• 食事情
  • 2017/3/16 05:00:25

新橋名物『切腹最中』物語vol.2 〜和菓子は「旨い!」が大事

1912(大正元)年創業の老舗の和菓子店、新正堂(しんしょうどう)。お店はかつて、忠臣蔵の浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が切腹したお屋敷の跡地にありました。それにあやかって考案した『切腹最中(せっぷくもなか)』は、新橋名物として多くの人に親しまれています。この大ヒット商品の生みの親、三代目の渡辺仁久(よしひさ)さんに、和菓子屋として大切にしていることを聞きました。

 

渡辺仁久社長

渡辺仁久社長

 

『切腹最中』は、和菓子の常識を覆した商品でした。「和菓子は縁起がいいもの」とされる中で、お世辞にも縁起がいいとは言えないネーミング、そして中身のあんこが丸見えの意匠……前例のない最中は、絶対に売れないと回りからは言われました。ところがこれが大ヒットしたのです。この経験から渡辺さんはいろいろな学びがあったと言います。

 

「和菓子屋の世界には『味を変えるとお客が逃げる』という格言があります。それを信じていたころもありましたが、今は味を変えてもいいと思っているんです。実際に、あんこなどの味は、こっちのほうがおいしいと思えば、変えています。文句を言うお客さんはいません。『切腹最中』がヒットした経験から、常識は変わっていくんだなと実感できました。『味を変えるとお客が逃げる』というのは、ただ守らなければという、昔の和菓子屋の逃げ口上だったのではないかなと思います(笑)」

 

ぱりっと香ばしい皮でたっぷりのあんこを挟んだ『切腹最中』。皮とあんこの相性が抜群でとにかくおいしいです。

ぱりっと香ばしい皮でたっぷりのあんこを挟んだ『切腹最中』。皮とあんこの相性が抜群でとにかくおいしいです。

 

では、変化を恐れなくなった渡辺社長が大切にしていることは何なのでしょうか?

 

「和菓子屋をやっている以上、旨いのはあたりまえなの。旨くなきゃいかんから、そのためには材料の情報を持っていないとだめ。知らないと取り寄せられないもの。その上で材料の吟味をしっかりやる。和菓子は日持ちがしないと言われるけど、極論、日持ちは考えなくていい。とにかく旨いかどうか。これが大事。だって、日持ちしなくても、旨きゃ売れるんだよ。日持ちするものは、そういうノウハウを持ったところが作ればいい」

 

新正堂は小さなお店。少人数で丁寧にお菓子を作っています。だからおいしいんですね。

新正堂は小さなお店。少人数で丁寧にお菓子を作っています。だからおいしいんですね。

 

そんな渡辺さんは、そう遠くない将来、息子さんにバトンを渡すことを考えています。

 

「5〜6年したら、四代目に継がせてもいいかなとは思っている。そう彼にも伝えてあります。あとは決断するかどうかですね。三代目で『切腹最中』というヒット商品が生まれました。少しは余裕ができたので、四代目はチャレンジしていいと思う。とにかく旨いものを作り続けてほしい。そのためにも、やっぱり謙虚さを忘れずにやってほしいですよね。ただ菓子だけを作る人間ではだめです。自分の立ち位置を考えながら、人に任せるところは任せるようにしないと、動かないなと思います。私も何でもかんでも自分でやろうとした時期があったんですよ。小さな会社ですから、壮大な事業計画とかはないんです。そんなに店を増やさなくてもいいと思うので、骨太な店作りをしてほしい。あとは、遊び心を忘れずにやりなさいよ、と思いますね」

 

渡辺社長が婿養子として新正堂に来た1970年代中頃、港区芝には46軒の和菓子屋があったそうです。それが後継者不足の影響で今では12軒に減ってしまいました。そんな中、渡辺社長からバトンを受け取る四代目はどんなことを思うのでしょうか。次回は、息子の渡辺仁司(ひとし)さんにお話を聞きます。お楽しみに!

 

仁久社長(右)と仁司さん(左)。親子でツーショット!

仁久社長(右)と仁司さん(左)。親子でツーショット!

 

05外観(本文用)

 

「新正堂」のホームページはこちらです http://www.shinshodoh.co.jp/

 

Text : harumi

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