• レビュー食事情
  • 2015/7/16 05:00:38

IT雑誌が「食」の特集?

先日、一般の文芸雑誌や広告業界誌が「食」の特集を組んでいることを書きましたが、更に興味深い雑誌を発見したのでご紹介します。

20年ほど前に米国で創刊された雑誌『WIRED(ワイアード)』の日本語版VOL.17が「NEW FOOD なにを、なぜ、どう、食べる?」と題した特集を組んでいます。元々この雑誌の守備範囲は、インターネットやビジネスの最前線を分析し未来を思考するIT系のジャンルです。今回の「食」特集も、さすが『WIRED』らしい独特の切り口で展開しています。

『WIRED』VOL.17(発行:コンデナスト・ジャパン)

『WIRED』VOL.17(発行:コンデナスト・ジャパン)

独特のイラストレーションが描かれた表紙が目を引きます。

目次には、興味深い特集のタイトルが並びます。

目次には、興味深い特集のタイトルが並びます。

NEW FOOD

NEW FOOD

 

◼︎「永久凍土に眠る未来 スヴァールバル世界種子貯蔵庫を訪ねて」

”北極圏に浮かぶ永久凍土に、人々から「種子の方舟」と呼ばれる種子貯蔵庫がある。気候の変化や戦争などで地球が危機に瀕したとき、それでも人類が絶えぬよう世界中から農作物の種子が集められ、「そのとき」に備えている。”

The Ark Saving Seeds That Save

The Ark Saving Seeds That Save

”そこには、新緑に輝く樹木はなくても、教会があり、学校があり、バーがあり、博物館だってある。そして、わたしたちを救うであろう、種子貯蔵庫も。”

非常に興味深い取材レポートです。

非常に興味深い取材レポートです。

シードバンクは世界中に作られています。勿論日本にも。例えば、筑波大学のシードバンクに保管されていた種子から、東京新宿の伝統野菜『内藤とうがらし』が奇跡の復活を遂げた話は有名です。世界のシードバンクの中でも特別な存在が、世界有数の捕鯨基地があることで有名な、ノルウェー領スピッツベルゲン島にある『スヴァールバル世界種子貯蔵庫』です。「食」の特集はこの施設を取材したレポートから始まります。

 

◼︎「食・建築・地球 9つのアイデアと1つの事例」

”ハーヴァード大学デザイン学部大学院(GSD)には、「食」と「都市・建築」の関係を考察するAlimentary Design Studioなるクラスが存在する。多様性や地域性、あるいは都市論、環境、文化、地政学等を、食にまつわるさまざまな視点を通じて見つめ直すことで、いかなる実態や問題点、そして可能性を浮き彫りにしているのだろうか?当スタジオから生まれた9つのアイデアと、建築家・重松象平が手がけた1つのプランから、食の未来図を探り出す。”

Food, Architecture, Earth

Food, Architecture, Earth

未来の食料は深海から生まれる。港を変えれば、生鮮食品はもっとフレッシュになる。視覚と嗅覚に訴える栄養補給食品をつくれ!。農地の「塩化」を逆手にとれ!など刺激的なアイデアが並びます。世界を代表するハーヴァード大学大学院はなんと魅力的な研究・考察を行っているのだろうか。

CASE-OMA FOOD HUB

CASE-OMA FOOD HUB

 

◼︎「完全食 ソイレントの夢」

”完全栄養代替食「SOYLENT ソイレント」は、人と食の関係をどう変えるのだろうか?挫折を味わったテック系起業家が開発した新食品は、人類の食生活に革命を起こすか。”

The Perfect Food

The Perfect Food

”ラインハートは、この粉末で起業できることに気づいたと言う。”

合成食品という概念が悪者視される昨今、コンピュータテクノロジー系のアプリケーション開発者を夢中にした理由は?

 

◼︎「テクノロジー風味の未来食10 Taste the Future」

”18世紀を生きた稀代の美食家ジャン・アンテルム・ブリア・サヴァランは、「新しい星を発見するよりも、新しい料理を発見するほうが人間を幸せにするものだ」と『美味礼賛』にて嘯いた。確かに人は、いまも昔も未知なるテイストやテクスチュアの開発に貪欲だ。培養肉、粉末アルコール、コオロギバー・・・。もうすぐ当たり前になるちょっと未来の食のスタンダード、気になるそのお味は?”

 

◼︎「食をめぐる3つの前線:JAMES BEARD FOUNDATION、ジェフ・ワトソン、日清 the WAVE」

”グッドフード・ネイションへ アメリカの食を前進させる”エンジンルーム” アメリカの食文化を、たった一人で築き上げたといっても過言ではないジェームス・ビアード。その意志を継ぐ財団の存在価値が、いま急速に重要度を増している。彼らの視線は、どこを見つめているのだろうか。

JAMES BEARD FOUNDATION

JAMES BEARD FOUNDATION

今年5月に、人工知能が搭載されたコンピューター『ジェフ・ワトソン』が考案したレシピ本が出版され大きな話題となりました。その『ジェフ・ワトソン』を開発したIBMの若き天才ラヴ・ヴァーシュニーのインタビュー、日清食品グループの研究拠点「the WAVE」の取材も大変興味深い内容です。

 

◼︎「宇宙の食卓 米田肇の進化論的ガストロノミー」

“138億年前に形成された宇宙に地球が誕生してから46億年。地球に最初に降り注いだ雨は海をつくり、そこにバクテリアが生まれ、生命は誕生した。その生命が、植物や動物にさまざまに進化を遂げる過程で、私たち人類は生まれた。ミシュラン史上最短で3つ星を獲得したシェフ、米田肇は、ガストロノミーをベースに、そんな果てなき宇宙と生命の歴史に想いを巡らせながら、「料理を食べる体験」を革新し続ける。さて、食べることとは何だろう?”

Gastronomia, Astronomia

Gastronomia, Astronomia

 

◼︎「ドミニク チェンの「醸され紀行」発酵食はクリエイティブ・コモンズである!!」

”情報哲学の俊英ドミニク・チェンが、「生命的なITとは何か」を求めて日本の発酵文化を訪ね歩く。”

Fermented Food is a Commons

Fermented Food is a Commons

 

◼︎「池田純一「ニュー・フード・エコロジー」 生態系的人間と「食」の未来」

”人間はその誕生の瞬間から延々と食べ続けてきた。だから、単純に進歩を語ることはできない。むしろ生存条件に関わる分、保守的ですらある。「生存」と「快楽」の間で揺れる人間と食の関係。その未来図をデザインシンカー池田純一が見通す。”

The Pendulum of Survival and Desire

The Pendulum of Survival and Desire

以上、「食」にまつわる8つの視点はどれも刺激的で面白いものです。元々、オリジナルが米国の雑誌からの翻訳が多いこともあり、私たち日本人とはかなり異なるスタンスに驚かされる部分も見受けられます。それがかえって新鮮でもあり興味深い特集です。

Text : tohru

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して食育通信onlineは一切の責任を負いません。

ページ上部へ