• 食事情
  • 2015/2/13 05:00:43

もやしの根とひげはとらないのが食育的!? 本当の食育について考える

もやしは万能な食材。野菜炒めから肉料理、ラーメン、味噌汁にナムルのような和えものと、何にでも使えて重宝します。

ところで、みなさんは「もやしの根とひげ」はとりますか? 例えばクックパッドの記事「もやしのひげ根って取る価値あるの?」では

ひげ根をとって料理すると家族や仲間に大絶賛されること間違いなしなので、心に余裕があるときは取るべし!

と記事をまとめています。

 食感を重視したい場合や日にちが経ったもやしは、ひげ根は取り除きましょう。(兵庫栄養調理製菓専門学校ウェブページより

と教えている学校もあります。「もやしのひげや根をとるのには手間がかかるから、なんとなく正しいことのような気がする」という人も多いのではないでしょうか。

「もやしの根やひげはとるべきか?」

その答えは生産現場にありました。訪れたのは埼玉県深谷市にある飯塚商店。昔ながらの栽培方法で、もやしを製造している『もやし屋』さんです。普段、見る機会の少ない生産の様子も見学させていただきました。

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「大多数の方がもやしと聞いて想像できるのは『安い』というイメージだと思います。味の表現でも『シャキシャキ感』くらいしかない。でも、本当のもやしは違うんです。豆が発芽したものがもやし。発芽するということは生命力一番強い時ですよね。本当のもやしには山菜のような強い味と、ハーブのような強い香りがあります」

「もやしの原料の豆はおおまかにいうと三種類あります」

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「まずは「緑豆」。今、もっとも一般的なもやしの原料です」

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「これは「ブラックマッペ」、九州とか広島でもやしといえばこれのことでした。今は残念ながらスーパーなどによって画一化されてきてしまって、緑豆のもやしが増えつつあるのが現状ですけど、広島風のお好み焼きなんかはブラックマッペのもやしじゃないとつくれない、という人も多いですね」

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「最後に大豆、これは在来種の国産です。ほら発芽しているでしょう。国産のもやしはないの? とお客さんから言われたことがきっかけになって、県の在来大豆の普及活動に関わっていた人たちと二人三脚で開発しました。在来大豆は農家さんが自家用に栽培してきた、言い換えれば生産者が認めた大豆。美味しいのはあたりまえだよね」

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もやしの製造はまず『芽出し』と呼ばれるぬるま湯に浸す作業からはじまります。皮が割れ、発芽したら、今度は生育させます。室とよばれる部屋は真っ暗。光が入ると緑色になってしまうからです。

「温めた地下水を入れて、6〜8時間くらい経つと豆が息をしはじめます。ぷくぷく、泡がどんどんスパークリングのように出てくる。いい香りがします。チーズのような麹のような、発酵食品の香りです。命の香りって一緒なのかなと思う。後は水を抜くタイミング。あまり漬込み過ぎると、豆が溺れちゃう。そのタイミングを見計らって水を抜く。これは感覚しかない。この豆を土に蒔いたら木のように大きな緑が育ちますよ」

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「もやしは生き物なんです。うちが一番重視しているのは、熱の管理。もやしが発する熱をいかに管理するか。発芽したもやしはエネルギーの塊だから熱を発するんです。ほっとくと、45度とか47度くらいにいっちゃう。50近くなると、焼け死んじゃう。かといって熱くなる前に、水を巻いて冷やしすぎると低温障害が発生する。子供の成長と同じで「ちょっと熱過ぎるな、もうちょっと水をあげようか」とか。「ちょっと低いから、水をあげる間隔を伸ばそうか」とか細かな気配りが重要。また、冬と夏ではまったく違います。施設栽培といっても外部の環境にモロに影響を受けるんです」

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そうして育ったもやしがこちら。ブラックマッペもやしです。長いひげのような根と葉が飯塚商店のもやしの特徴。活き活きと生命力に満ちています。

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これは緑豆もやし。「普段、見かけるもやしと全然、違うでしょう。これが本来の形。ほっそりして、美しいでしょ。スーパーなどで売っているもやしは太くて短いでしょう。あれはエチレンガスを人為的に強く効かせて抑制栽培をすると、ああいう形になるんです。エチレンは悪いことではないけど、個人的には旨くないと思う。ちょっと食べてみて」

もやしを摘んでみると力強い味わい。「これがもやしの味!」という驚きがあります。例えるなら豆を噛み締めたときと、瑞々しい青さが混じった味というか……。

「おいしい? そりゃ良かった(笑)価値が伝わる前にこういう昔ながらの味が失われるというのは残念。地元の幼稚園、学校の子たちが来たら、全部、見せます。隠すことはない。生産者ができる食育はそれしかないと思う。儲かるから改良したものを「食育」と言っちゃダメ」

──もやしの芽とひげはとるべきでしょうか?

「よくとる人がいるけど、俺にしてみれば「なんで?」っていう感じ(笑)生産者としてはもやしの芽と根をとるのはまずあり得ない。頭の部分はもやしの唯一の養分。根っこは水を吸う器官。それを否定しちゃうのはおかしいし、芽とひげは一番、おいしいところだよ。これから育っていく命そのものが宿っている部分。それをとったらなんの意味もない

飯塚商店のもやしは水で煮て、味噌を入れただけで出汁など使わずとも味噌汁として美味しくいただけるそうです。食育の基本は食とは命を頂く行為だと知り、その命によって自分は生かされていると学ぶこと。改めてそのことに気付かされた取材でした。

左がスーパーで購入したもやし、右が飯塚商店のもやしです。形の違いは一目瞭然。

左がスーパーで購入したもやし、右が飯塚商店のもやしです。形の違いは一目瞭然。

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中華スープにしてみましたが、たしかに出汁を使わずともおいしいです。ごちそうさまでした!

Text : naoya

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