• 食事情
  • 2017/2/23 05:00:47

一丁入魂! 三善豆腐工房が育む地域の輪 vol.3 〜人間味のある商売を次世代へ

東京都墨田区京島の三善豆腐工房(みつよしとうふこうぼう)は、丁寧に手作りした豆腐で地域の人々に親しまれている町のお豆腐屋さんです。社長の平田慎吾さんは、昨年から東京都豆腐商工組合の理事に就任し、豆腐業界の未来のためにも尽力しています。そんな平田さんは、今、何を思うのか、町の豆腐屋の現状と未来を聞きました。

 

1963年生まれの平田さんは今年で54歳になりますが、豆腐屋の経営者としては若い方に入ってしまうと苦笑い。サラリーマンをしていましたが、30歳のときに会社を辞め、家業を継ぎました。

1963年生まれの平田さんは今年で54歳になりますが、豆腐屋の経営者としては若い方に入ってしまうと苦笑い。サラリーマンをしていましたが、30歳のときに会社を辞め、家業を継ぎました。

 

昭和30年代には日本全国に5万軒を超える豆腐屋があったといいますが、今は7000軒程度といわれています。減少傾向は、東京の豆腐屋も同じです。平田さんはいいます。

 

「東京は、ピーク時には組合に入っている豆腐屋だけで3000軒あったんですね。今は組合に入っているのは250軒、入らずに営業しているのは300軒くらいで、合わせて500〜600軒というところでしょうか。組合でアンケートを取ったところ、後継者が決まっているところは2割程度。東京オリンピックが来る前に東京の豆腐屋は100軒を切るのでは、といわれています。墨田区に限っていうと、全盛期に100軒、今はたったの7軒です。7軒のうち、50代の経営者が、僕とあともうひとりの2人だけ。残り5人は後期高齢者ですから……」

 

高齢化と後継者不足は深刻のようです。それでも平田さんは、町の豆腐屋という仕事をなんとしても次世代に繋げたいと考えています。

 

「そのためにも、豆腐屋の商売を、魅せられる仕事にしていかないと。大変な仕事だけど、ちゃんと生活できて、人から喜ばれる仕事なんだ、ということを見せていかないといけない。その自信はあるんですよ。個人商店が生き残っていくためには、多少高くてもその分価値のあるおいしい豆腐を作っていくしかない。そしてそれをきちんと消費者に伝えていかなければいけません。でも、町の豆腐屋さんは、お客さんに伝えるのが得意じゃない人が多いんです(苦笑)」

 

平田さんは、豆腐の魅力を伝えるために、豆腐作り体験などの食育のイベントを企画しています。また、組合の理事として、豆腐業界の活性化のために、全国豆腐品評会(2017年は9/30、10/1の2日間にわたり、東京で開催予定です)の運営にも携わっています。こうしたイベントや自らの商売を通して、消費者に対してはどんなことを伝えたいのでしょうか。

 

「スーパーに売っている安いお豆腐と、うちのようにちょっと高いお豆腐と、両方あっていいと思うんです。ただ、値段以外のところで、味の違いを消費者にはわかってほしい。それを知った上で、その日の使い道に合わせて、上手に使い分けてもらえたらいいなと思います。そのためにも、消費者には豆腐のことをもっと知ってもらえるよう、こちらから伝えていかなければならないと思っているんです。最近は木綿と絹の違いを知らない消費者も多いんです。これは問題だと思うんですね」

 

02絹豆腐A(本文用)

三善豆腐工房の絹豆腐。平田さんの豆腐は、他店に比べて濃厚な豆乳で作っているのが特徴で、厳選した大豆の味と香りをしっかりと感じられます。一丁220円も納得の味わいです。

三善豆腐工房の絹豆腐。平田さんの豆腐は、他店に比べて濃厚な豆乳で作っているのが特徴で、厳選した大豆の味と香りをしっかりと感じられます。一丁220円も納得の味わいです。

 

消費者にきちんとお豆腐を伝えるという点で、車の移動販売は効果があったと、平田さんは考えています。

 

「使う大豆によって、作り手によって、これだけ豆腐の味は違うんだということを、きちんと伝えた結果、理解してくれるお客さんが生まれた。そういうお客さんが繋がって、今も商売が続けられているんです。お客さんも若い世代に引き継いでいかなければならないですね」

 

04移動販売A(本文用)

移動販売の様子。心の通った商売を通して、人から人へ、若いお客さんにもきちんとお豆腐の味を伝えています。

移動販売の様子。心の通った商売を通して、人から人へ、若いお客さんにもきちんとお豆腐の味を伝えています。

 

「結局ね……」と平田さんは続けました。

 

「従業員も、お客さんも、人次第なんですよ。井澤みたいに頑張ってくれれば(vol.1,2参照)、きちんとお客さんに繋がっていくのですが、担当者にやる気がなかったら、お客さんは育たないし、数も今の半分になっちゃうでしょうね。これは豆腐作りにも言えること。熱意がないと次の世代に伝わっていかない。だから人を育てていかなければだめなんです。そういえば、井澤が、作るのと売るの、どちらかだけでは、この仕事はつまらないと言っていたことがありました。豆腐を作るだけでも、売るだけでも、だめなんだと。両方できるからこそ、この仕事は続けられるんだと言っていましたね」

 

若い従業員を育てることが、未来のお客さんを育てることにも繋がる……今、平田さんが自らの経験を通して噛み締めているのは、そんな思いです。かく言う平田さんも、30歳で家業を継ぐと決めたときには、随分と悩みました。本当に自営業の豆腐屋をやっていけるのか、不安が大きかったそうです。

 

翌日の学校給食用の豆腐を切る平田さん。地産地消や食育の観点からも、給食用の豆腐は、地元の豆腐屋が作ることが重要と平田さんは考えます。地域の子供たちにも、豆腐屋という仕事を知ってほしい、豆腐屋が身近であってほしい、それが平田さんの願いです。

翌日の学校給食用の豆腐を切る平田さん。地産地消や食育の観点からも、給食用の豆腐は、地元の豆腐屋が作ることが重要と平田さんは考えます。地域の子供たちにも、豆腐屋という仕事を知ってほしい、豆腐屋が身近であってほしい、それが平田さんの願いです。

 

「当時のうちのやり方を見て、このまま続けていたら無理だなと思ったんです。親父は自分のやり方を変えようとしないから、それこそ喧嘩ですよ。親父の時代の豆腐屋は、言い方はよくないですけど、とにかく作れば売れたんです。でも、これからは違う。やっぱりいいものを作りたいという気持ちが僕にはありました。だから、原料の大豆から、作り方から、全部変えて……。(ちょっと複雑な表情で)親父がやっていたことを否定しないとできなかった……」

 

そんな平田さんも、50代になりました。今は次世代を担う若い人たちの登場に期待しています。

 

「時代に合わせて、変えるべきところは変えて、どんどんできる若い人にでてきてほしいですね。それがうちの息子たちになるのか、うちの従業員の誰かになるのか、どちらにしても、手作り豆腐の価値を次の世代へ伝えていってほしいんです。やっぱり物事を変えられるのは若い人だから。でも……(しばし考えて)、もし後継者が決まって、僕のやり方を変えると言われたら、どうでるかわからないですけど(ここで大笑い)。そのときには、僕の考え自体が古くなっちゃっているのかもしれないですよね(笑)。自分もずっと若い立場でやってきたけど、今度は逆の立場になるわけだから、きちんと任せることができるかなぁ(笑)。言い過ぎてもね、新しい芽を摘むようなものだし……。つい、言っちゃうんだよなぁ(笑)」

 

頭をかきながら首をかしげる平田さん、どうやらいろいろと思い当たる節があるようです(笑)。

 

1月にアルバイトとして入社したばかりの新人、小澤さんは23歳。一生懸命豆腐を作っています。

1月にアルバイトとして入社したばかりの新人、小澤さんは23歳。一生懸命豆腐を作っています。

 

08製造B(本文用)

 

09揚げA(本文用)

本店では、揚げ物をひとつひとつ手作りしています。辺りに香ばしい香りが漂います。

本店では、揚げ物をひとつひとつ手作りしています。辺りに香ばしい香りが漂います。

 

現在、三善豆腐工房は、平田さんの他に社員2人、工場のパートが5人、店舗のパートが2人の計10人です。実店舗での販売、車での移動販売、地元の学校の給食への供給……この三本柱で三善豆腐工房の経営は成り立っています。これからも、地域のために、人と人との、心の通った商売を次の世代にきちんと伝えていってほしいと思います。平田さん、従業員のみなさん、応援しています!

 

本店は昔懐かしい佇まいです。

本店は昔懐かしい佇まいです。

 

三善豆腐工房(みつよしとうふこうぼう)

本店:東京都墨田区京島3-1-10 営業時間11:00〜19:00 日曜定休

キラキラ橘店:東京都墨田区京島3-22-11 営業時間11:00〜19:00 日曜定休

砂町銀座店:東京都江東区北砂4-28-8営業時間12:00〜19:00 日曜定休

車での移動販売は墨田区内、江東区内の各所にて。曜日によって場所は異なります。

Text : harumi

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