられます。この時間差の正体とは何でしょうか。

「Nature」の2016年9月26日号に掲載された論文によれば、渇きに応答して、予期して水分を調整している脳の領域があるということがマウスを通してわかってきたのだそうです。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(アメリカ)のChristopher A.Zimmermanさんとマギル大学ヘルスセンター研究所(カナダ)Claire Gizowskiさんはマウスで渇きの予期にかかわるニューロン(神経細胞)を明らかにしたとのこと。

内臓の制御をつかさどる脳の中枢−−視床下部と呼ばれる間脳の領域が、喉の渇きにも関係があるということは1953年の研究で示唆されていたそうですが、さらにこの視床下部に関連する領域を調べていくと脳室周囲器官(CVO)が関わっていて、ここが体の水分バランスが乱れると脳に伝達しやすい仕組みがあることがわかってきたのだそうです。

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脳室周囲核(右) 出典:ヒューマン・アナトミー・アトラス2017

研究チームは、この脳室周辺器官の一部となる脳弓下器官(SFO)のニューロンという神経細胞が渇き調整に関わっていることをつきとめました。それは水分バランスが崩れ喉が渇いているとSFOニューロンの活動が強くなり、水分バランスが回復するとSFOニューロンの活動が抑制されるということです。そして喉が渇いたマウスに水を見せるとすぐに水を飲み始めるものの、飲み始めるとすぐにこのSFOニューロンの活動が顕著に抑制されることもわかったのだそうです。

水を飲むとすぐに渇きが癒されると感じるのは、この神経細胞のはたらきによるものなんですね。そして渇いているとき水の摂取は大事ですが、とりすぎると逆に健康を害することがあります。仮に水が小腸に届くまでの5分間、水を飲み続けるようなことがあれば危険なケースもあるかもしれません。以前、アメリカの水飲みコンテストで7リットルの水を飲んで過剰症で命を落とした女性がいたことが思い出されます。水だって飲み過ぎは危険なんですよね。SFOニューロンが水を飲み始めると直後に活動が抑制されるというのは、水の過剰摂取をあらかじめ回避する機能ともいえそうです。

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脳弓下器官(SFO) 出典:ヒューマン・アナトミー・アトラス2017

ちなみに視床下部で「飢え」をつかさどる神経細胞は、マウスが食べ物を見たり、食べることを予期するとその時点で応答(活動が抑制する)するそうですが、SFOニューロンについては水を見るだけだったり、また水の入っていない容器をマウスになめさせても変化がなく、あくまでも水を飲んだときにだけ活動が抑制することがわかってきました。

研究チームは喉が渇いたマウスに食塩水を飲ませたらSFOニューロンはどう応答するか、さらに実験したそうです。というのも、食塩水なら水は飲めるものの、体の水分のバランスは回復しないからです(なんと秀逸なアイディア)。するとマウスは水を飲ませた直後は一旦、活動は弱まるものの、すぐに元どおりになったそうです。ここからSFOニューロンの活動は水分の摂取と浸透圧の両方に関わりがあることもわかりました。

Glass of water - El Loro Mexican Restaurant

Glass of water – El Loro Mexican Restaurant

さらに食事のときに、食べたもので血液成分が変わる前にSFOニューロンの活動が上昇することもつきとめたそうです。私たちが食事のときに飲み物を飲む何気ない行動であり食文化には実は神経の働きが関わっている側面も大いにありそうですね。

研究チームは上記以外にも、一日を通して体の水分のバランスが崩れないような水分摂取のメカニズムなどにもこの神経の働きが深く関わっていることをつきとめています。

記事を読んでいたらなんだか喉が渇いてきた!この冬、風邪の予防にもこまめの水分補給は大切ですよ。SFOニューロンの活動を感じたら水分補給をお忘れなく。


参考情報:体が水分バランスを予測する仕組み | Vol. 13 No. 12 | Nature ダイジェスト | Nature Research: http://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v13/n12/%E4%BD%93%E3%81%8C%E6%B0%B4%E5%88%86%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%92%E4%BA%88%E6%B8%AC%E3%81%99%E3%82%8B%E4%BB%95%E7%B5%84%E3%81%BF/80884#.WH5Zvd7nJns.twitter

Text : motokiyo

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