• 食事情
  • 2017/2/16 05:00:59

一丁入魂! 三善豆腐工房が育む地域の輪 vol.2 〜物作りへの思いと可能性

東京都墨田区京島にある人気のお豆腐屋さん、三善豆腐工房(みつよしとうふこうぼう)。前回は、社員の井澤悠(いざわゆう)さんが運転する車に同乗して、移動販売の様子を取材しました。井澤さんは、今年39歳。それでも、高齢化が進み、後継者不足が叫ばれる豆腐業界では貴重な若手です。どんな思いでこの仕事をしているのか、お話を聞きました。

 

撮影後、「一眼レフのおすすめメーカーってありますか?」と井澤さん。写真に興味がある様子。こっそりおすすめのお店を教えてあげました。

撮影後、「一眼レフのおすすめメーカーってありますか?」と井澤さん。写真に興味がある様子。こっそりおすすめのお店を教えてあげました。

 

井澤さんは東京生まれ。物心ついたころから、どういうわけか物作りが好きな子供だったそうです。心のどこかで物作りの仕事をしたいと思いながら、フィットネスクラブでアルバイトをしていた井澤さんは、26歳のときに、お客さんの紹介で、皮の染色の仕事に就きました。鞄や靴などの革製品の材料となる皮を丁寧に色付けする、まさに職人技の世界です。それは井澤さんの念願が叶った瞬間でした。ところが、4年後、残念なことに会社が傾いてしまい、井澤さんは、転職を余儀なくされます。そのとき見つけたのが、三善豆腐工房の社員募集でした。面接は終始和やかな雰囲気でしたが、豆腐作りが大変な体力仕事であるとの説明を受けたそうです。しかし、それでもやはり物作りがしたい。染色の仕事とはまるで異なる物作りでしたが、井澤さんは、豆腐職人になる決意をしました。31歳のときのことです。

 

「皮の染色は、微妙な色合いを出すために、高い集中力が求められる仕事でした。豆腐作りは、集中力も必要ですが、それに加えてやはり体力がないとできない仕事です。そこが前職とは根本的に違いました」

 

井澤さんは、工場で豆腐を作っては移動販売に出る毎日です。工場の仕事は聞いていた通り、大変でした。冬場は水が冷たいですし、ひとつ30キロもある大豆の袋など、重いものを持ち運ぶことがとても多いのです。しかし、それでも井澤さんは豆腐職人として、仕事に大きなやりがいと感じています。

 

「自分の作った豆腐がお客さんの手に渡るまで、そのすべてを、責任をもって自分でできる。それがこの仕事のやりがいです。お客さんからの素直な反応をダイレクトにもらえますから」

 

豆乳ににがりを入れて固めると、豆腐になります。豆腐を固める型は、「ささばこ」と呼ぶそうです。重そうですね。写真は期待の新人、小澤さん。アルバイトとして入社したての23歳です。学生時代に豆腐販売のアルバイト経験があり、豆腐が大好き。一生懸命豆腐作りを勉強中です。頑張ってください!

豆乳ににがりを入れて固めると、豆腐になります。豆腐を固める型は、「ささばこ」と呼ぶそうです。重そうですね。写真は期待の新人、小澤さん。アルバイトとして入社したての23歳です。学生時代に豆腐販売のアルバイト経験があり、豆腐が大好き。一生懸命豆腐作りを勉強中です。頑張ってください!

 

移動販売の準備も力仕事です。商品をぎっちり詰めたケースを車まで運ぶ井澤さん。

移動販売の準備も力仕事です。商品をぎっちり詰めたケースを車まで運ぶ井澤さん。

 

そんな井澤さんをお客さんたちはどう見ているのでしょうか。

 

「彼って、とっても真面目で一生懸命なのよ! だからいつも買いにくるの」

 

移動販売が来るたびに買いくるというおばさんは笑顔で話してくれました。井澤さんは少し照れくさそうに、商品の入った袋を手渡しし、深々とお辞儀をします。

 

「ありがとうございました!」

 

「お豆腐だけじゃなくて、ここで買うぬか漬けもおいしいのよ!」とお客さん。すっかり三善豆腐工房のファンです。笑顔でお話してくれました。

「お豆腐だけじゃなくて、ここで買うぬか漬けもおいしいのよ!」とお客さん。すっかり三善豆腐工房のファンです。笑顔でお話してくれました。

 

そこには心の通った人間同士の交流がありました。実際、移動販売のお客さんは、三善豆腐工房のファンでもあるので、知り合いに移動販売のことを宣伝してくれます。こうしたきっかけで、新しいお客さんになった人は数えきれません。そのたびに井澤さんは、回るルートを見直しながら、販売網を広げてきました。この経験から、井澤さんは移動販売に町の商売の可能性を感じているそうです。

 

男性のお客さんもちゃんといます。「今日はこれも買ってみようかな」といつもの買い物に、一品付け加えていました。お豆腐がおいしいから、他の商品も試してみよう、となるのですね。

男性のお客さんもちゃんといます。「今日はこれも買ってみようかな」といつもの買い物に、一品付け加えていました。お豆腐がおいしいから、他の商品も試してみよう、となるのですね。

 

それだけではありません。移動販売には、もうひとつ、大きな強みがあると、井澤さんは言います。

 

「実店舗の商売は、雨が降れば売上が如実に下がります。ところが、家のすぐ近くまで行く移動販売は、天候によって売上が落ちることはあまりないんです。みなさん、家の近くだったら出てきてくださるんですね。ですから、たとえ嵐でも、大雪でも、移動販売には出ます。これまでに休んだことはないですね」

 

高齢のため、買い物に出るのも大変な人たちが増えていることを考えると、移動販売のサービスは、日本の現状にマッチしていると言えるのです。

 

高齢のお客さんにとって、移動販売は貴重な足です。「この二つの湯葉は何が違うの?」との質問に、丁寧に答える井澤さん。

高齢のお客さんにとって、移動販売は貴重な足です。「この二つの湯葉は何が違うの?」との質問に、丁寧に答える井澤さん。

 

馴染みのお客さんも「どれにしようかしら」と悩むほど、豊富な品揃え。毎週買っていても飽きることはありません。

馴染みのお客さんも「どれにしようかしら」と悩むほど、豊富な品揃え。毎週買っていても飽きることはありません。

 

今日も井澤さんは、豆腐を作り、そして移動販売に出ます。墨田区内、江東区内でラッパを鳴らす車を見かけたら、それはきっと三善豆腐工房の移動販売です。車体に書かれた「一丁入魂!」の文字が目印ですよ!

 

次回は、三善豆腐工房の社長、平田慎吾さんが登場します。テーマはシンプルに「町の豆腐屋として、今、思うこと」。お楽しみに!

Text : harumi

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