• 食事情
  • 2017/3/23 05:00:09

新橋名物『切腹最中』物語vol.3 〜変化を恐れずチャレンジを

新橋名物『切腹最中(せっぷくもなか)』で知られる新正堂(しんしょうどう)。大ヒット商品の生みの親である三代目、渡辺仁久(よしひさ)社長の指揮の下、製造現場を取り仕切っているのが、専務取締役で息子の渡辺仁司(ひとし)さんです。近い将来、四代目になるという仁司さんにお話を聞きました。

 

1985年生まれの仁司さんは、新橋生まれの新橋育ち。今年で32歳になります。物心ついたころから、なんとなく将来はお菓子屋さんになるんだろうな、と思っていたそうです。

 

仁司さんは和菓子業界でもかなりの若手。お客さんに「おいしい!」と言ってもらいたい一心で毎日頑張っています。

仁司さんは和菓子業界でもかなりの若手。お客さんに「おいしい!」と言ってもらいたい一心で毎日頑張っています。

 

「プロ野球選手になりたい、というような男の子によくある夢もなかったんです。周囲の大人たちから、『よかったわね、男の子が生まれて』とか『将来はお菓子屋さんになるんでしょ?』とよく言われていたので、『あ、なるんだな』と思っていました(笑)」

 

しかし、子供のころは、和菓子はそんなに好きではなかったそうです。

 

「昔、新正堂は、洋菓子と和菓子の両方を作っていた時期があったんです。学校から帰ってくると、好きなお菓子を一つ食べていい決まりになっていたのですが、洋菓子ばかり選んで食べていました」

 

しかし、仁司さんは、高校進学のときに和菓子屋になると決め、食品について学べる高校に進学しました。

 

「畑を耕して、野菜を作ったり、パンを作ったり、菌を培養したり、食品科学についていろいろ学べる高校でした。でも、和菓子についても学べると聞いて進学したのですが、和菓子の授業はたったの二回だけだったんです(笑)」

 

そこで仁司さんは、高校卒業後、製菓学校に進学し、本格的に和菓子作りの基礎を学び、卒業後は、埼玉県にある梅月堂に就職します。

 

「学校に求人が出ていたお店のお菓子をかたっぱしから食べていって就職先を決めましたね。梅月堂はおいしかったんです(笑)。新正堂では作っていなかった生菓子系が多かったこと、小生産多品目のお店だったことも決め手になりました。だんご、さくらもち、かしわもち、くさもち、正月の鏡餅など、いろいろ学ばせてもらいました」

 

三年間の修業を経て、仁司さんは新正堂に入社します。

 

「本当はもう一軒くらい修業しようかなと思ったんですけど、社長が『忙しいから戻ってきてくれ』と珍しく弱気なことを言うので、それじゃあ、と(笑)」

 

入社してからは、当時製造を仕切っていたベテランの職人さんに付いて、新正堂のお菓子を勉強する日々でした。

 

「その職人さんは、おじいさんの大ベテランで、その人のおかげで新正堂の味が受け継がれていました。でも、仕事は見て覚えろ、という時代の人でしたから、目分量でどんどんお菓子を作っちゃうんです。それで、『そこ、ちょっと待って! 計らせてください!』ってお願いして(笑)。まずはお菓子のレシピを起こすことから始めました。職人気質とはいえ、やさしく教えてくれたのでよかったです(笑)」

 

02製造現場(本文用)

お客さんでにぎわうお店の裏で、みなさん、一生懸命お菓子を作っています。

お客さんでにぎわうお店の裏で、みなさん、一生懸命お菓子を作っています。

 

こうして新正堂のお菓子をマスターし、製造現場を取り仕切るまでになった仁司さんは、今、どんなことを思っているのでしょうか。

 

「三代目で『切腹最中』という大ヒット商品が生まれました。当分は、このヒット商品の味は変えずにいこうと思っています。その代わり、その他の商品、どら焼き、団子、大福などは、僕が根本から変えたんです。あんこは、豆の粒がしっかり残るように炊いて、甘さを控えています。どら焼きの皮も、昔はわりとしっかりした皮だったのですが、ふわっとやわらかい質感の皮に変えました。今はクルミに黒糖をかけてきなこをまぶした新しいお菓子を開発中です。やっぱり新商品を考えるのは楽しいですね。みんながいろいろ意見を言ってくれるので、それを取り入れたりしながら、試行錯誤しています。どんどんチャレンジしていきたいんです。みんなも試食を楽しみにしてくれていますから(笑)」

 

一方、商品のパッケージもいろいろと考えています。先月のバレンタインでは、『切腹最中』のラベルにキスマークを付けて、『接吻最中』と謳ったところ、これまた大ヒット。お店のフェイスブックでも反響が大きかったそうです。

 

「バレンタインの四日前に突然思いついたんです。社長に話したら『おもしろい!』と言ってくれて。姉がすぐにポップを描いて、キスマークのスタンプも作ってくれました」

 

04接吻最中(本文用)

05接吻最中2(本文用)

今年のバレンタインデーに、期間限定で登場した『切腹最中』ならぬ『接吻最中』!? 『切腹最中』にキスマークのスタンプを押すというアイディアで、話題沸騰、これまたヒットしました。今後、バレンタインには毎年登場することになるのでしょうか?

今年のバレンタインデーに、期間限定で登場した『切腹最中』ならぬ『接吻最中』!? 『切腹最中』にキスマークのスタンプを押すというアイディアで、話題沸騰、これまたヒットしました。今後、バレンタインには毎年登場することになるのでしょうか?

 

こうしたフットワークの軽さも、小さなお店の良さです。アットホームな雰囲気の中で、さまざまなアイディアが生まれます。『接吻最中』には、『切腹最中』を考案した仁久社長のセンスが受け継がれているのを感じます。それを伝えると、仁司さんは少し照れくさそうにこう答えました。

 

「たしかに社長の感性と似ている部分はあると思うので、うまくそれを使って行こうかなって思っています(笑)。とにかく旨いお菓子を、という社長の考えは、僕も受け継いでいきたいですね。新正堂のように小さなお店は、値段では勝負できません。やはりおいしさが重要だと思うんです」

 

仁久社長(右)から仁司さんへ、新正堂のカラーが受け継がれていきます。

仁久社長(右)から仁司さんへ、新正堂のカラーが受け継がれていきます。

 

これからは社長に変わって取材を受けなければいけないことが増えるのではないですか、と聞くと、今度は少し困惑気味に答えます。

 

「そうなんですよねぇ。まだ、うまくしゃべれないんですよねぇ。わはは! 社長はあれだけ流暢になんでもしゃべれる人なんですけど……。やっぱり場数ですかね?(笑)」

 

休日には、気になるお店のお菓子をいろいろと食べ歩いているという仁司さん。和菓子の追求はこれからも続きます。どんどん場数を踏んで、新正堂の新たな時代を作っていってください! 応援しています!

 

08外観(本文用)

 

「新正堂」のホームページはこちらです http://www.shinshodoh.co.jp/

 

Text : harumi

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