• 食事情
  • 2013/12/19 05:00:55

命が続いてきた800年、そのバトンは今私たちが持っている。 在来野菜の紹介「平家大根」

長崎県雲仙市で、50種類以上の野菜を栽培、自家採種し、種を守っている生産者がいらっしゃいます。種採り生産者の中ではパイオニア的な存在、岩崎政利さんです。

今から約10年前、当時、私は自然食品店で野菜のバイヤーをしており全国の畑をかけまわり、生産者を訪ねる日々が続いていました。様々な生産者に出逢い、その畑を介して伝わる生産者の哲学。こんな素晴らしい価値観に触れられる時間はないとばかりに充実し爆走していた日々。と同時に。やはり流通の立場では有機JAS認証の取得を進めなければいけないのも現実でした。それが全てではない、それはわかってはいるけれど、世間が求める安心、安全の基準が変化していく中で感じる違和感。それは少しずつ私の中で大きなジレンマになっていきました。

そんな矢先に、岩崎さんが種を繋いでいる「平家大根」に出逢いました。はじめて手にとってみた時のことが忘れられません。普段、自然食品店やスーパーマーケット等で見慣れている「青首大根」とは姿、形がぜんぜん違う。どこか野生的で、ずっしりとした重み。葉は力強く生い茂っていて弾力がありました。成長した大根は長いのや短いの、太かったり細かったり、丸みをおびていたり。何より、その大根のもつエネルギーの強さに魅かれたのです。どこか懐かしいような、やっと会えた、というような感覚でした。

後になって聞いたのですが、この平家大根は、岩崎さんが宮崎県椎葉村のクニ子おばあちゃんから譲り受け、大切に大切に繋いでいらっしゃるとのこと。岩崎さんの「平家大根」への想いが、私に伝わったのではないかと、今では思っていたりします。

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平家大根

昔から、宮崎県の椎葉村では平家大根をお正月前の暖かく晴れた日に採りにいき、葉を切り落として冬場の貴重な野菜として、土へ埋めて長期保存していたと言われています。辛味が強いので、すりおろしにしてもとても辛く美味しい、また、煮込み大根などに調理するとしっかりと大根としての味を主張してくれます。旬の時期はまさしく今。わずかではありますが、大分県中村英一さんが栽培された平家大根が新宿伊勢丹の地下1階、青果売場に並んでいます。残念ながら長崎県岩崎さんの平家大根は気候の影響もあり、もう少し後に収穫される見通しですので、しばらくお待ちいただきますが、楽しみになさっていてください。

その土地が持っている風土。当たり前のことですが、野菜への影響は大きく、固定種在来種、自家採種された野菜達は特にその土地に順応しようと生命が働きますので、正直にそれが味や形として表現されます。同じ平家大根でも産地が違うだけで、味や形が違うことも楽しんでもらえたら、とても嬉しい。

今回は私が平家大根と運命的な出逢いをしてしまった!ことについてお伝えしましたが、それが在来野菜の魅力のひとつ。野菜そのものの、作り手の方々の、手にとった方々の、それぞれの時と場所によって生まれるストーリーが必ずあります。それをまるごと、いただくこと。身体の中にとりこむこと、これもひとつの野菜の旨味となり、明日の私たちの身体や心を創るのではないかと、思っています。

平家大根の種(小)

平家大根の種

最後に、この平家大根は800年間、種が続いてきたお野菜です。いったいどのくらいの私たちのご先祖さまが手を動かし育て守ってこられたのか、想像すらできませんが、その代々続いてきたご先祖さまの末端が、今の私たちです。そして私たちはこれから先祖になります。それは誰も同じで平等なこと。ですから、この平家大根を次の世代の方たちへきちんとバトンを渡すことを、みんなでできるといいなと思っています。しかも、できるだけ愉しく!

命が続いてきた平家大根の800年、そのバトンは今私たちが手の中に持っています。ぎゅっとにぎりしめていきましょう。

warmerwarmer

Text : warmerwarmer

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