• 食事情
  • 2017/5/1 05:00:45

食の仕事人第44回 山椒は緑の宝石

食の仕事人タイトル

山椒は海外のシェフからも注目される日本のスパイス。その秘密を探るべく、和歌山県の老舗、山本勝之助商店を訪れ、土田高史さんと販売を担う乾物店「うおくに商店」の見澤良隆さんからお話を伺いました。

「山本勝之助商店は今から130年前、明治13年に山本勝之助が創業した山物屋です。山物屋というのは聞き慣れない名前かもしれませんが、山の恵みを集め、売ることを生業としてきました。私たちは四代目に当たり、当時から山椒や棕櫚(シュロ)のほうきなどを売っていました。今は輸入が増えたことなどもあって山物屋の数も減り、このあたりではうち一軒くらいしか残っていません」

P1170826 2.jpg

「うちだけなんて偉そうなことを言うてますけど、三代目で廃業の危機があり、ほぼ辞めようかなというところでした。ですけれど『せっかく地元にいいものがあるのだからわたしたちの代でもう一度、見なおしてもらえるよう努力しよう』ということで、こうして細々と商売を続けさせてもらっています」

和歌山は全国の山椒の生産量の7割を占める一大生産地。他にの産地とは品種から違うのだそう。日本には香りの穏やかな朝倉山椒とぶどう山椒の二つの品種があり、和歌山で主に育てられるのは後者。ぶどう山椒は粒が大きくぶどうのように房になることが特徴。香りはみかんのような柑橘系で、刺激は強めです。

生産現場を案内していただいきました。深い緑に覆われた山の斜面に、山椒の木が等間隔に植えられています。82歳になる生産者の畠中さんは奥さんと二人で山椒畑を手入れしているそう。

P1170387 2.jpg「(82歳という年齢は)このあたりでは普通。平均年齢70代やから」

そう冗談めかして仰っていましたが、山椒の木が植えられているのは斜面なので手入れは大変な作業です。山椒は根が浅く繊細な植物で、栽培には神経を使いますし、ぶどう山椒の木は棘があり、これも作業の妨げになります。

「斜面であるということも水はけの良さという点で重要なんです。というのも山椒の木は根が浅くデリケートで、病気などにも弱い。ここから高野山に向かう真っ直ぐな山嶺にはずっと山椒が植えられています。お盆くらいまではずっと収穫のシーズンです」

P1170420 2.jpgと土田さん。山椒は小粒でもピリリと辛い、といいますが、実際に見るとぶどう山椒は大きいです。よくみると表面はみかんのようで、山椒の木がミカン属の植物であることを想起させます。実をつまんで食べると目が醒めるような鮮烈な香りとほっぺたの内側までしびれるほどの刺激が広がりました。

「海外の方からも高評価をいただいておりまして、スイーツなどにも使ってもらっています。でも、生産農家の平均年齢が非常に高く、後継者問題は大きな課題です。そもそも山椒の木は寿命が10年ほどなので、新しい木を植えていかなければいけません。しかし、利益にもならず、跡継ぎがいないとなれば、どうしてもやめてしまおうという話になります」

一度、途切れてしまうと技術継承も難しくなりますし、山椒の収穫は手作業でしかできない。細い道を手押し車で運ぶのだが、収穫時期が短いので、一気にやらなければならない、という点でも大変な労働です。

「最後のチャンスというか、これから5年が勝負と言われています。そうした意味でもできるだけ多くの方に山椒を使っていただければ」

石臼でひかれた山椒は美しい緑色。辛味や刺激よりも引き込まれるような香りが印象的でした。

取材後記 木を植える人

山本勝之助商店の店内に張られていた賞状にこんな文面があった。「国家百年の計は山に木を植えるにしかず」

なるほど木を植えることは未来にバトンを渡すこと。よい食べ物を買い、おいしい食べ物を味わうことは、この尊い食べ物を未来へと繋げることでもあるのだ。

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して食育通信onlineは一切の責任を負いません。

ページ上部へ
ツールバーへスキップ