• 食事情
  • 2017/5/24 05:00:10

赤道をこえても腐らない?おいしい水のために森を育てる仕事

飲食物が「赤道通過に耐えられるか否か」は近代の太平洋を横断する船乗りとっては大きな課題でした。この船乗りたちに「赤道をこえても腐らない」と賞賛された水がいくつかあります。そのひとつが横浜の水です。横浜という港町でどのように高品質の水を作ることができたのでしょうか。

話は横浜開港の時代までさかのぼります。開港前までは小さな村だった横浜は、一気に人口が増加しますがわずかな井戸しかなく、しかも埋立地として拡張してきたこともありそのわずかな井戸も塩分を含んでいたりと飲料水としては適しているものではなかったのだそうです。そこで当時の神奈川県知事がイギリス人の技師ヘンリー・スペンサー・パーマーを招聘して近代水道の開発に乗り出します。パーマーは建設依頼を受けて実地調査に乗り出し、多摩川取水計画と相模川取水計画の2つを立案。そして1885年に相模川の三井から取水する工事に乗り出します。横浜まで全長48kmにわたって土地の傾斜のみを利用した水道管を敷き水を運ぶ近代水道の工事を2年間で完了し、1887年10月に日本初の近代水道が誕生します。

その後、さらなる人口増加に対応するために取水地点を相模川から道志川に移します。2度による拡張工事とともに1916年には山梨県道志村の山林を購入。水源林の管理・保全をはじめ、現在に至っています。山梨の山奥に横浜市の土地があるというのは不思議な感じがしますね。

下の映像は道志水源林を取材した映像です。

場所は山梨県南都留郡道志村。中央高速道路の相模湖ICでおりて国道413号線で新宿からだと空いていれば2時間弱の場所です。413号線をそのまま富士山に向かえば山中湖に通じる道すがらに水源林の入り口があります。

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水源林の入り口には大きな石碑が立っていました。413号線から水源林への道はウッドデッキ的に整備されて誰でも入ることができるようになっています。

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林に入るとヒノキが生えていたり、

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また少し歩くと樹皮がまだらになっている木々がたくさん生えています。この模様のある木々はみんな橅(ブナ)なのだそうです。

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教えてもらいながら見て回ると、何十という種類の樹木が生えています。針葉樹もあり落葉広葉樹林もあります。木はその土地にあったものが成長するのだそうで「適地適木(てきちてきぼく)」と呼ぶのだそうです。

そしてこの林の中にはたくさんの沢があります。だいたい150にも及ぶ沢は雨の降らない冬でも枯れることがないのだそうです。その仕組みは模型で教えていただきました。2つのトレイの左側は土だけ、右側は針葉樹と広葉樹が植わっている道志川水源林のモデル的なトレイとします。上から2リットルの水をジョウロでかけると・・・

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左側は側面にある2つの管の上の管から勢いよく泥水が流れ出ますが、針広混合林のトレイは上下の両方の管から少しずつ澄んだ水が少しずつ流れているのがわかります。これがこの水源林で起こっていることなんだそうです。脱帽モノのわかりやすさ。これだけ拝見するとダムを作るよりも水源涵養林を育てる方が良いのではないかという気がしますが、実際にはもっと時間がかかることでした。道志川水源林の取り組みについてこんなことを教えてくれました。

「間伐がして、枝落ちがしてあって、下草が生えて、倒した木は自然に20年30年50年という間で腐っていく。そうするとその中で微生物が働いて地中を豊かにする。そして雨が降ればその中に染み込んで浄化されながら・・・こういうスパン。ですからこの森づくりというものは、我々現場の職員というものは30年50年先の山を想像します。」

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道志川水源林に入って10m程度歩くと写真上のような看板が掲げられています。これは「水と緑、風が吹いて時が巡って未来を育んでほしい」という願いを込めて建てられたもの。100年先に思いを馳せながら森を見守り、森を育む。そんな仕事が美味しい水道水を支えているんですね。

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さて横浜まで運ばれたパーマーの近代水道のゴール地点は野毛山公園(旧野毛山配水池)分水池。ここから赤レンガ倉庫やホテルニューグランドなど開港後の横浜の発展を支えた数々の拠点と、住民に水道水が届けられて、100年以上経過した今もなお現役です。

野毛山公園に行くと1987年に横浜水道創業100年を記念して建てられたブロンズ胸像を見ることができます。野毛山公園に行くとつい動物園に行ってしまいがちですが、入り口を挟んでちょうど反対側(交番のある側)にわたると分水地も見ることができます。

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野毛山公園にあるヘンリースペンサーパーマーの像

さて赤レンガ倉庫のフードコート内に、三菱ケミカル・クリンスイ株式会社の提供する給水機が置かれています。100年以上にわたって育まれ48km運ばれてきた道志水源涵養林の水道水を飲める場所です。昨今、水道水は品質が取り糺されますが、横浜に関して言えばむしろ家屋・建築物内の老朽化した水道管などから発生する赤サビなどが品質劣化に関わっているようです。クリンスイの中空糸膜フィルターで水を磨くと道志川本来の水が味わえそうですね。

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Text : motokiyo

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