• 食事情
  • 2017/1/1 05:00:58

食の仕事人 第40回 卵とマヨネーズ

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あけましておめでとうございます。今年も食育通信onlineをよろしくお願いいたします。

 

日本のマヨネーズの歴史は1925年、キユーピーがはじめて国産マヨネーズをつくりはじめたことからはじまります。キユーピーは現在でもシェアトップで、業務用ではケンコー、家庭用では味の素が後に続いており、全体のシェアのほとんどをこの3社が占めます。

一見すると同じようなマヨネーズもそれぞれ味は違うので、機会があれば食べ比べるのも面白いでしょう。大手の他にも小さなメーカーがおいしいマヨネーズを製造しています。なかでも自然な味を求める人たちが選ぶマヨネーズといえば、やはり『松田のマヨネーズ』。

株式会社ななくさの郷が製造している『松田のマヨネーズ』は自然素材を使ったマヨネーズの代表格です。

都内から車を走らせること、1時間余り。工場がある埼玉県児玉郡神川町は群馬県との県境に位置する山里に工場があります。周りには畑が広がり、すぐ側に流れる川のせせらぎが聞こえる静かなところです。

朝、6時。あたりはまだ暗いですが、早出のスタッフが出勤してきて、工場に灯りがつきます。

スタッフの方が卵を割る作業に入ると、工場に殻が割れるリズミカルな音が響きます。なんと工場で使う卵はすべて手で割っているのです。

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「手で割るといいのは卵の状態を一つ一つ確認できること。卵は養鶏家の考え方、餌や時期、場所によってそれぞれ卵黄の色も違う。それをうまくバランスよく混ぜることで色を出している」

 

社長の松田優正さんから話を伺いました。平飼いの卵は信頼する10軒ほどの養鶏家から仕入れています。マヨネーズはJAS法で〈卵黄又は全卵を使用し、かつ、必須原材料、卵黄、卵白、たん白加水分解物、食塩、砂糖類、はちみつ、香辛料、調味料(アミノ酸等)、及び香辛料抽出物以外の原材料を使用していないものであって、 原材料に占める食用植物油脂の重量の割合が65%以上のものをいう〉と定められています。つまり、マヨネーズの味は素材で決まるといっていいのです。

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松田さんは元々、自然食品店を営んでいました。マヨネーズ作りをはじめたのは、養鶏家から仕入れて余ってしまった卵がもったいないと感じたことがきっかけ。それまで食品加工の仕事をした経験はありませんでしたが、素材についてはよく知っていた松田さんは『マヨネーズ・ドレッシング入門』という一冊の本を片手に試行錯誤の末『松田のマヨネーズ』を完成させます。

「マヨネーズって家でもボウルを使ってこう……つくるじゃない。その延長ではじめたから。今では混ぜるのには機械を使っているけど、それだって自分で試行錯誤をしてつくっていった。美味しいって言ってもらえるけど、それは安心した材料、いい材料ばっかりを使ってるから」

いい材料を使えば自然とおいしい食べ物になる、と松田さんは言います。

さて、割られた卵は真空撹拌機にうつされます。キユーピーは卵黄だけ、後発の味の素は全卵など各社によって卵の原料にも違いが。松田のマヨネーズが全卵タイプなのは、黄身と白身で一つの命である卵すべてを使いたいという想いがあるからです。

材料の素性は包装の裏にきちんと書かれています。油は米澤製油の圧搾絞りなたね油、酢はオーガニックの純りんご酢、食塩は『海の精』、それと100%からし菜の種を粉末にしたマスタード、国産ニンニク、胡椒はオーガニックのホワイトペッパー。それに酸味と甘味のバランスをとるためにロシア極東ウラジオストク周辺(ウスリースク)産の菩提樹はちみつです。

「白砂糖は使いたくなくて、ハチミツなら自然な甘味が出るし、そうなるとりんご酢との相性もいい。油は無添加サラダ油としてこれが一番良い。……という具合に使う材料は決まっていきました。パッケージの材料について書いてあるのは裏を読んでもらって、食べ物に興味を持ってもらえたらっていうのもあるよね」

卵に塩や香辛料、湯煎にかけてやわらかくしたハチミツなどを加え撹拌し、空気が抜かれます。その後、丁寧に濾すが、この時も余分な空気が入らないように注意が必要とのこと。油脂の酸化の原因となる空気はマヨネーズ作りの大敵です。

ちなみに松田のマヨネーズには『辛口』と『甘口』の二種類があります。

 

「辛口と甘口の2種類があるのはお客さんの好みだから。甘口と辛口の味の違いはマスタードの量が違うだけで、甘口っていったって甘いわけじゃないんですよ。辛くないだけです。どちらかを選ぶ楽しみもあるし、自分でつくるからにはいい食べ物を食べてもらいたいっていうのがあるから、両方の味をつくるのがお客さんのためだと思った」

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ちなみにどちらが多く売れているかという質問の答えは『辛口』。「自分たちも辛口のほうが美味しいって言っているし」とのこと。辛口も辛いというわけではなく、はっきりした酸味が特徴です。甘口はやさしい『癒し系調味料』といった味わい。

8時半に乳化の作業がはじまりました。卵液となたね油とりんご酢が一つになり、みるみる乳濁液になってタンクに落ちていきます。それを容器に充填すればマヨネーズのできあがりです。あとはパッケージに包装して、ダンボールに詰められていきます。ちなみに表紙の素敵なパッケージデザインは和田誠さんです。

「僕は『食べ物は土から生まれる』というのを大事にしたいと思っている」

と松田さんは言います。パッケージの裏に『百姓道』という文章が載せられています。〈限度を知り、多くを望まず野山海川の命を通して自然と共振し、今の経済に流されることなく、農のある確かな暮らし。人は土を耕し、土は人を耕す。〉

松田さんの生き方が他にない優しい味をつくりだしたマヨネーズ。その味はマヨネーズが卵からできていること、そしてその卵一つ一つが生命であることを教えてくれるように思います。私たちは生命をいただいて生きている、そんなあたり前のことを再確認しました。

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