• レビュー食事情
  • 2014/6/4 05:00:41

山梨県北杜市のシカを食べてみた

農林水産省による報告書『鳥獣被害対策の現状と課題』によれば、野生鳥獣による農作物被害額は、平成21年度以降は200億円を上回っています。被害のうち、全体の7 割がシカ、イノシシ、サルによるもの。特に、シカ、イノシシの被害の増加が顕著です(下図)。農業被害ばかりか林野の荒廃や生態系へのダメージといった間接的被害も大きいとされています。シカの農業被害に対して国は平成19年に「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」を施行するなど対策に乗り出しています。

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農林水産省『鳥獣被害対策の現状と課題』より転載

山梨県は北杜市は猟友会とともにシカの捕獲に乗り出しています。この捕獲した北杜のシカをジビエとして美味しく食べる方法を考える会があったのでレポートしたいと思います。

場所は港区白金台にあるイタリアン「イゾラ(ISOLA)」。窯焼きピザを14年前からはじめている草分け的存在です。ふだんからシカを扱うことがあるとのことですが、今回は特別に北杜市のシカをイゾラに直送し、シカ料理を食べ尽くすメニューを考案していただきました。

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なお、情報によれば今回のシカ肉は3歳程度の雌。山に仕掛けた罠にかかったものだそうです。血抜きと解体後は冷凍せずに冷蔵の状態で届けられたとのこと。鹿肉は臭いと思われがちですが、血抜きや保存方法によるそうです。今回のシカは状態としてはとても良い品質とのことです。

参加メンバーは、北杜市役所、北杜市議会議員、北杜市の猟師、地元ホテル、都内のレストランからなど、さまざまです。席に着くと早速本日のメニューの説明があります。

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まず登場したのはレバーのクロスティーニ。

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鹿肉というと臭いという勝手な印象を持ってしまいがちですが、まったく臭みはありません。カリカリのクロスティーニの食感にレバーの舌触りは重すぎず、セージの香りとポートワインの甘さで味も軽やかに感じます。参加メンバーからも「臭みをまるで感じない」「味が軽くて食べやすい」なとといった声が聞こえてきます。

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次に出てきたのはハツ・レバー・ロース・内モモ肉のグリル 。脂肪分がすくない赤肉で、食感はとてもやわらかく、噛み締めるほどに肉のうまみが広がります。

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つづいて登場したのは、イゾラで14年にわたり火を落とすことなく使い続けられている窯で焼かれたハツ・ロース・レバーです。燃やされている薪はナラ材だそうです。窯の近くに行くとナラの燻香がします。鹿肉にほのかによりそったナラの燻香がぴったりです。

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キッチンのなかでは上野正義シェフが手際良く何かを揚げはじめました。一体これは何になるんでしょう?

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出てきた料理は、内モモのコトレッタでした。カリカリの衣の中からやわらかくほぐれた食感の内モモのシカ肉が登場します。

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今度はすじ肉の白ワイン煮込みが登場しました。この辺りから女性の参加者から「お腹が一杯になるかも…」との声が上がってきましたが、コラーゲンがもろもろに溶けたすじ肉を口にすると、どういうわけかさらりと食べてしまいます。

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次の料理は、すね肉の赤ワイン煮込み。前脚と後脚とそれぞれが登場したのですが、猟師さんから「とくに前脚のは貴重なんですよ」とのご説明。その理由は、シカを撃つときは頭近辺を狙うのが基本なのだそうで、それでもよほど上手に射抜けないと前脚には血がまわってしまい出荷には値しなくなってしまうのだそうです。

今回のように罠にかかるというのは常ではないので、出荷されることは希とのこと。なるほどシカの前すねは貴重部位ということなんですね。

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後ろすねと食べ比べてみると、前脚のほうがコラーゲン感がつよく、また肉質がつまっている感じがします。後脚のほうはジューシーです。同じすねでもこうも味が違うんですね。猟友会の方は「ふだん、われわれはひき肉にする程度しかアイディアがないんですが、こういう料理の方法があるのは驚きました。想像よりはるかに美味しくておどろきです」。

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最後に登場したのは、もも肉のラグーのパッケリ。モチモチのパッケリにラグーの濃厚な味がからみます。今回のメニューのなかでもっとも濃厚な味わいだったのがこのラグーでした。

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食べ終わってみると、相当な量を食べたので満腹ではあるんですが、まったくもたれないというのが驚きでした。参加メンバーから「ぜんぜん重たくないですね」「もたれないでこんなに食べられるなんて、びっくり」といった感想が出ています。

シカというと奈良公園のかわいらしいシカを思い出してしまったり、バンビを思い浮かべてしまったり、頭ごなしに臭いと思ってしまうこともあるようですが、実際にこうやっていろんな食べ方をしてみると、繊細でかろやかな肉質といい、食後感の軽さといい、これからが楽しみになります。

畑や環境を守るためにも、これからのシカ食が良い形で普及していくといいですね。

最後に参加者のみなさんで集合写真。ごちそうさまでした!

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Text : motokiyo

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